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【WHILL Model R 開発物語】メカ設計エンジニア山﨑 -アイコニックなフロントランプ、秘密はライトの組み合わせとカット細工-

スマートになった歩道のスクーター WHILL Model Rは、行き届いた機能が心地よい製品として、市場に投入されました。

ものづくり全てに言えることですが、Model Rを通じて私たちが感じるその魅力や心地よさは、WHILL社が長年蓄積してきた技術力や緻密な計算と検証、試行錯誤による工夫の結果によって成立しています。

話を聞いた山﨑は、Model Rの中でもお客様の身体や日常利用に密接に関わるシートとライト部分をメインで担当。

エピソードは豊富にありますが、今回は背もたれメッシュ生地やシート回転レバーの秘密、Model Rのアイコンでもあるフロントライトへのこだわり、メインバスケットの取り付け機構開発の裏側に厳選しました。


山﨑 正敦(やまざき まさのぶ) プロフィール

東京コミュニケーションアート専門学校で自動車のデザインとモデリングを学んだ後、新製品開発支援会社に就職。いわゆる「コンセプトモック」や「プロトタイプ」と呼ばれるような試作品の製作に従事した。関わった製品はスマホ、家電、自動車など多数。担当領域はデジタルモデリングからメカ設計、ハンドワークまで広範囲にわたる。WHILL製品に一目ぼれし、2023年にメカエンジニアとして入社。最初に手掛けたMode Rでは、シート、前後ライト、メインバスケットの設計を担当した。

WHILL初の特殊メッシュ素材で、背中でも感じる心地よさ

WHILL社は初めて、Model Rのシート背面にメッシュ素材を採用しました。

Model Rでも大事にされている「心地よさ」。
背もたれ1枚とっても、とことんこだわります。

見た目の軽快感と実際の座り心地の良さをどのように両立させるか?山﨑に提示されたお題でした。

着想は、オフィス用チェアでした。ご存知の通り、オフィス用チェアは背面がメッシュ生地になっていますが、メリットは主に2つ。

一つは、座る方の体型や姿勢に合わせてメッシュが伸縮し、体圧が分散されるため、背中に自然とフィットすること。もう一つは、通気性を良くして接触面に熱がこもりにくいこと。

夏でも涼しく、そして長く運転しても疲れにくい。

Model Rではハンドル角度の調整や足の置き場などはもちろん、背中のシート面からも心地よいドライビング体感を支えているのです。

メッシュ素材も、市販されているものをいくつも研究しながらModel Rに最適なタイプを選びました。
適度な弾性を持ち、耐火性・耐久性にも優れているのもModel Rに採用したメッシュ素材の特徴の一つです。

頻繁に使わない、痒いところに手が届く「機能」の使い勝手も抜かりなく

Model Rは何かあった時に車載などして持ち運べるよう、プレミアムモデルのModel C2同様、分解・組み立て機構を取り入れました。

Model Rを分解した様子

もちろんこれもWHILL社内で受け継がれてきた技術で、工具やツールなしに誰でも簡単に分解できるように設計されています。

ツールや工具なしに分解・組み立てられるということは、接合するための部品もありません

それぞれの接合部分がパズルのようにカチッと(?)シンデレラフィットするようにmm単位(もしかしたら1/100、1/1000単位かも)で計算されていると山﨑はいいます。

シート部分ももちろん取り外せます。

シート下部の穴とパイプのサイズがゆるすぎず、硬すぎず、絶妙な力加減でスッと入る数値を幾度も計算して導き出しました。そして、組み立てた時はガタガタさせないようになっています。

サプライヤーさん側ともコミュニケーションを取りながら、最適なサイズに調整していったのも大変でしたが、実際にこうして形にできたのは嬉しかったです。

実は、Model Rのシートはくるりと回転させることもできます。
前から座ることもできますが、乗り降りしやすいように90度回転させて横から座ることもできるようになっています。

その際、使うのがシート下にあるレバー。

シート面からレバーまで指が届き、片手の軽い力で握る(引く)だけでシートが回転するようにしました。でもこの実現は非常に難しく・・・。

レバーの握り込み幅は、指が届くよう浅めに設計していますが、実は浅いと強度との両立が難しいのが通例です。企業秘密ですが、試行錯誤と検証を重ねて形に落とし込むことに成功させました。

フロントランプはModel Rのキーアイコン。いかに恰好よく照らすか

四角く、エッジの効いた大きめのModel Rのフロントランプ。やや暗い道も明るく照らす役割はもちろんですが、その象徴的なデザインはModel Rを代表するキーアイコンでもあります。

動画の冒頭でも、フィーチャーされています。とにかく恰好いい。

ちなみに筆者のおすすめはランプから照射された光が床や壁に映っているさま。洗練された一本の光の筋が、本当に恰好良いのです。車のフロントランプも彷彿とさせます。

山﨑はランプはもちろん、どう恰好よく照らすか、までの設計も手がけました。

Model Rのフロントランプは、大きなパイプフレームの先にデザインされたキーアイコンです。デザイナーから上がってきたイメージをしっかり恰好よく実現させたいと考えていました。

フロントランプはLEDライト3つで構成されています。

まずは、メインのプロジェクターランプ。車にも搭載されていますが、光をレンズで集めて狙った範囲に照射する役割を持ちます。つまり、前を照らすランプです。

少し見づらいですが、真ん中の丸いランプがそれです。

ランプのカバーは磨りガラスのようになっており、光を少し柔らかくし、眩しさを軽減する狙いがあります。

次に左右にあるのが2つの小さなランプ。
自動車でいうポジションランプ(スモールランプ)です。

周囲に光を散らしている(拡散させる)ことでより広範に照射できるようになっています。

山﨑曰く、カットにも工夫が施されているとのこと。神は細部に宿る…。

どういうカットを入れたら綺麗に光が散るか、はすごく考えました。
前方から見ても横から見ても後ろから見ても、乗り手であるドライバーから見ても。

Model Rのフロントランプをこれから点灯させる際は、ぜひランプそのものだけでなく、照射先の明るい光加減にも着目するべし。

終わりに

カタログやHPでは載せきれない開発プロセスのあれこれ。

シートは乗り手の背中に直接触れ、フロントランプは車と同じ構造を採用したModel Rの目立つキーアイコン。

これらの開発の背景には、何度も何度もトライアンドエラーを繰り返して最適解を見出したエンジニアらの見えない努力の結晶がある。

ウィルに限らず、この世に存在するすべてのモノに当てはまること。そんな思いを巡らせながら、WHILL社のプロダクトの奥深い魅力までを知ってもらえる一助に、Model Rを手元に迎える人や場所が増えたらいいなと期待します。

YouTube動画

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