【WHILL Model R 開発物語】メカ設計エンジニア中川 - 緻密な計算と試行錯誤の繰り返しが、最高の乗り心地を創る -
言うは易し。
ものづくり全てに言えることですが、Model Rを通じて私たちが感じるその魅力や心地よさは、WHILL社が長年にわたって日々積み重ねてきた技術力や緻密な計算、試行錯誤の結果によって支えられています。
小回りを安定させるにはどんな技術や緻密な計算が施されているのか?
乗り心地の良さを一言で伝えても、それはどれほどの技術のエッセンスが組み合わさって現実のものとして達成されているのか?
本記事では、Model Rを「行き届いた機能が心地いい、スマートになった歩道のスクーター」と言わしめる核について、このプロダクトの開発・設計全体を統括したメカエンジニアの中川に聞いています。
中川 智之(なかがわ さとし) プロフィール
「タイヤをただ横に向けるだけでは360度の小回り旋回は実現できない」
Model Rの代表的な特徴といえば、スクーターながら業界最小クラスの小回り旋回。
素人目に見ると、前輪が90度に曲がり、後輪が独立して交互に回転することで一回転できていると感じるのですが、実際はそんな簡単な話ではないらしく。
ジオメトリーの詳細はここではあまり触れませんが、簡単にいうと、タイヤと車体との位置関係を表す設計要素のこと。例えば、タイヤの向きや角度、サスペンションの取り付け位置などが含まれるそうで、車体の加減速、コーナリング、乗り心地などに大きな影響を与えるとされます。※以下記事参照
前輪に着目。
小回りを実現するためのレイアウトや動きをします。これがジオメトリーのいち要素となります。
サスペンションのかたさも、スタビライザーの存在も乗り心地を担保するのに不可欠
Model Rには「快適さ」を支える技術も多分に詰まっています。
しかし、すべてをいちから説明すると永遠に語れそうな雰囲気が中川に漂っていたので、本記事では2つに絞って深掘りを進めていきます。サスペンションとリアスタビライザーに主役を譲りましょう。
まずは、サスペンションそのものについて。
素人の立場として、サスペンションがしっかり伸び縮みすれば(効いていれば)路面のさまざまな衝撃を吸収してくれると理解していました。
中川に、ちょっと難しい表情をされました。
この絶妙な弾性を有するサスペンションの配置方法についても、乗り心地を決めるのに大事らしいのです。
さらに、サスペンションだけがいかなる路面状況でも快適な乗り心地や安定性をもたらしているのではないといいます。
縁の下の力持ちとして、重要な力を発揮するのがスタビライザーだと、中川は語気を強めます。
スタビライザーとは、斜面や凸凹路の走行時やコーナリング時など重心が不安定になりやすい環境において車体のローリング(傾き)を防ぐため、サスペンションに追加される部品。
スタビライザーの働きはこう。
自動車と同じ技術や部品を近距離モビリティにも取り入れていることがよく理解できました。「乗っていて楽しい」「運転しているのと同じような感覚」と、多くの乗り手がウィルに満足する要素ではないでしょうか。
Model C2同様の工具なし分解機構もユーザーフレンドリーだが「成立させるのは実は難しい」
Model Rは頻繁に分解するシーンはもしかしたら少ないかもしれません。しかし、いざという時に分解して運べる、車載できるという機能は私たち消費者にとっては安心できるポイント。
エンジニアらがこだわり続けているのが、Model C2もそうだが、誰でも工具なしで簡単に分解ができるような機構にしている点。
例えば、後輪と前輪を分割するときはレバーを動かすだけの仕組みにしていますが、ここでもさまざまな検証がなされています。
また、どこを持てば、重たい車体を少しでも安定安心に、かつ楽に持ち上げられるかなども中川らは考え抜いたといいます。
細部にまでいろんな検討と検証、試作がなされ、Model Rが形作られている。そのプロセスが、彼の一つ一つのエピソードから伝わってきます。
終わりに
きめ細かで「あったらいいな」に応える技術が詰まった逸品として市場投入されたModel R。
”行き届いた機能が、心地いい”
このキーコピーには、開発者らのたゆまぬ努力と幾重にも及ぶ試行錯誤が、深くかつどっしりとした土台にあると感じさせられます。いわば私たちが実際に心地よく感じるModel Rの魅力は氷山の一角にすぎないのかもしれません。
開発者の思いや背景ストーリーを実際に知った後、もう一度ウィルに触れてみると、これまでとまた違う感覚を抱きます。
もっと愛着が湧く。熱を帯びる。
作り手の熱量のパワーは、技術云々をはるかに超え、人々を魅了するもの。
本記事がわずかでもその一助となり、Model Rを手元に迎える人や場所が増えたらと期待します。
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最後に、中川にModel Rの次なるストーリーを紡いでくれる推薦者を訪ねました。次回は乗り手の体重と姿勢を支えるシート部分に心血を注いだ人物に焦点を当てましょう。