「良いものをあげよう」
若者が集まってお酒を飲めば必然的に恋バナが始まるもので。
後輩の女の子が自分の恋愛観について話しているのを、話せるものを持ち合わせていないわたしは黙って聞いていた。
後輩ちゃんは、恋人から『そうなんだぁ~』しか返信できないようなLINEが来るのが嫌だと、割りとうんざりした感じで話していた。
今日なに食べたとか、なにしたとか、どこ行ったとか。
わたしはわたしでやりたいことをやっているから、別に報告は必要ない、ということらしい。
わたしはそんな話を聞きながら、けっこう衝撃を受けていた。
わたしだったら、恋人のそういうどうでもいい話ほど聞きたい。
そりゃ好きでも嫌いでもない人なら、分からなくもないけど、好きな人のことだよ?
知りたいよ、どうでもいいことほど。
なんて思いながら、この場でこれを言っても話を折っちゃうかなぁと思って結局言えなかった。
(という話を、この前Twitterのスペースでだらだらと話した)
で。
今日、後輩ちゃんとお昼ごはんを食べていて、話の流れは忘れたけど、わたしと後輩ちゃんの意見が合わなくて、後輩ちゃんに「いやぁ、人それぞれですねぇ」と言われた。
わたしたちは割りと意見が合わなくて、今まで何度か『人それぞれですね』の結論に至っていた。
それがなんだかすごく面白くなってしまって、「そういえば前から思ってたんだけど……」と、『そうなんだぁ~』の件で思っていたことを話してみた。
「わたしはどうでもいい話ほど聞きたいけど……」
と話し始めると、後輩ちゃん、めちゃめちゃ笑い出す。
そんな笑う?
もしかして、わたし馬鹿にされてる感じの笑い?
と思いつつ、笑ってる後輩ちゃんがとても可愛かったので、割りとどうでもよかった。
それで、やっぱり結局は「人それぞれですねぇ」になったんだけど、話していて本当に、後輩ちゃんが可愛いなぁ、の気持ちになって。
気がついたら「良いものをあげよう」と言って、別の人に渡そうと思っていたシャーベット(ちょっといいヤツ)をあげていた。
シャーベット(ちょっといいヤツ)というのは、30日間常温保存できて、食べる前に凍らせたらOKという……なんかお洒落な雰囲気のシャーベットで、先日誕生日をお祝いしてくれた上司に渡そうと思っていたお土産だった。
後輩ちゃんが可愛すぎて思わずあげちゃったけど、あとからちょっとだけ考えなしだったかな、と反省した。
いいや、上司にはなにか別にお酒でも贈ろう、なんて考える。
お土産はよく選ぶけど、大抵は義務感から渡すことが多いので、義務感とか見返りを求める気持ちなしに、誰かに「良いものをあげよう」という気持ちが新鮮だった。
それが嬉しかっただけの話。
たぶん今後も、わたしと後輩ちゃんは気が合わないんだろうなぁと思いつつ、話すのはめっちゃ楽しいなと思う。
わたしが、眼鏡かけてる人が好きって話したら、「へぇ~」ってすごいどうでもよさそうに相槌を打ってくれた。