俳句の鑑賞《59》
季語:蛇(三夏・動物)
木の枝に、蛇がいることを見つけた作者、暫し見入ります。
すると、ぽつぽつと雨が降り出し、間もなく、しっかりとした雨足に。作者は、傘をさしたかもしれません。
蛇の方はといえば、木の葉に守られ、雨のことなど気にもせずに、そのまま、その枝に留まっているのでしょう。そして、木は、しっぽりと雨に包まれます。
「雨の木」との措辞が、詩的であること、そして、「となりにけり」と丁寧に詠むことで、木と雨と、そして、蛇の景が格別に浮き上がり、作者の、はっとした驚きもまた伝わってまいります。
季語:立葵(仲夏・植物)
立葵という植物、夏に入ると俄然その存在が目に付きます。少し郊外へ行くと、写真のように、夏空を突く立葵がにょきにょきと。
ですから、立葵と空は、切っても切れない間柄、だと個人的に思っています。
そして、作者もまた、雲と立葵の魅力を詠んでいます。
遠くに見える雲を、遠くそのままに過ぎゆかせつつ、変わらずに立っている立葵。
「雲さん、またね、ぼくらはのんびりここに立っているよ」、そんな立葵の声が聴こえてくるようです。
季語:花柘榴(仲夏・植物)
まずは、花について。
「柘榴の花」と「花柘榴」は、実は違う品種。
私自身、日ごろ目にするのは、「柘榴の花」であり、実になった姿も大好きな植物のひとつ。
花柘榴は、色も、朱・白・絞り、と色々あり、八重の大輪であります。
「日めくりに透ける次の日」の措辞については、共感を得る方が多いのではないでしょうか。
日めくりの紙、多くのものが薄いので、確かに次の日の文字、透けていますよね!
そして、作者が取り合わせたのは、花柘榴。八重の様子が、まだ残っている枚数も多い、日めくりのページのようでもあります。
季語:夏の月(三夏・天文)
夜、日中の暑さから解放され、心身ともにほっとして見上げるのが、「夏の月」。
作者は、その「夏の月」が出ている街に、楽器屋さんを見つけます。ショーウインドウの中には、ギター、そして、その隅にはウクレレ。
ほんの少しの海外の香りと共に、心地よい夜が読み手にも伝わってまいります。
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「南風」村上主宰と津川顧問句集の「俳句鑑賞」の経緯はこちらの記事に。
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