次にWHEREが舵を切るのは「ローカル×教育」。意義とビジネスチャンスとは?
日本全国の地域と伴走しながら「地域づくり」を行なってきた、文化創造カンパニーの株式会社WHERE。
実はWHEREの創業は、『IWAI OMOTESANDO』を中心に結婚式を手がけている株式会社CRAZYの新規事業から。別会社となった現在も、WHEREの成長を見守り続けるCRAZY代表の森山和彦氏と、WHERE代表の平林和樹が「今後WHEREが挑戦するローカル×教育事業」についてビジネス観点で赤裸々対談を行いました。
WHEREを通して地域と関わりたいと思っているアナタへ、経営者視点でこれからの事業戦略とその勝ち筋をお伝えします。
創業7年でWHEREが変えてきたものは「地域ビジネスに対する印象」
平林:これまでWHEREは「地域づくり」にアプローチしてきましたが、これから第二創業のフェーズに入るタイミングで「地域で活躍する "人材" をどう増やしていくか?」という問いにアプローチしたいと思っています。
平林:具体的にお伝えすると、リスキリング・リカレント教育に「ローカル」を組み合わせた『ローカルアカデミー』を開講したいんです。
『ローカルアカデミー』は、今までローカルに挑戦しようと思いながらも一歩踏み出せなかった人たちや、既に地域おこし協力隊のような形で活動している人たちに対して、WHEREが今まで培ってきたローカルでの事業づくりや、起業家のネットワークを活かした学びを提供していく事業。
森山氏:なるほど。WHEREがローカルに関わり続けてきた中で、ぽぽ(平林の愛称)が得た「発見」や「気づき」をもう少し教えてほしいな。
平林:WHEREを創業して8年目に入りました。これまでの7年を振り返ると、僕らは「地域でのビジネス」や「社会課題を中心にしたビジネス」のイメージを変える一役になれたと思っていて。
創業当時は、都心や大手企業で働いてた人たちがローカルに行くと「都落ち」や「リタイアしてスローライフか」のイメージが根強くありました。
それに対して、『LOCAL LETTER』での発信や、自治体と組んで「観光客以上・移住者未満」と呼ばれる関係人口づくりを実施する中で「ローカルは、自分のキャリアやスキルを活かし、自分が影響力を持って物事を進めるフィールドとしてとても面白い」みたいな空気が徐々に出来上がってきたなと。
森山氏:当時の地域ビジネスは、衰退産業で人も減っていく。経済的に旨味がないという捉え方をされていた部分に、「ビジネスとしても面白いんじゃないか?」という事例が少しずつ出てきて、その事例を『LOCAL LETTER』が伝えることで「ローカルにも可能性があるのかも」という状態が生まれてきたんだね。
WHEREが次に取り組むのは「教育事業」。これまでの活動と市場に裏付けされた「勝ち筋」とは
平林:これまでのWHEREの活動で見えてきた先に、今回の『ローカルアカデミー』事業があると思っています。今、世の中では、第一陣としてローカルに可能性を見出し活動してきた人たちの会社が、数億・数十億の資金調達する事例や、社員も30人〜100人規模の事例をつくってきているんです。
そういった企業の代表がみんな口を揃えて話す課題が「人材不足」。ひと昔前の課題は「起業家が足りない」でした。もちろん起業家も引き続き必要ですが、今の時代に合ったやり方でビジネスを起こしている会社に入るという選択も出てきてるなと。
平林:一方で都心の大企業にいた人が、そのままローカルベンチャーに馴染めるかというと、文化やビジネス構造の違い・GAPが大きいとも思っています。だからこそ、まずは①ローカルでのビジネスのやり方を学び、②企業との接点を持って、③お互いを徐々に知るというステップを踏んだ上で、キャリアチェンジ・キャリアアップしていく流れがつくれたらと。
森山氏:ローカルにはビジネスを起こせる余白や、国としてのバックアップもあって、いくつかの事例も出てきているよね。その中で、WHEREがフォーカスするとしたらやっぱり「人」という側面から、教育や採用・就労支援を目指したアカデミー事業にチャンスを感じていて、第二創業のフェーズになった今、挑戦したいんだね。
平林:はい。おっしゃる通りです。
森山氏:確かにチャンスがありそうだね。僕自身、ぽぽの話を聞きながら、いくつかの点でビジネス機会があると感じていて。
まずローカルでビジネスを起こすことには、それなりの葛藤や難しさがある。やっぱり東京で起業するのとは違うから、僕が今「ローカルで起業しろ」と言われてもノウハウがないから無理だと思うんだよね。
でもWHEREにはノウハウがあって、ローカルならではの戦い方をこの7年間で経験していると思う。実際に成功事例も出てきていて、そこのネットワークもかなり強いから、ポジショニングがいいなと感じるんだよね。
森山氏:あとはリスキリングもそうだけど、教育のデジタル化は今の市場的にチャンスがきている領域。インターネット系のサービスコンテンツに「このくらいのお金を払ってもいいな」という価格の認識をユーザーが持ちはじめていて、挑戦するタイミングとしてもすごくやりやすいと感じる。
加えてコンテンツだけに頼るのは難しいからコミュニティをやると思うんだけど、そのコミュニティをやる意味も、ローカルに繋げるという点で、事業的に採算が取りやすいと思うな。
WHEREだからこそできる「コミュニティ」の価値と「マッチング」のビジネスチャンス
平林:勝ち目を本当の勝ちにするために、今採用募集をしているメンバーは大きな役割を担うと思っています。新メンバーには、どんな人が必要だと森さん(森山氏の愛称)は思われますか?
