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「それはそれであり」
ー"サプライズ・ツアー"
新潟県十日町市内でランチを食べた後、バスは群馬県沼田市にある農園へ。そこで30分間食べ放題のりんご狩りを楽しむのが、この日帰りバスツアーのもう一つの目玉だ。昼食を終えてから1時間半。さらに、わずかな時間の食べ放題サービス。りんごを胃に入れる余地も、りんごを捥ぐ時間もあまりないタイミング。実に練り込まれた計画だと感心する。
関連リンク:「"サプライズ・ツアー"」「何を今さら」「ま、いっか」
練り込まれた計画
「りんごは食べられる分だけを木から捥ぐようにお願いします」ー。目的地である農園にバスが着く直前に、このバスツアーの添乗員が説明してくれた。正直なところ、ランチを食べたばかりでお腹は空いていない。むしろ、昼寝させてもらいたい。到着はそれを見越したタイミングと言える。
食べ放題の制限時間はわずかに30分間。食べても食べてもお腹を空かせたままの"餓鬼"でもない限り、それほど多くの量は食べられない。バスが止まり、扉が開かれる直前に「食べられても3個、あるいは4個でしょうね」という添乗員の言葉が、実に”ダーク”に聞こえた。まさに"計画的犯行"だ。
農園のりんご狩り専用の区画には「ふじ」「あいかの香り」「陽光」「ぐんま名月」の4種類の木があり、いずれも所狭しと大きな果実をつけていた。りんごの甘酸っぱい香りもほのかに漂い、それだけでお腹いっぱいだ。あいかの香りを2個捥いで食べたが、それ以上はどうにも胃が受け付けない。
SNSありき
りんご狩り・食べ放題という看板に「偽りあり」とされても決しておかしくなさそうだが、イチャモンを付ける気にもならない。農園にあるりんごの木々の緑、たくさんの色付いたりんごの赤。このコントラストが実に可愛らしく、それだけでもお金を払う価値があると感じていた。
さぞかし、"ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)映え"するだろうー。そう思っていると、このツアーに参加していた若い女性の2人組。りんごの木を背景に、片手に持った最新のスマートフォンでシャッターをバシャバシャ切り、「萌えるね」と上機嫌に連呼していた。
先に立ち寄った清津峡渓谷トンネル(新潟県十日町市)と併せ、このツアーの計画について考える。紅葉を堪能できない紅葉狩り、りんごを味わい尽くせないりんご狩り。それでも"SNS映え"抜群の眺めがあれば、そこそこ楽しんだ気になれる。SNSありきのレジャーが令和以降の王道なのだろう。
「それはそれでありだよね」と奥さんはいう。間違ってはいない。(続く)
(写真:群馬県沼田市にある農園。鈴なりになる真っ赤なりんご。葉の緑とのコントラストが可愛らしい=りす撮影)
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