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ペーパークラフト~無いのなら、いっそ自分で作ってしまえっ!

 今から20年以上前のこと、ある中学校の1年生で郷土理解をテーマにした総合学習を行っていました。郷土理解と言っても様々な学習分野がありました。私は理科教師でしたが、なぜか歴史の分野を担当したいと希望しました。さて、どんなことを研究させるのが良いだろうかと少し悩みながらも、生徒の興味・関心をもとにいくつかの研究グループに分けました。その中に郷土のシンボルでもある「鶴ヶ城」を調べるグループがありました。そのグループの話を聞いていたとき、蒲生氏郷が築城したときの七層の天守閣の話が出てきました。「面白そうな内容だね。」と言うと、生徒たちも乗り氣になってきたようでした。「ところで、七層のお城はどうやって、みんなに伝えるの?」と聞いたところ、パンフレットの想像図をプレゼンの資料に載せるといいます。中学1年生の発表なのだから、それでもいいか・・・と思いながらも「せっかく、七層のお城があったことに辿り着いたのだから、今、五層になってしまった理由や七層と五層のお城を比較してわかったことを発表してみたら・・・」と助言していました。しばらくしてある生徒が「先生、模型!・・・模型を作って比較したい・・・」と言ってきました。「それはいいアイディアだ!ネット上には、歴史的建造物をペーパークラフトで再現している人がたくさんいる。お城もあるかも知れないね。」そう言って背中を押してあげました。後日「先生、インターネットで調べたけど、どこにもありません・・・どうしたらいいですか?」背中を押した手前、諦めろとは言えません。・・・「わかった。任せろ!無いなら作ればいい!」そう言って、私の「鶴ヶ城七層天守再現プロジェクト」をスタートさせました。
 そうは言ったものの、さて、どうやって作ろう?頭の中で自問自答の秘密会議が繰り広げられました。「屋根の形状など、構造物はよく見ると複雑だ・・・(汗)。曲面はどうすれば良い?誰か意見はないか?・・・・・・沈黙・・・・・・・悩んでいても仕方がない。できるだけシンプルに考えよう。壁は長方形だし、屋根は台形と長方形を組み合わせればいけるのではないか?・・・その通りだ!いける!台形と長方形を簡単に作るソフトウェアは何だ?CADは使ったことがないし、覚えている時間などないぞ。・・・・・・・・そうだ!EXCELだ!!これなら作図は簡単だ!!!」あっという間に、前代未聞のEXCELでのペーパークラフト設計が開始されました。資料や写真を参考すると、石垣の地面に接触する部分が最も長いので、その部分がB4用紙に収まるようにして、基準を決めました。後は部品となる部分の寸法を、比を求めて決めていけば良い!なんだ。簡単じゃないか。パッパと部品をEXCELで制作して印刷します。いざスタディモデルの制作開始です。まずは、石垣をつくろう。台形4つを繋げて・・・あれ?おかしい?しまった!3次元の物体を写真に撮ると2次元になるのを忘れていました。3次元で傾斜している石垣は、平面の写真で見えるよりも長いのです。再度計算して作り直すと今度は上手くいきました。待てよ。傾斜している石垣をやり直したのなら、屋根も同じでは・・・。何事もやってみなければ分からないものです。構想から1日と数時間、試作第1号が完成しました。それは屋根と壁と石垣のみの簡単な模型でしたが、それらしく見えるから不思議です。七層の鶴ヶ城を復元するという壮大なロマンに、一歩近づいた瞬間でもありました。その後も生徒たちと話し合いながら、試作モデルの更新は続き、下見板張りの黒色の七層天守閣を再現することが出来ました。平面の復元図を立体モデルへ変化させるには、平面とは比較にならないほどの情報量が必要です。あらゆる資料を調べて情報を集め、それでも足りない部分は推測で補わないと完成しません。現存しないものを復元する面白い取り組みでした。
 その後、現在の五層の鶴ヶ城のペーパークラフトの設計を趣味の一つにしました。天守閣の部品精度を高めて、走り長屋を追加して、よりリアルな城を再現したかったのです。相変わらず、ソフトウェアはEXCELの図形機能でしたが・・・。フリーのテクスチャーをネットから見つけてきたり、屋根の裏側の形状を工夫して歪みを減らしたり、作っては設計の繰り返しでしたが、それらしく見えるように進化してきました。途中、瓦の色が赤瓦に変更されてリニューアルされたことで、ペーパークラフトも赤瓦バージョンになりました。数年前に鉄門を再現しましたので、次は南走り長屋と干飯櫓でしょうか。ペーパークラフトは集中力を磨くのに最適ですが、細かい作業なので、目にかかる負担が大きいと感じま・・・いや、単に老眼なのだろう。久しぶりに作りましたが、縮小版で制作したので手先の感覚が鋭くなったように感じます。たまにはいいものです。このパーパークラフトはプレゼント用に作りました。以前、私のnoteで記事にしたSNSで奇妙な出会いをした人への贈り物です。2ヶ月後の3月に来日するようですが、その時に渡せれば喜んでくれるかな?と思ったのです。二人のやり取りは10日ほど続きましたが、今は途絶えています。現実の彼女はどんな人物なのか謎のままですが、もともと奇妙な出会いだったので、奇妙な別れも当然なのでしょうか。SNS上の見えない相手は、本人なのか?それとも誰かのアバターなのか?真実は分かりませんが、優しい人であったことは確かです。翻訳機を使いながら、毎日数時間も会話するなんて普通のことではありません。毎朝、送ってくれた「おはようのショートメッセージ」には、その日をしあわせな氣持ちで過ごせるような、あたたかいエネルギーを感じていました。そんな人を疑うことができるでしょうか。noteの記事は削除しましたが、「時すでに遅しToo Late」でした。このことが原因なのであれば、心から謝りたいと思います。それから、海外情勢も不安定なのでトラブルに巻き込まれていないことを願っています。未完成だったペーパークラフトを完成させたのは、最後に綴った「またね。」の一言に嘘をつかないためです。無いことを悔やむより、前進して引き寄せよう!それが僕の生き方なのだと・・・。
 妻を亡くして1年が経ちましたが、ふと思い出すときがあります。それは、僕がずっと探し続けているものが、まだ引き寄せられていないからなのでしょう。SNSの奇妙な出会いから、それが何なのかがハッキリしました。それは、何気ない「おはよう」の一言に込められていた、誠実な心から発せられるエネルギーに他なりません。相手が誰であれ、そのことに氣づかせてくれた大切な出会いだったのです。ペーパークラフトは壊れやすく、儚いものです。でも破壊と再生、新しい始まり、すなわち、また作ればよいのです。そう考えると、SNSの奇妙な出会いがパーパークラフトのように思えてきました。願い、そして今、何かを行動すれば、きっと未来を自分で創造することができるはず!Good Luck!!


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