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#1 20241224 素朴さと熱情 山下清展 滑り込みレポ
私が見たものは全てではないが、私が見たすべてのものは美しかった。
山下清展 滑り込みレポ
休日、福岡県立美術館に向かった。山下清の大懐古展が行われているからだ。
彼は幼い時の病気の後遺症で、軽い言語障害と知的障害を持った。
今で言う小学校時代にはそれがきっかけでいじめに遭っていたようだ。
彼の転機となったのは、八幡学園という学校に通い始めてからだった。
彼はそこで、のちに彼の作風となる「貼り絵」を見出し、才能を開花させていく。
初めは昆虫ばかりだったそれも、いつしか人を描く様になってくる。
彼の心境の変化は、私にとってとても好ましいものだった。
彼は18歳の時、突然放浪の旅に出てしまう。自宅や学園に帰ってきては、その際の記憶を頼りに、作品制作にあたっていたようだ。
本展覧会の目玉でもある、「長岡の花火」は、大きなスケールでありながら、微細なチップによって構成されている。
水面の反射や、そこにいる人々を彼なりの技術で完成させていく。
彼はゴッホと比較されることもあるようだ。というのも、この貼り絵の技法が、印象派の油絵と似ていると指摘されるからだ。確かにゴッホなどのように、自画像や風景画を模様のように描くのは、貼り絵の重なりや歪みと似ている。
稀代の天才であった清は、その名を国内外に轟かせ、人気作家になる。
その後はヨーロッパへの遠征、東海道五十三次のリメイクなど、精力的な活動を見せるが、49歳という若さで、脳溢血に倒れる。
彼の儚くも、充実した人生に圧倒された。
曰く、明治天皇も見た景色は、お供や家来がいない方が、綺麗だという。
彼の行動原理と、自負からなるその発言には、深く感銘を受けた。
珍しく図録を買った。
時として私は彼に助けを乞うことになるだろう。
暗い夜道に溶け込んで、私は独り帰った。
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