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さらば四万十、また会う日まで
ーオレとアチキの西方漫遊記(6)
四万十川にかかる沈下橋(ちんかきょう、ちんかばし)のうち、四万十市内で最も上流にある半家(はげ)沈下橋。最後に立ち寄る予定だったこの橋を発つときには、すでに日が傾いていた。「四万十川らしい風景」(四万十市)をもっと眺めていたい気持ちに後ろ髪を引かれながらも、今回のメーン目的地である仁淀川に向かう。この後、泊まった民宿で、地場の絶品グルメを楽しめることなど知る由もなく、移動中のクルマには寂寥感もあった。
「オレとアチキの西方漫遊記」シリーズ:「オレとアチキの西方漫遊記(1)ー激走2500km」「オレとアチキの西方漫遊記(2)ー淡路SAと大観覧車」「オレとアチキの西方漫遊記(3)ー四万十川と仁淀川」「オレとアチキの西方漫遊記(4)ー旅行スタイルと下ネタ発言」「オレとアチキの西方漫遊記(5)ー見える風景と見えない力」
一体感
「一番高いところ(上流)にあるから」ー。これが奥さんが沈下橋巡りに半家沈下橋を選んだ理由だ。バカは高いところが好きというが、その類のチョイスなのだろうか。ただ結果として、この橋も"この橋ならではの魅力"があり、奥さんの選択は誤りなかったと言える。
これまで見てきた佐田、勝間、岩間の沈下橋と違い、橋が急流にかかっており、所々に白い水しぶきが立っている。瀬音も聞こえ、上流にいることをあらためて感じさせてくれる。観光客がまったくおらず、目を閉じて耳を澄ませば、自然と一体になったように感じられるところが良い。
この橋は、四万十市の清流を駆け抜ける毎年10月の恒例イベント「四万十川ウルトラマラソン」のコースに含まれるなどで、そこそこの知名度がある。トリップアドバイザーでも上位に入る観光スポットだ。それを踏まえると、このとき観光客がいなかったのは時期・時間に恵まれただけだろう。
焦燥感
日差しが大分和らいできたことに気付き、四万十川に別れを告げ、仁淀川に向かうことにする。「水質日本一」「仁淀ブルー」という言葉に当てられ、メーンの目的地を四万十川から仁淀川に急きょ変更するよう促した奥さんでさえ、どこか名残惜しそうだった。
クルマを加速させながら、またいつか来ようと声をかけると、奥さんは気持ちを切り換えたようだ。「さあ、上げ膳据え膳の一泊二食付きのお宿が待っている」と笑顔。その後、しばらくして寝息が聞こえてきた。日が暮れていく中、宿と約束した夕飯の時間に間に合うか焦るのはドライバーばかり。(続く)
(写真〈上から順に〉:半家沈下橋=りす、水しぶきが立つ四万十川上流=りす、仁淀川に向かう途中の暮れていく空=奥さん)
「オレとアチキの西方漫遊記」シリーズ:
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