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「南風・七月号」を読む。

「南風・七月号」より、好きな句、気になる句。
(句順は掲載順、*=特に好きな句)


村上主宰「大きな箱」十句より

水ほそく皿洗ひをり花曇

囲はれし若木も花を終へにけり*

一草もあらぬ川洲の蝶の昼

若蘆に日照雨の蝶のかくれけり*

地球儀が大きな箱で来る四月*


津川顧問「鳥容れて」十句より

二三枚破る日めくり万愚節*

障子けふ花の影さす稽古かな

やや低き図書館の椅子花は葉に

厨房は白のしづけさ藤の雨

春惜しむ双眼鏡に鳥容れて*


「雪月集」より(敬称略)

ただぼーつと浮いてゐるだけ春の鴨  
 中村君永

やよひより卯月に変る雨の音*    
 団藤みよ子

花時の父の無口や母の留守      
 藤川喜子

月おぼろ砂場にのこる山と谷     
 葛龍堅助

箸置けば胸に飯つぶあたたかし*   
 武田佐自子

耳底の亡夫の「お〜い」花は葉に   
 高原初子

空蝉の爪突き抜ける葉裏かな*    
 駒田弘子

ずいと伸び大筍のやや斜め      
 田村紀子

喪の家の人の出で入り雀の巣     
 前田照子

改札の奥の明るき山青葉       
 腕野辰平

人間の賞味期限や目借り時*     
 河田陽子

皿の鮎びつしり並ぶ小さき歯     
 秋葉とし子

単線を飲み鉄で行くいぬふぐり    
 赤川雅彦

簡単な椅子の足されて花見茶屋    
 林 里美

ねじ穴のやうなつむじや花筵*    
 帯谷麗加


「風花集」より(敬省略)

血糖値測る血の粒四月馬鹿*    
 太田美沙子

花冷や狸饂飩の黒い汁       
 原隆三郎

蝶よぎるまでぬかるみを見てゐたり 
 板倉ケンタ

泥かぶるカブ泥になる春の河*   
 板倉ケンタ

草笛を習ふさざなみ目に映し    
 今泉礼奈

春の蚊やうつすらと子の鎖骨見え  
 今泉礼奈

金管をばらして拭ふ朧かな*    
 日野久子

花冷や氏名手書きの診察券     
 澤木恭子

新入生余白に富士を描き入れし   
 小西さき江

犬に吠えられし犬抱く木の芽風*  
 桑原規之 

春塵やピエロは眼鏡拭いてをり   
 館 ゑみ子

壷焼を逸れし醤油の火に爆ぜる   
 岡林美智子

石鹸玉追ふ藤棚を潜り抜け     
 若林哲哉

町川に繊き砂州ありはるしぐれ   
 中村幸子

春筍を探る足裏の勘どころ     
 上田和子


「南風集」より(敬省略)

付いてくるかと振り向けば春の蘆*  
 大熊光汰

並走の電車の窓の新社員       
 大熊光汰

荊棘線が日輪を切り蝌蚪に足     
 延平昌弥

花虻のまた戻り来る真正面      
 梅田実代

つちふるや血の筋残る革財布     
 ばんかおり

入口も出口も花の投票所       
 稲葉守大

半券のふち毛羽立ちし霞かな     
 菅井香永

子猫の勝ちたうとう抱いてしまいけり 
 山本こうし

菜の花もわれも健やか目を閉じる   
 五月ふみ

雲が空ふたぎて眠きたんぽぽ野    
 陰山 惠

小判草しやがめば消える膝の皺*   
 野村茶鳥

まはる椅子まはせばまはる花曇    
 野村茶鳥

アネモネや母のレシピに足す胡椒*  
 高山之直

卒業の弟に肉食べさせる       
 上田圭子


「摘星集・兼題、サングラス」から

目で応へくるサングラス少し下げ  
 市原みお

何となく命令形のサングラス    
 水野大雅

サングラス引つかけてある譜面台* 
 磐田 小

雑踏に会ふ先生のサングラス    
 窪見れい

サングラス掛けてぶつきら棒となる 
 加藤 修



     ・・・・・

卯月紫乃 載せていただいた句

「南風集」
花冷の見附にのぼる朱き月
リヤカーの大きな車輪すみれ草
藤散るや房に蕾の残りつつ
クローバの上に広ぐる楽譜かな

「摘星集・サングラス」
サングラス外し銀座の鳩居堂

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