森山氏:「選択と集中」がすごく大事で、事業機会を掘る人が必要になると思う。人を集めるマーケティング、ブランディング、コミュニティの熱を高めること、教材の作り込みまで、アカデミー事業に向けて、これら全てが実行できたら理想だけど、ベンチャーのリソースで全てはできない。
だからこそ、どこを尖らせるか?を考える必要があって、そこを掘っていけるビジネスリーダーが必要だと思うね。尖らせるポイントが明確になると、正真正銘の「勝ち」になる。
平林:今ようやく「WHEREだからできているよね」という評価があることを、周りの声から理解してきています。この「WHEREだからできている」が「コミュニティづくり」で。実際、こんな小さい会社に大手不動産会社から、地域×コミュニティづくりでお仕事の相談が入ってきているんです。
逆に既存のオンライン教育事業とコンテンツ勝負をしてもあまり意味がないと思っていて。現役の起業家から学べることは大事ですが、それ以上に学びをちゃんと深めて活かせるコミュニティであることが重要だと考えています。
森山氏:「顧客の声である」が一番重要だよね。コミュニティというか、人がWHEREを支えてきてくれていて、この「人」という要素が競争力にもなると思う。
「コミュニティってお金になるのか?」という部分で僕が可能性を感じるのは、人材紹介。人材紹介は、ローカルでそう高くはないにしても、数十万単位でビジネスをつくることができるし、人材はローカルも求めている部分。
WHEREのもつネットワークを活かすという点でも、最後は人材紹介に結びつけると、今のWHEREの立ち位置としては面白そうだなと。
平林:共感です。僕らは今1年半ほどオンラインコミュニティ『LOCAL LETTER MEMBERSHIP』を運営していて、月額1,500円/人でメンバーが100名ほどいます。その中で、接触頻度が多いとキャリアチェンジが起こることがわかってきました。
とはいえ月額1,500円/人で僕らのコンテンツが成り立つのかというと、そうではない。コミュニティ自体に払うお金というよりも、学びとマッチングに対するお金だと考えています。
森山氏:ローカルの起業家がコミュニティや採用に力を入れるよりも、WHEREがハブに入る方がより良いものが提供できそうだよね。とはいえ、わざわざ大手企業が入る旨味はないとも思うから、そこに逆にビジネスチャンスがありそうだなと。
森山氏:あともう1つ大きなチャンスがあると思っていて。これから人口減少が進む中で、一極集中ではなくローカルにも都市をつくるべきという話は、近い将来本格的に出てくる可能性がある。その時改めてローカルに注目が集まると思うんだよね。
「豊かな人生を送りたい」というニーズがより顕在化してくると、地方移住をはじめ、国がローカルに戦略を持っていく動きが生まれる。地方都市に少なからずお金が流れ「プレイヤーもしくはプレイヤー予備軍を抱えているのはどこか? 」と注目が集まった時に、WHEREがそのポジションを取れていたとしたら、国からも市民からも後押しがあるかもしれない。事業投資として5年10年スパンで見ても面白そうだな、と感じるね。
客観的にみるからこそわかる、これからのWHEREに必要な人材とは?
平林:森さんは、WHERE創業当初から一緒にやってきている一方で、外からもWHEREを見守ってくださっていると思います。そんな森さんから見たときに、WHEREはどういう会社に見えていますか? そして、どんな人たちと事業をやるといいと思いますか?
森山氏:一番最初に思ったのは「情熱が続いてる会社」「豊かさに対して真摯に向き合い続けてる会社」だなってこと。
あとは仲間が多そう。SNSでも「こんな人と対談します」と積極的に発信していて、いろんな人たちと手を取り合ってやっていると感じているかな。
俺もぽぽも、誰も見ないような世界が見えていて、それを実現したいと思ってるから社長をやっている。だからその思いを力強く伝えることが大事だと思うんだよね。
森山氏:あともう1つ僕が見えてるのは、WHEREはビジネスにおいてさらに成長できる伸びしろがあること。
だからこそ、ビジネス構築や実行面をテコ入れできたら加速すると思うし、「力を持ちながらも、夢を追いかけて生きたい」みたいな熱いやつにきて欲しいよね。
「夢や情熱をどれだけ共有できてるか?」はブラしちゃいけないと僕はすごく思っていて。第二創業ならなおさら、絶対にビジネススキルに偏っちゃいけない。言葉にすると感情的な言い方なんだけど、「夢」「情熱」は大事にして欲しいな。僕は近くでも、遠くでも、WHEREを見てるけど、WHEREが本当に大好きなので。
平林:お付き合いしてる起業家の方々が最近、「ぽぽ、もっとお願いしてくれて大丈夫だよ」みたいな話をしてくださっていて。
今までは自治体や地域に一対一で向き合ってきたんですけど、それだとちょっと手が回らなくなってきたからこそ、これからの僕らは「挑戦したい」「人生を変えたい」「キャリアチェンジしたい」と思っている人たちのために全力を尽くし、地域で活躍できる人たちを増やしていきたい。それがWHEREに関わるみんなにとってのWinWinになると思っています。
森山氏:いつだって応援しているよ。