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めざし談義
ー俳句より献立の参考!?
めざし(目刺)は干物の一種。小魚のイワシを塩漬けにし、目玉に竹串や藁を刺して乾燥させたもの。俳句の世界では、春の季語でもある。江戸時代から庶民のおかずとして親しまれ、冬から春にかけての下町の景物だったそうだ。俳句が趣味の奧さん。近づく春にちなみ、めざしをテーマに一句詠みたいらしいが、なかなか良い句が思い浮かばない様子。こんなときは必ず、ヒントを得ようと話しかけてくる。ほら、来た!
先人の助言
「めざしにまつわるエピソードない?」ー。そう尋ねてくる奧さん。手作業を止めず、ないと即答すると、「ないわけないでしょ!」とどういうわけか上目線。ここまで来ると、すでに一端の取り立て屋だ。
打ち出の小槌じゃないんだから、そう簡単に役に立つエピソードがぽんぽん出てくるわけないでしょと言いたい。映画『機動戦士ガンダム』に出てくるセイラ・マスも言ってたぞ、「人がそんなに便利になれるわけない」って。
それで引き下がるとも思えず、苦肉の策で父親のエピソードを話す。幼い頃、めざしを食え食えとよく言われた思い出。カルシウムがたくさん摂れるから、背が伸びるやら骨が強くなるやら。父方の祖母も確かそうだったわ。
「うちもそうだったよ」と奧さん。俳句そっちのけで相づち。他界した義父が言っていたらしい。先人は偉大だ。サプリメントで補おうとするのではなく、天然の食材から得ようとする姿勢もどこか感心するところがある。
実際、あるサイトで食品のカルシウム含有量を調べたところ、めざしはトップクラスだ。「魚を骨ごと食べる上、干物にする過程でカルシウムの含有量がぐんと上昇し、とても効率良くカルシウムを摂れる」とのこと。
夕飯の献立
「シシャモが好き」と、やにわに奥さんが言い出す。なるほど、めざしを食べるくらいなら、シシャモを食べると言いたいのだろう。同感。シシャモもめざしと同程度のカルシウムを含むらしい。そういや、昔、母親もよくシシャモを焼いてくれたっけ。そして、その日の夕食のテーブルにはシシャモが並んだ。俳句より、夕飯の献立の参考になったよう。
おーい、奧さん。俳句はどうしたー!?
(写真:『りすの独り言』トップ画像=フリー素材などを基にりす作成)
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