1/5「バーテンダーは"3人目"。"いつもの人"とこそバーに行こう」

バーにいくと何故か話しやすい。”いつもの人”と話すとき、自然とそれを感じていて、それがなぜなのか、あまりよくわかっていなかった。

不思議といつもしなかったような話題へ展開する。正直、親しいからこそ聞けなかったアレコレについて「ぶっちゃけさ…」と話題に切り込むことができる。最初はなんだかぎこちなかった2人だが、不思議といつも以上に話が弾む。

これはよく恋愛どうこう、デートどうこうの領域で語られることだけど、飲食店などでは対面で座るより、横並びのほうが親しさを感じやすいという心理がある。肌感覚的にもよく実感する。

それを踏まえてもなお、妙に話しやすい環境がバーにはある。バーがなぜいつも以上に話がしやすいのかについて、わたしなりの仮説がある。

それにはバーテンダーの存在が関係している。もっと言うと、”3人目”の登場によって、人間関係というのはかなり安定する。あらゆるケースを見ていてもソレがわかる。

なんかそのうち別れそうな不穏なカップルというのは、2人だけの世界に引きこもる習性がある。2人でいることを大切にしながら、第三者を歓迎するスタンスのカップルは周りから応援されたり、よく思われるように感じる。そんなことがあなたも思い当たるのではないだろうか。

「2人であることを大切にする」という前提を保ちながら、”3人目”を歓迎すると、2人は長すぎる時間で対面しなくなる。よって対立しなくなる。互いの目線を外し、視線の方向ががそろう瞬間が増える。そうして時間を快適に過ごすことが出来る。バーというのは概ね、カウンターで横並びに座る。

バーテンダーの存在だけでなく、バックバーに並ぶ酒類たちもそれにあたるのかもしれない。共通の趣味を持った2人が、趣味そのものを”3人目”として迎えいれるから2人は安定する。

なにもないまま、2人きりでいるのはどんな人とでも実はなかなかに難しい。コミュ力によって維持される期間は長くなるとはいえ、2人きりというのはいつでも重い。だから「ぶっちゃけさ」と切り込んでハレーションを起こすリスクをあまり取れない。

バーテンダーがなにかを言うわけでもない。ただ、その様子を見て、こっそり聞いているだけかもしれない。それだけでも効果があるんじゃないかと感じる。

「子どもを持つ」というのも、その安定構造を生み出す機会を得ていると感じる。家族は3人以上からより一層安定する。イチローも大谷翔平も犬を飼っていた。

だから”いつもの人”とこそ、バーに行くべきだとわたしは考える。バーでなくとも”3人目”を歓迎するような2人の関係性を、友人にしろ、恋人にしろ、夫婦にしろ、親子にしろ、もつべきだとわたしは考える。そのほうが長期的に関係性を培うことができる。

店に立ったり、店に伺ったりなどして、そんなことを学ぶ機会がよくある。人は人と縁を紡ぎ、徐々に広がりを見せていくのだなぁ、感じているのだ。その豊かな広がりを「運が良い」と呼ぶのだろうと。


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