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ベトナム紀行「行かずに死ねるか」(2)
自己中率60%の集団ー後期高齢者と旅する4日間
今回のベトナム旅行の参加者5人。このうち、義母さん、義母さんの友人夫婦のご主人、そしてわが奥さんの3人は、"超"が付くほどワガママだ。実のところ、このメンバーで旅行するのは4回目。当然、その辺りの事情を熟知している。そのため、転んでもただ起きてなるものかという腹づもりをし、自己中率60%の集団の中で4日間過ごすことへの対策に万全を期した。予想通り、ベトナム・タンソンニャット空港に着いたその日のうちに、早くも"ワガママ砲"の洗礼を浴びる。ただ、そこはそれ。対策のおかげで得るものを得て、こちらとしてはニンマリだ。
※関連リンク(ベトナム紀行シリーズ):「『行かずに死ねるか』(1)後期高齢者と旅する4日間」
等価交換
後期高齢者らとのホーチミン行きは、引率役の奥さんをサポートするという意味合いもあったが、献身的に支えるというきれいごとだけでは、自己中率60%の中で身が保たない。連射されるワガママ砲に耐えるには、それと等価交換できうるものが必要だ。
タクシー配車アプリ「Grab(グラブ)」を試すことに、その活路を見い出した。このアプリを使うのは今回が初めてになる。そのため、設定や入力の作業に手間取り、結果、義母さんらをイラつかせることになるだろうが、経験値として得られるものは大きい。
このアプリはタクシーのサイズ、料金の支払い方法、行き先を入力し、予約ボタンを押すだけで、タクシーを呼べる仕組み。ドライバーと料金交渉しなくても、アプリを通じて料金が分かり、ボラれる心配がない。さらに、わずかな時間で迎えに来てくれる。
個人的には、今後東南アジアを旅行する際の"お試し"になる。また義母さんらは性格が明るいといえ、やはり後期高齢者。足が弱く疲れやすい。無理に歩かせるわけにも行かず、タクシーに頼りがちになる。アプリを使いこなせれば、募る不満を減らせる。
砲撃開始
ベトナム・ホーチミンシティの玄関口、タンソンニャット空港に着くと、案の定、義母さんのワガママ砲に火を吹き出した。安全・安心だからこのアプリを使うこと、さらにちょっと設定に時間がかかることを前もって説明しておいたが、そんなことなど関係ない。
入国ゲートを出てきた人たちが相次いでタクシーを拾い、市内に向かっていく姿にどうも焦りを感じたらしい。視線を合わさないまでも、「もう、ホントに何なんのよ。タクシーがいっぱい走り去っていくじゃない」と、不安と不満が混じった態度。
アプリを通じてつかまえた5人以上乗れる大型タクシーが到着したのは、その10分後。「タクシーを待つだけで疲れたわよ」(義母さん)という言葉には聞こえなかった振りを貫き通し、人知れず、このアプリの使い勝手に手応えと満足感を噛み締めていた。
そのときの表情を鏡で見れば、とても悪い笑顔だった気がする。(続く)
(写真〈上から順に〉:ベトナム・タンソンニャット国際空港=HowTravel、タクシー配車アプリ「Grab(グラブ)」=にっぽんのマーケター、岡部倫太郎のしたり顔=アニメ『シュタインズ・ゲート』)
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