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俳句の鑑賞㊿


夕暮れの蠅ひとつ付け石蕗の花

村上鞆彦句集「遅日の岸」P.103

季語:石蕗つわの花(初冬・植物)

蕗の葉のような葉をもつ、石蕗の花は、山道、街路、庭先、色々な場所で見かけることのできる、菊に似た鮮やかな黄色の花。

石蕗の花

この花に黒い蠅がとまれば、さぞかし目立つだろうなあと思います。

冬の季節になり、あまり元気のない蠅がひと休みしたのは、真っ黄色な石蕗の花の上。夕暮れ時にそれを見つけた作者には、石蕗の花のシミ、或いは、ブローチのように見えたのかもしれません。
石蕗の花の一部となっている蠅に、可笑しみと少しの哀しみを感じます。


水仙のはつきりと顔上げて咲く

村上鞆彦句集「遅日の岸」P.104

季語:水仙(晩冬・植物)

本日の二句目は、水仙の花。多くの方にお馴染みと思います。

水仙の花

水仙、蕾の時は上を向いていますが、咲き開くにつれて頭を南向きに垂らしてしまうものがほとんど。時には、がっくりと俯いて咲いているような水仙も見かけます。

そのような花が多いなか、作者は、顔を上に向けている水仙に出会ったのです。「はつきりと顔を上げて咲く」水仙には、作者も、そして、読み手も元気をもらえるような気がいたします。


星月夜刺繍の裏を糸奔り

津川絵理子句集「夜の水平線」P.117

季語:星月夜(三秋・天文)

刺繍は、その刺繍の種類にもよりますが、大抵の場合は刺繍糸が縦横無尽にわたります。糸の色を替える時や、玉止めをする時などには、よく裏側に目がいきます。

夜、刺繍をしている作者。窓から見える空は、満天の星。そして、布の裏側に奔る色とりどりの糸をじっくりと見つめたのかもしれません。
刺繍の玉止めが星、奔る糸がそれを繋ぎ、星座のようにも見えるようにも。もし、布が黒色だったとしたら、、、読み手の想像が膨らみます。

静かな秋の夜であります。


左利き同士並びてラ・フランス

津川絵理子句集「夜の水平線」P.117

季語:ラ・フランス(三秋・植物)

最近は、昔にくらべて左利きの方が多いように思います。(昭和の時代には、右利きに矯正する場合が多かったようにも)個性を尊重の時代になったのでしょう。

ラ・フランスとの取り合わせが、非常に効いている楽しい御句であります。爽やか。


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「南風」村上主宰と津川顧問句集の「俳句鑑賞」の経緯はこちらの記事に。
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