きっと彼は猫になる
「きっと彼は猫になる」
日本SF作家クラブの小さな小説コンテスト「さなコン」に応募した作品です。
小説を書いたのは実に7年振りでした。
4月にpixivのおすすめ作品に掲載されて気をよくした私は、何か新しい話を書いてみようかな、締め切りがあるといいな、と、pixivのコンテストの中からさなコンに応募することにしました。
「SFって、すこしふしぎ、だよね?」くらいの認識しかなかったけれど、書き出しに興味をもったのと、「小さなコンテスト」とのハートフル感だからSF初めましてでもきっと大丈夫だろう、と思って書いたのでした。
久々に小説を書ききった高揚感で、当初はヒャッホー、としていたんですけども、一次選考を通過した頃から「皆さんすごくない?!」「え、これSF初めましてでのほほ~んと参加しちゃダメだったんじゃない?!」と、私は怯え始めました……。
いやいや! 読んでくれた人がいて、選んでくれた人がいるのだから、卑屈になってはいけないわ! 私が私の子どもたち(作品)をかわいがらないでどうするの!! と、思って気持ちを奮い立たせていましたが、最終40作品になってグッと注目が集まり、私はブルブルと震えました。
たいへん胃の痛い日々ではありましたが、久しぶりに新作を書けたこと、たくさんの方に見ていただいたこと、ありがたくも最終に残していただいたこと、丁寧な選評をいただけたこと等々、たくさんたくさん感謝しています。ありがとうございました。
さて、作品の背景について語ります。(ネタバレ注意)
主人公(明るい女の子)転校生(大人しめの男の子)、死後の世界の学校、ということだけ決めて、あとは出たとこ勝負で2人を合わせてみて、書きながら考え……る暇もなく、わーーーーっと書き付けていく、という感じでラストまで突っ走りました。演劇のエチュードみたいな感じ。役者同士の即興劇。なので、どんな話になるのか、私もラストまで実はよくわかっていませんでした。思ったより明るい方向に着地したなぁ、と母(私))は思いました。
自分の進路も決められないでズルズルしていた主人公だけど、子猫を助けるために迷わず行動したり、「あなたを探してあげる」なんて迷わず口にしたりと、ビックリすることばかりでした。
自分のことはそっちのけなのが心配な我が子たちですが、守るべきもののため、きっと強く生きていってくれると思います。(おなかぽんぽこりんの子猫は幸せの象徴)
かれこれ7年ぶりに出産(=執筆)した我が子が、まさかまさかでたくさんの人の目に触れることになり、母(作者)はオロオロしてばかりでしたが……。
たくさんの人と出会い、誰かとともに成長していくであろう我が子(物語)のこれからを楽しみにしています。
このご時世になって、私は徹底的なステイホームで、市内からもほぼほぼ出ない生活をしています。時が過ぎるのをじっと待っているような。
私は幸いにも今のところ食べ物には困らない環境下にあって、生活が出来ているけれど、食べることに困って苦しんでいる人がいること、誰にも助けを求められず、耐えきれなくなってしまう人がいるということも耳にしています。
膝を抱えて時を待ち続けるしかできない状況にあって、お腹を空かせていたら、それはもうしんどいなんてものじゃない。
食に携わる仕事をしている知人は「人はお腹が満たされている限りは生きていける。どんな時でもたくさん食べて、生きてほしいとこの仕事をしている」と話していました。
私にとって物語は現実を忘れるためのものではなくて、物語を読み終わったときに前を向いて自分の現実に帰っていくためのものです。
生きていくってなかなか大変で、しんどいことだらけかもしれない。それでもそんなに悪くはないかもよ、お腹を満たして、ちょっとだけ心を満たして、自分の現実を生きてみようかな、と思えたらいいな~と願っています。
お腹を空かせていた彼のキャラクターはどこから出てきたんだろうな~、と自分でもよくわかっていなかったのだけれど、緊急事態宣言でバタバタしていた9月にふと、今置かれている現実の中からの願いだったのかな、と思ったのでした。それくらいじゃ救われないかもしれないけれど、それでもどうか、おなかぽんぽこりんにして、生きていってほしいなと思います。
……そんなこんなを意識して作品に落とし込めたら一番いいのですが、それはそれで重苦しくなっちゃうと思うので、あとから「私はこういうことを考えていたのかもしれないなぁ」と推測してみるくらいがちょうどいいのかもしれません。
色々なことが早く落ち着きますように。
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