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俳句の鑑賞㉝


浮寝鳥よりもしづかに画架置かれ

村上鞆彦句集「遅日の岸」P.63

季語:浮寝鳥(三冬・動物)

上五に、浮寝鳥。それに続く「よりもしづかに」の措辞に驚きました。そして、何が?と思えば「画架置かれ」というのです。

水面にしづかに浮かんでいる浮寝鳥。周りもまた透き通ったような冬の静けさに包まれています。
その中で作者は、その浮寝鳥と冬の静けさを邪魔しないように、慎重にイーゼルを置くのです。
非常に美しい景であります。


ガラス戸の遠き夜火事に触れにけり

村上鞆彦句集「遅日の岸」P.63

季語:夜火事(三冬・生活)

消防車の音が聞こえたのでしょうか。作者はガラス戸から夜を眺めます。
見えたのは、遠くに燃える火事の色。その火事をガラス越しに指で触れます。
作者の顔も心も、ガラス戸に映っているようであります。

主宰の作品にはいつも惚れ惚れする私ですが、本日の二句は格別に、であります。ドラマが生まれます。


初蝶やスカートのなか脚うごく

津川絵理子句集「夜の水平線」P.82

季語:初蝶(初春・動物)

スカートの中で脚の動きを感じられるのは、ゆったりとしたギャザーやフレアーのスカートのときではないでしょうか。イコール、気持ちがオフのときが多いようにも。

冬の寒さを抜け出して、ちょっと窮屈な日常からも少し離れて、自分の脚もスカートの中でのびのびと。
飛び始めた「初蝶」がぴったりで、読者も気分が晴れやかになります。


春雨やブーケの茎のひと握り

津川絵理子句集「夜の水平線」P.83

季語:春雨(三春・天文)

ブーケはその美しい花につい目がいきますが、実は手で握ると、その茎の存在をとても感じます。大きなブーケだと、両手でしっかりと握らないといけないことも。

茎のひと握り、という措辞から、軽く片手で握れるくらいの小さめのブーケ。気の知れた仲間へのさりげないお祝いかもしれません。
外には春の雨。
やわらかな、優しい時間がながれます。


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「南風」村上主宰と津川顧問句集の「俳句鑑賞」の経緯はこちらの記事に。
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