【特集】フットボーラーと歯科医の二刀流!?エディ・サイモン
ひょんなことから、Walton & Hersham FC (ウォルトン・アンド・ハーシャムFC) という縁もゆかりもないクラブを応援するようになった日本人です。
クラブの最新情報や試合結果、その他ノンリーグの情報などを発信していきます。
今回は、2023年4月29日にイギリスの新聞Daily MailのOnline版に掲載されていたエディ・サイモンの記事を紹介します。
まあまあ長いですが、彼の人生やノンリーグの選手の様子がわかるので、ぜひ読んでみてください。
なお、昨シーズンのプレーオフ決勝直前の記事です。それを踏まえてどうぞ。
ゴールを量産するノンリーグの歯科医を紹介しよう!ウォルトン・アンド・ハーシャムのストライカー、エディ・サイモンは、今シーズンイングランド記録となる4連続ハットトリックを達成し、マンチェスター・シティのアーリング・ハーランドに例えられている。
「エディ、エディ、エディ」という声がスタジアム中に響き渡った。
エミレーツ・スタジアムでアーセナルのサポーターが、エディ・エンケティアにセレナーデを贈ったのではない。そこはノンリーグのサッチャム・タウンのスタカトラック・スタジアムという、はるかに質素な環境だった。
今シーズン、イングランド記録となるリーグ戦4試合連続ハットトリックを達成するなど目覚ましい活躍を見せ、3年連続3度目の昇格を目指すウォルトン・アンド・ハーシャムを鼓舞する「幸運を呼ぶストライカー」エディ・サイモンへの愛情を、旅慣れたウォルトン・アンド・ハーシャム・ファンが表現したのだ。
かつてブレントフォードの育成センターに所属していたこの26歳は、パートタイムのストライカーかつフルタイムの歯科医であり、患者と同じようにウォルトンも笑顔にしてきた。そしてサイモンは、昨シーズンの半ばにこのサリー州のクラブに加入したときには想像もできなかったほど、その名を広めている。
彼の急成長している要因として、2019年に19歳の大学生グループによって買収されたときおそらくイングランドフットボール界で最も若いオーナーとなり、人気のTik Tokアカウントと世界中にファンベースを持つ先進的なクラブでプレーしていることも大きい。
ウォルトンは海外のファン向けに試合をストリーミング配信しており、サッチャムで行われた最終節のタイトル決定戦は、世界中から一時1200人に達するほどの視聴者が観戦した。
サイモンはまた、ウォルトンのスコット・ハリス監督とアシスタントのビリー・ロウリーが、マンチェスター・シティのペップ・グアルディオラを彷彿とさせるようなチャンスを量産するアプローチを推進していることにも助けられている。
しかしウォルトンのシーズンにおける最も重要な要素は、サイモンの存在により、よく鍛え抜かれたウォルトンにとって文字通り「歯が立たない」相手などいないことが明らかであることだ。
「僕はただ正しいポジションを取っているだけさ。そしたらみんながチャンスを作ってくれるんだ」
彼は、今シーズンの成績はチームメイトやコーチのおかげだと控えめに語った。
グアルディオラのスタイルがウォルトンのスタイルにインスピレーションを与える一方で、サイモンは負傷のために開幕が遅れたにもかかわらず全コンペティションで43ゴールを挙げたため、ソーシャルメディア上でノンリーグ版アーリング・ハーランドと呼ばれるようになったのもうなずける。
3月には、イングランドの8部までのリーグで史上初となる4試合連続ハットトリックを達成し、最もホットなストライカーの一人としてハーランドに勝るとも劣らない活躍を見せた。
また、イースターマンデーのマースタム戦では5ゴールを挙げ、14試合出場でリーグ戦27ゴールという驚異的な数字を叩き出した。
サイモンはこう続ける。「友人たちが笑ってたんだけど、僕はある友人の結婚式の新郎付添人のためにアメリカ行きの飛行機を予約したんだ。でもその日はプレーオフの決勝あたりじゃないかって話になってさ。結婚式とプレーオフの日にちが重なるかもしれないとわかってすぐに、僕のゴールラッシュが始まったんだ。彼らは、僕が飛行機に乗れるように、ゴールを量産しているんだと言っていたよ」
(編集注:ゴールを量産してクラブをリーグ優勝に導くとプレーオフに出場しなくて済むため「アメリカに行きたいがために点を取っている」という意味のジョークだと思われる。)
今シーズン、サイモンへの注目度が高まったのは必然で、対戦相手もボックス内でのサイモンの動きを警戒するようになった。全国放送のテレビ番組に出演したことも、サイモンの知名度を上げる一因となった。特に職場の同僚たちの間でだ。
「僕がどれだけサッカーに打ち込んでいるか、彼ら(仕事仲間)は本当に知らなかったと思う」とサイモンは付け加えた。「いつも仕事が終わったらトレーニングに行くと言っていただけなんだけど、あの日職場に行って『テレビカメラが入る』って言ったら、みんなびっくりしていたよ。今はみんな応援してくれている。最高だよ」
サイモンは10代半ばでブレントフォードを去り、サッカーよりも保証された職業に就くことを決めた後、歯科医になることに専念し始めた。
彼は歯科医の家庭生まれで、叔父のうち2人はハウンズローを拠点とする診療所を経営しており、いとこの1人とともに現在働いている。
大学進学のためにリバプールへ移ったサイモンは、卒業後にイギリス南部へ戻ると再びサッカーにのめり込んだ。ここ数年はさらに精進を重ね、その甲斐あってノンリーグのピラミッドを上り、ウォルトンにたどり着いた。
ウォルトンは、ナショナルリーグサウスまであと2カテゴリーのところまで来ており、日曜日のイスミアンサウスセントラルのプレーオフ決勝で、その1歩目を踏み出したいところだ。
サイモンは、歯を抜くような処置の方が、試合の土壇場でPKを蹴るよりも神経をすり減らさないと思っているかもしれないが、彼のゴール記録を思い返してみると、ウォルトンが他クラブから彼に興味を持たれる事態に備えているのは当然だ。
しかし、彼はこう話す。「今のところウォルトンでの生活は気に入っている。2年前の自分のフットボールに対する精神的な状態を振り返ると、今の自分とはほど遠いものだったよ」
「『ネクスト・ジェイミー・ヴァーディーになる可能性がある』ってみんなに言われ続けている。彼のようになりたいという思いがすべてのフットボーラーの夢の原動力となっているのだと思う。遅かれ早かれ何かが起こる可能性はあるけど、いちばん大事なのはこの場所、この瞬間だ」
「フットボールでは何が起こるかわからないし、なんでも起こりうる。僕はできる限り最高のパフォーマンスをし続けるだけさ」
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