俳句の鑑賞《66》
季語:雛祭(仲春・生活)
まずは、「雀」について。
俳句の季語としては、初雀(新年)、雀の子(晩春)、寒雀(晩冬)があり、日本人の普段の生活の中において、一番身近な鳥と言っても過言ではありません。
ですが、雀、だけでは季語ではなく、この句の季語は「雛祭」。仲春の季語なので、もしかしたら、春の産卵を控えた、或いは、産卵後や抱卵期の雀なのかもしれません。
ちゅんちゅんと盛んに鳴いている雀。作者は、そこに会話を見出したのでしょう。
家では、女児の節句、雛祭りが行われています。間もなく、雛の世話で忙しくなるだろう雀のお祝いの言葉、のようにも思えてなりません。
季語:春風(三春・天文)
のどかでのんびりとした、あたたかな春風。その春風が、作者の顔をなでてゆきます。
ですが、「こころに遠く顔吹かれ」とまるで、作者にとっては他人事のようです。
暖かな春風は、自ら内面とは遠く離れた、別の世界で吹いているのでしょう。
そして、そのように固まってしまっている作者のこころを、春風はきっと少しずつ溶かしてくれるように思います。
季語:年用意(仲冬・生活)
エプロンについたポケットはひとつ。恐らく、大きなポケットに違いありません。
そして、季語「年用意」の力か、私には、ドラえもんの四次元ポケット、のようにも思えました(笑)
新年を迎えるための、年末の様々な用意。エプロンのポケットには、色々なものを入れたり、出したり。あれもこれもと、大忙しの作者であります。
季語:年の暮(仲冬・時候)
年用意で忙しい日々をおくる作者に、年の暮が訪れます。
恐らく、寝不足なのでしょう。気がつけば、あくびが出て、なんと、頬にはふたすじの涙が。
驚きつつも、さっと涙をぬぐいます。
年の暮といいつつ、またまた忙しい新年が、作者を待ち構えているのです。
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「南風」村上主宰と津川顧問句集の「俳句鑑賞」の経緯はこちらの記事に。
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