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飴山實句集『辛酉小雪』を読む。

飴山實句集『辛酉小雪』から、気になる好きな三十句。


うすづくや草木瓜はやゝあからめる

風船売大和の埴輪はにを長靴に 

うしろより風が耳吹く種撰み

雀らの藪に入りこむ忘れ雪

花杏汽車を山から吐きにけり

みちのくは道に棚出し種袋

落第の始末にゆくや韮の花

木の瘤を鴉とまがふ春の土堤

鮒鮨を買はむと越ゆる花峠

古櫻雀を吸うて吐きにけり

花の萼こぼれて十日銹びにけり

鉄線が咲く田のこちら田の向う

水の香の早乙女といますれちがふ

田を植ゑしはげしき足の跡のこる

何もかも映りて加賀の田植かな

南天の花にとびこむ雨やどり

なめくぢも夕映えてをり葱の先

夏花とて三ッ葉小花もうちまじり

谷水を汲んでは茄子の根をぬら

茄子の花こぼれて蜘蛛をおどろかす

白萩に尻さはられつ畑を打つ

萩を吹きあまりし風や豆腐まで

種あつめゐて朝顔の色忘る

吹かれては山女を散す葛のひげ

とびついてとるあをぞらの熟れ棗

めんどりにして蟷螂をふりまはす

河原までつゝぬけに見ゆ實むらさき

菊切りに出てゐて茜びたしかな

汽車着きし音の近さや蓮の骨

届きけり霰ちる日の蕪寿し

巴書林「飴山實句集・辛酉小雪」より抜粋



     ・・・・・

南風俳句会・村上主宰より薦めていただいた句集の一冊を丁寧に読了。


どなたかの俳句記事のコメントで以前触れたことがありますが、今の俳句初心者への俳句指南には、

・季重なりをできるだけ避ける
・動詞の多用に注意する
・擬人化に注意する(避ける)
・季語の近い、遠いを気にする

などがよく言われ、私自身もこれらを強く意識して作句をしてきました。
ですが、長年俳句に関わられてきた方にこのことをお伝えしたところ、出来上がった句が魅力的でさえあれば、どれも気にすることはない、とのお話を伺い、確かにそうだよなあ、と。

その後、改めて、その点に重きを置いて先人の句集を読んでみています。

良い句、魅力的な句、を見極められるようになるには、とにかく学ぶこと。

「辛酉小雪」には、石川県小松市出身、学生時代を京都で過ごされた飴山氏ならではの、地方色豊かな自然を背景にした句が多く、奇をてらわない自然な、穏やかな句の印象。
細かくは、動詞の使い方、助詞の使い方に多く学びがありました。

村上主宰が薦めてくださった理由をとても感じることができました。

お気持ちありがとうございます!