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オチなんてないさ
午後、昔買った本を読んでいたら、あっという間に日が暮れた、と思ったら曇天になっただけだった。15時だった。
私はリビングのとなりにある台所のライトをつけて、カーテンを閉めた。
ぼんやりとした灯りの中、私は読み進めた。
集中力が落ちてきた。
これからどうしていこう。
毎日毎日、私は何をしているんだろう。
天気のようにどんよりとした気持ちになってきたとき、天井から低い音が聞こえた。
家には私と愛鳥しかいない。
一緒に1階のリビングにいる。
物が落ちた音だろうか。
いや、それにしては何かが違う。
ゴトン、とかドン、ではない。
例えるならノックのような音が「ゴンゴン」と響いて聞こえたのだ。
しかも、2階の床からというよりも、文字通り1階の「天井」から音がした。
そんな気がした。
何だろう。
私はちらりと上を見た。
特に変わったようすはない。
するともう一度、ゴンゴン。
同じ場所から音がした。
2階へ確認しに行くのはやめた。
読書を再開した。
しかし、どうにも周りの音が気になって仕方ない。
私はHSP気質だが、こと「物音」に関して過敏度は低い。
それなのに、天井から正体不明の音がしたせいか、あらゆる音が耳に入り込んで、読み進めるのを妨げた。
風の音、雨粒が窓を叩く音、屋根から物置に落ちたであろう水の音。
時計の秒針が動く音、冷蔵庫の音、正体の分からない「カン」や「コン」。
私は何をやっているんだろう。
私は何がしたいんだろう。
頭がぼーっとしてくる。
もう読むのをやめよう。
そう思ったとき、むにゅう、と首の付け根あたりを指で押された。
否、押された感覚があった。
何?と思って手が止まる。
愛鳥は何も言わない。
私の右斜め後ろにあるケージの中で静かにしている。
こういうときどうしたらいいのか、私は知らない。
本やテレビでしか、この世のものではない何かを見たことはない。
でも何となく分かる。
時間を置いちゃいけない。
私は愛鳥のようすを確認するつもりで、ごくごく自然を装って振り返った。
予想通り、何もいなかった。
いや、愛鳥がいた。ホッとした。
心霊番組の場合、顔を戻すときに怖いものがバーンと出てくるのがお決まりのパターン(?)だが、私が向き直っても、そこにはパソコンと本があるだけだった。
それからしばらく、周りの音が気になったが、特に変わった現象は起こらなかった。
2階を確認したが、何もいなかった、と思う。
たぶん、気のせい。