先生#4(小話)
体育祭の話
部活動対抗リレーは、体育祭の目玉の一つだと思う。
柔道部は畳や顧問の先生を担いで走ったり、球技系の部活はバトン代わりにボールを使ったり。
でも、バスケ部が次の走者にバスケットボールを投げてパスしてたのはちょっとアウトだと思う。
私たち美術部は地味だけど、黒色の絵の具チューブをバトンにして、水張りした板に絵を描きながら走った。
前走者から受け取った絵の具を手に出して、そのまま板に塗りながら走る。
ゴール地点で各走者の板を合わせると、一つの絵になる仕掛けで、まぁまぁ盛り上がったし、自分たちも楽しかった。
その後、先生に絵を見せに行って、絵の具まみれの手を見せた。
先生は「俺につける気じゃなかろうな」と顔をしかめて、手を引っ込めた。
そういうのさえ嬉しいので、かなり重症だったと思う。
クラスマッチの話
運動はあまり得意じゃないから、クラスマッチはあまり好きじゃない。
戦力外の私は応援するばかりだったけど、クラスメイトは優秀な子たちが多くて、順調に勝ち進んでいった。
優勝したら先生の奢りで焼肉!
と、みんなは盛り上がってたけど、準優勝に終わり。
先生はご褒美に、クラス全員にシュークリームを買ってきてくれた。
なぜにシュークリーム? 先生の好物?
と、妄想が膨らむ。
教卓で、もくもくシュークリームを食べている先生は可愛かった。
私はシュークリームが好きになった。
もとから好きだったけど、もっと好きになった。
感染性胃腸炎の話
授業中、突然の腹痛に襲われた。
少しくらいの痛みなら我慢するけど、我慢できないくらい痛い。
教科担の先生に話して保健室に行った。
少し休んだら我慢できるくらいの痛さになったので、その後は授業に戻った。
翌日。やっぱりお腹の調子が悪い。
どうしても痛いので、学校を休んで病院に行くことにした。
ああ、私の無遅刻無欠席の記録が途絶える。
病院の診察台に寝かされて、お医者さんにお腹の音を聴かれたり、触診をされた。
感染性胃腸炎だった。
別名:おなか風邪ですね。風邪ウイルスがそのままお腹に入って炎症を起こしちゃう。しばらくは安静にして、お腹に優しいものを食べてね。
優しく説明してくれるお医者さんが「感染性胃腸炎は出席停止になるので欠席にはならない」と教えてくれた。朗報だ!
その日は1日ゆっくり休み。
翌日は元気に登校した。
真っ先に職員室へ向かう。私の無遅刻無欠席が守られたことを、先生に早く伝えなくては。
先生のところに行くと「お、もう大丈夫なのか?」と聞かれた。
「はい! 感染性胃腸炎でした! だから出席停止になるので、欠席にはならないです!」
私が嬉々として答えると、先生は回転椅子に座ったままズザーーッと遠ざかっていった。
「えっ?」
「えっ? じゃない! 学校来ちゃ駄目だろ!」
えーーっ、お医者さんそんなこと全然教えてくれなかったけどーー。
先生に距離を取られたまま、保健室に連行された。
「まだ教室に行く前でよかったよ」と、ばい菌扱いである。
保健室で体温を測ろうとすると、先生はさり気なく席を外してくれた。
親に迎えの連絡をする。
先生は「電話しか使うなよ」と念を押して、パスコードのせいで電話すら架けられないiPhoneを貸してくれた。(私がAndroidユーザーだったので、iPhoneのロック状態から電話を架ける方法がわからなかっただけ)