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Photo by
azusa
花束
春風の半濁音のひと息で散ってしまえる花になりたい
しゃっくりが止まらないって笑うたび膨らんでゆく桜のつぼみ
ドクダミの真白き花に美しい嘘を摘み取るように触れたり
紫陽花を一輪摘んできたようなあなたの閉じた折りたたみ傘
弱酸性の肌に触れれば紫陽花が雨粒弾くように微笑む
虫除けのマリーゴールド揺れるたび母の眼差しやわらかくなる
一晩で紅潮しては萎みゆく月見草は少女の瞬き
開いたらもう戻せないひまわりの折り紙のなか秘めたる想い
根本から綺麗に抜いた雑草の名も知らぬまま愛でるサルビア
手のひらを空にかざしてゐるやうな黄色き彼岸花眺めゐる
「またね」って手を振るきみと目は合わず線路の脇で揺れる秋桜
ネモフィラの青は許しの色 きみを枯らさぬように手入れをするよ
わたしより怒ってくれるきみの目にチューリップがゆっくり開く
白い薔薇をもらった日から白という白がわたしの薔薇色だった
約束がだんだん溶けてゆく日々に寄り添う花が君だと思う
2022年12月