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俳句の鑑賞《73》(一句目、追記あり)


鳩は歩み雀は跳ねて草萌ゆる

村上鞆彦句集「遅日の岸」P.154

季語:草萌(初春・植物)

追記
村上主宰より、「鳩」、これはふつうに「はと」と読んでください。「く」とも読みますが、ちょっとよそよそしい感じの鳩さんになってしまいますかね。とのコメントをいただきました。

鳩の読み、音数と音を重視して、私は「く」と解釈してしまったのですが、主宰の「よそよそしい鳩さん」に大共感です。
やはり、思い、心、気持ちを大切に詠んでいるのが、村上主宰だと再認識いたしました。


今後の学びのため、原文の削除はせず、残します。
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ゆみねてもゆる」
上五、中七、下五のはじまりの音が、どれも「音」、その音の後に続く「音」、の繰り返しのリズムがとても耳に心地よく、また、鳩と雀の動きとの連動の効果も。

そんな鳩と雀がいるのは、早春、冬枯れの大地から萌出ずる草の芽の上。
鳥たちのみならず、人もまた小さな喜びに満ちる、春のはじまりであります。


降つてきて雀なりけり春の土

村上鞆彦句集「遅日の岸」P.155

季語:春の土(三夏・地理)

上五の「降つてきて」、読み手はすぐさま、「何が?」と思います。
続く措辞は「雀なりけり」。ここでの詠嘆の助動詞「けり」には、「それまで気付かずにいたことに初めて気付いた気持ちを表す用法」を強く感じます。
恐らく、作者自身も、何だろうと思ったら、なんと雀だった、いう心持ちだったのでしょう。

「稲雀」という冬の季語がありますが、雀の群れの勢いはなかなかのものであります。
冬を終えての喜びに満ちた春の土。一句目と同じく、雀も人も生命に溢れています。


水に浮く水鉄砲の日暮かな

津川絵理子句集「夜の水平線」P.179

季語:水鉄砲(三夏・生活)

庭に出された家庭用ビニールプール、残った水に浮かんでいる水鉄砲、の景が目に浮かびました。
日中、子どもらが打ち合う水鉄砲、弾けるプールの水しぶき。響き渡る、笑い声。それらの余韻を残した庭は、日暮を迎えています。

一抹のさみしさを残す水鉄砲が、残り少ない夏休み、をも象徴しているようであります。


朝曇子のたんこぶに集まつて

津川絵理子句集「夜の水平線」P.180

季語:朝曇(晩夏・天文)

朝、寝ぼけ眼で転んだのでしょうか、子の泣き声が聞こえ、駆けつけてみると頭にたんこぶができています。
どうした、どうした、と他の家族も集まります。囲まれた中心には、たんこぶ。甲斐甲斐しい手当が続きます。

恐らく大事には至らずだったと推測しますが、夏の朝の小さな大事件です。
ひでりの朝曇」とも言われる季語、朝曇。厳しい暑さになる日中には、子のたんこぶも小さくなっていることでしょう。


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「南風」村上主宰と津川顧問句集の「俳句鑑賞」の経緯はこちらの記事に。
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