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ベトナム紀行「行かずに死ねるか」(3)

8割「雨」評価ー後期高齢者と旅するベトナム4日間

「これが最後になるかもしれないから」ーー。こんな義母さんの切なる叫びに応え、後期高齢者3人とわが夫婦が一緒に旅行したベトナム。きっと喜んでもらえると信じていたが、最初からトラブルが続いたこともあり、どうもそれは期待通りに行っていなそうだ。義母さんを含む後期高齢者3人による評価を天気に例えて推し量るに、いずれも「雨」と答えるだろう。奥さんもきっと「雨」。ただ個人的な評価は、どうしても「晴れ」と言いたい。

 ※関連リンク(ベトナム紀行シリーズ):「『行かずに死ねるか』(1)後期高齢者と旅する4日間」、「『行かずに死ねるか』(2)自己中率60%の集団

一人「晴れ」のワケ

旅行メンバーの8割が雨と答えそうな状況。どうにも苦労は報われない。だが報われたいがために、この旅行を個人的に「晴れ」と評価したわけではない。10年ぶりのベトナム・ホーチミンシティは街並みもすっかり発展していたが、それでもかつて泊まった安宿の細い路地など変わっていないところも一部あり、それが確認できて良かった。

タクシー配車アプリ「Grab(グラブ)」を試す目的も果たし、今後、公私にわたり、アジアを訪れるときにこのアプリをフル活用できる目処が付いた。相次いだトラブルに不安・不満を募らせた"ワガママ高齢者"らに理不尽な言われ方もしたが、後に振り返り、こうしたトラブルが良い思い出に変わることも知っている。

奥さんの「雨」評価は残念に思う。義母さんの強い要望に答え、この旅行を企画・立案したのは何を隠そう奥さん。夜遅くまでインターネットでホテルを吟味し、行程を盛り込んだ手製のしおりまで作って手渡すなど、良い旅行になるよう努めていた。悲しくもトラブルに不安・不満を募らせた高齢者による心ない言葉の犠牲になってしまったが。

もっとも、奥さんにきちんと感想を聞けば、低評価を上方修正し、「雨のち曇り」程度になるかもしれない。ベトナムで初めてネイルサロンに行って気分が上がったようなので。個人的に仕事の関係で一足先に帰国したのだが、2日後れて帰ってきた奥さんの表情は決して厳しくなかった。あきらめず上振れに期待したい。

不安・不満の根底

相次いだトラブルのうち、高齢者らの心を強く圧迫したのは、おそらくホテル予約に関する先方の不手際、そして熱帯低気圧の直撃だろう。ホテルの不手際については、料金が引き落とされているにもかかわらず、部屋が確保できていない状況が発覚。しかもベトナムに着いた当日の出来事。慌てて最寄りのホテルに別の部屋を確保することになった。

熱帯低気圧では、激しい雨と突風の中、ホーチミンの中心が交通マヒする事態になり、タクシーも呼べず、夕飯を食べた高級レストランのエントランスでひたすら待ち続けることになった。そもそもホテルの件で、高齢者たちが機嫌を悪くしていたところに、この件が追い討ちし、「これまでで最悪の旅行」(義母さん)になったようだ。

確かにそう思っても無理はない。楽しい旅行になるよう期待していたが、残念という以外に言葉はない。ただ、こうしたトラブルは日本ではありえないが、アジアではそこそこある。実際に経験したこともあり、"アジアの洗礼"とも言える。そのため、こうした経験も含めて楽しんでもらいたかったが、それを求めるのはさすがに厚かましい。

旅行会社に勤める知り合いの愚痴を思い出した。プロでもそうなのだから、旅行のおもてなしに関してズブの素人に専門家と同等、もしくはそれ以上のサービスを求められても困る。高齢者3人には楽しんでもらえなくて残念という言葉以外に何もない。ただ、これを気にせず、個人的には良い旅行だったと満足しておこう。すでに次の自由な海外旅行に目を向けている。

(続く)

(写真〈上から順に〉:お土産屋に並ぶホー・チ・ミン像=りす、交差点にひしめくカブの群れ=奥さん、ベトナムで初のネイルに挑戦=奥さん、滞在したホテルの屋上からの眺め=りす)

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りす=ハードボイルド
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