俳句の鑑賞㊹
季語:日盛り(晩夏・天文)
夏真っ盛りの最も日差しの強い時間帯、「ぴし」と音をたてて地面を打ったのは、鳥の糞。
余りの暑さに身体も気持ちもだらりとしている中、その音と、真新しい糞に驚いて、一瞬、暑さを忘れるように思えます。自分に落ちてこなくてよかった、な気持ちも。
共感を得る読み手も多いのではないでしょうか。
あまり美しくはない景を、品よく収める、が際立っていると思います。
季語:冷やか(仲秋・時候)
白波、陸側から見ると、確かに沖をふりむくことはありません。この目線に、私はハッといたしました。
その事実に気が付く冷静さ。その海、その波には、すっと身体も頭も一本筋が入るような、秋らしい冷ややかさ。
そして、同時に、自分自身も前を向こう、と決めた作者なのかもしれません。
季語:春愁(三春・生活)
女性は、身に着ける装飾品に拘る人は多くいます。中でも、耳飾には、それぞれの個性、その時の心持ち、が色濃く反映されるように思います。
アンモナイトの耳飾、とても個性的で、ふと遠い古代へ遡れるような、深い海の底に沈んでしまいそうな。
春愁、という季語と相まって、様々な思いが巡ります。
季語:朧(三春・天文)
鳥籠の鳥は、日が落ちると布を被せられ、その中で静かにし、いずれ眠りに落ちます。ですが、ふとした時に、バタバタと羽音をさせて、飼い主を驚かせたりもいたします。
ですが、この句の鳥は、布は被せられずに夜を過ごし、春の暗い部屋の中で静かに眼を開けていて、その様子を飼い主である作者も静かに見守っているように思います。
鳥も飼い主も、心地よい暖かさの夜に、何かに心を奪われているのかもしれません。
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「遅日の岸」より、村上主宰ご自身の「自選十句」を、YouTube 「ハイクロペディア」で順に見ることができます。
第五回は、
第六回は、
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「南風」村上主宰と津川顧問句集の「俳句鑑賞」の経緯はこちらの記事に。
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