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「南風・八月号」を読む。

「南風・八月号」より、好きな句、気になる句。
(句順は掲載順、*=特に好きな句)


村上主宰「葉叢」十句より

菖蒲湯の明るきうちに沸きにけり*

柿の花こぼれて柿の花はじく*

干してあるものちらと見て薔薇の家

十薬の葉叢にしづむ雀蜂

噴水の熄みて日比谷の街の音*


村上主宰の御句を、初めて書いてみました。
「鞆彦句 しのかく」については、主宰に御指導を賜りました。
少しずつ上達してゆきたいです。


津川顧問「藍畑」十句より

新緑やラジオの好きな山の鳥

男らの骨の音して山車うごく*

出勤すマスク揚羽のごとひらき

夏蝶やもろ草伸びて藍畑

夏木立大きなスケッチブック来る*


「雪月集」より(敬称略)

泰山木仰ぎて首の細くなる*
 小野 怜

嵩なして浜昼顔の遊び蔓
 井手千二

とうすみの尾が曇天の水を刺す
 越智哲眞

藍のある暮らしはじまる薄暑かな*
 藤川喜子

口重き日は色の濃きサングラス
 上村昌美

唯我独鳴夏うぐひすの老い力
 池之小町

医師の言しづかに厳し梅雨深し

 葛龍堅助

日に焼けし胸をがばりと授乳かな
 大高松竹

石の上のでで虫石になりきれず
 駒田弘子

氷柱のむかうに歪む君の顔
 田村紀子

螢待つ人も山河もただ黒く
 松尾睦月

処方箋の大きな余白夏の風邪*
 前田照子

夢追って追ってなほ夢長け蕨
 腕野辰平

嬰つひに手足に気付く立夏かな*
 帯谷麗加

母の日や鍬に残れる握り艶*
 新治 功


「風花集」より(敬省略)

メーデーや木々青々と解散す*
 原 隆三郎

釣堀に落ちし子菓子をもらひをり 
 桑原規之

泥煙消えてざりがにまだ其処に*
 板倉ケンタ

裏張りのテープ縦横登山地図
 日野久子

金具入りし肘膝撫でて衣替
 太田美沙子

漱石の髭を剃りたし衣替*
 東 尚道

一番茶摘む指先の走り出す*
 越智佳代子

田の神に守る田のなき夕焼けかな
 郡山文惠

青葉風子牛は臍の緒を下げて
 片岡智子

ガラス戸を拭いて薄暑の空現るる
 大畑康子

水の中に森ゆらめける立夏かな
 深水香津子

緑さす檻にパンダの訃の知らせ*
 館 ゑみ子

耳立てて兎の租借風薫る
 小西さき江

庭前の夫の口笛愛鳥日
 浜口順子

育児書に付箋増えゆく若葉光
 上田和子


「南風集」より(敬省略)

噴水のパターン覚えるまで座る*
 野村茶鳥

新しき眼鏡で帰る夕立かな
 大熊光汰

香水や同じ鷗を見てゐたる
 大熊光汰

砂州にまた白い鳥来て衣替
 梅田実代

軋みつつ小窓柿若葉へひらく
 梅田実代

しやくやくや泣けば重たくなる額*
 五月ふみ

葉桜や鏡にうつす喉仏*
 ばんかおり

青苗箱から引つこ抜く黴の苗
 稲葉守大

父の日の素麺の帯揃ひけり*
 延平昌弥

鍵穴のひとの形や新樹光
 延平昌弥

水羊羹一緒に住むという話*
 岩本玲子

切手貼る水一滴に夏来る
 佐々木千賀子

鍵束に足さるる鍵や柿若葉*
 堤 あこ

初夏のボンドに透いていく木目
 磐田 小

夏祭父の屋台をそつと過ぐ*
 磐田 小

薫風にまだ触れてゐぬ赤子かな
 野添敬子

雨の日は雨の色得て紅薔薇
 鈴木隆三郎

海に向く窓に映りて夏料理*
 太田 楓

詫びながら山椒の芽を摘んでをり
 黒井茶美子

薔薇園を行き来するひと薔薇色に
 清水宏晏

お金より大事なギター夏の月
 藤本智子


「摘星集・兼題、白粉の花」から

おしろいや違う名でよぶ同じ猫
 市原みお

倦まず咲くおしろい花に倦みにけり*
 赤城嘉宣

切れている門燈ひとつ白粉花
 赤尾てるぐ

おしろいを摘んで迎への父待つ子
 佐々木千賀子

おしろいの散らかつてゐる路傍かな
 ばんかおり

はたらいてはたらくははや夕化粧*
 宇野悦耳

踝に闇せまりくる夕化粧
 窪見 れい


     ・・・・・

卯月紫乃 載せていただいた句

「南風集」

蝶生まる牛も仔牛もねむりをり (主宰推薦「今月のニ十句」入選)
俎板の柾目きはやか夏に入る
踏まれたる草の匂ひやこどもの日
懐紙よりはみ出しさうな柏餅

同人・団藤みよこ様の書


「摘星集・白粉の花」

伏せられし母の手鏡夕化粧
(主宰より、「手鏡」と「夕化粧」、縁語関係が近すぎだろう、のひとことを頂戴する)

兼題にはいつも四苦八苦です。

いただいたサポートは、次回「ピリカグランプリ」に充当させていただきます。宜しくお願いいたします。