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俳句の鑑賞㉙


鼻筋の賢き犬や下萌ゆる

村上鞆彦句集「遅日の岸」P.55

季語:下萌したもえ(初春・植物)

鼻筋の賢い犬、ああ、確かにいるなあ、と思わず納得。注目は、鼻筋、というところです。
私は犬を飼ったことがないので詳しくはないのですが、散歩に連れられているご近所の犬を観察していると、野原や植え込みの草を嗅いでいることが多いように思います。

鼻筋の賢き犬と下萌との取り合わせ、微笑ましい限りです。


先生の眼鏡の厚しクローバー

村上鞆彦句集「遅日の岸」P.56

季語:クローバー(晩春・植物)

クローバーに置く制服の上着かな
主宰のクローバーの御句はどちらも学校が舞台。私には大好物の(笑)取り合わせです。

高校時代の地学の先生の眼鏡が、まさに牛乳瓶の底眼鏡でした。非常に興味深い授業をなさる先生で、黒板いっぱいの図と文字が今でも思い出されます。

クローバーのある中庭などで、先生と話をしている生徒の景が浮かびます。


先生の鉛筆の文夜の秋

津川絵理子句集「夜の水平線」P.68

季語:夜の秋(晩夏・時候)

さて、今回は、津川顧問の御句にも先生。
ペンではなく、鉛筆の文、というところに、中学や高校の先生ではなく、書道や絵画などの習い事の先生なのではないかなあと、想像がふくらみました。

秋の展覧会に提出予定の作品の練習、それに添えられた先生の文。
夏の終わり、残暑はあるものの、ふと秋の訪れを感じられる夜に、その文に目を通しながら、自分の作品を考える。素敵な時間です。


押入れの空気出てゆく菊日和

津川絵理子句集「夜の水平線」P.69

季語:菊日和(仲秋・天文)

押入れの襖を開け放し、部屋の空気の入れ替えをしているのでしょう。
空気出ていく、の措辞にとても惹かれました。
代わりに入ってくるのは、菊日和の爽やかな空気。菊の香りも押入れや部屋に沁み込むような気がいたします。


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「南風」村上主宰と津川顧問句集の「俳句鑑賞」の経緯はこちらの記事に。
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