俳句の鑑賞㉞
季語:雪(三冬・天文)
作者が橋の上から覗き込んでいる池には、見ただけで病んでいるとわかる鯉がいます。
そして、降り続く雪は、かなりな量。ただひたすらに池の水の中に消えてゆくのです。
さぞかし寒いことと思いますが、その鯉から目を離すことができずにいる作者と、雪の降り積もった周りの木々や、しんと静かな様子も見えてまいります。
その後の鯉のことも気になります。
季語:初蝶(仲春・動物)
運河の橋、という措辞でぱっと思い浮かんだのが小樽の景。四季をとおして美しい景色の街並みですが、春はまた、ひときわ美しいことでしょう。
運河の流れや、そこを行き交っている舟などなどを橋の上から眺めつつ歩いている作者は、初蝶とすれ違います。
恐らく、咲き始めた花々や初々しい草なども周りには生えているのでしょう。初蝶の動きを目で追う作者。穏やかな時間の流れと平和を感じます。
季語:日永(三春・時候)
上五、庭の無き、中七、モデルハウス、と続く措辞から、初見、冷たさを感じます。もしかしたら、現代風のコンクリートむき出しの無機質なモデルハウスなのかもしれません。
ですが、そこに現れる季語「日永」に、気持ち少し救われます。
長くなってきた春の一日、そのモデルハウスを次々と人が訪れ、その人たちの未来をそこに描いたりもするのでしょう。
冷たい印象が、温かさに変わりもいたします。
季語:花梨(晩春・植物)
晩春に訪れた美術館には誰もいません。静まり返った館内と並べられた作品。少し淋しくはあるものの、贅沢な時間です。
ひとりに開く、という措辞に惹かれつつ、楚々とした真っ白な花梨との取り合わせが見事と思います。
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「南風」村上主宰と津川顧問句集の「俳句鑑賞」の経緯はこちらの記事に。
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