流行りのアニメ、呼吸が合う瞬間
「流行りの○○」みたいなのがあまり得意ではなかった。
ただ天邪鬼なだけな気もするし、特段理由があるわけでもないけれど。
そのおかげか、流行りのアニメとかの話についていけないことも多い。
だから、最近は何となく話についていけるようにtwitterとか見て、なんとなくトレンドの概要くらいは頭に入れるようにしている。
そんな「なんとなく」と思って頭に入れておいたアニメが「なんとなく」気になったから、ちょっと見てみようと思った。
かの有名な「けいおん!」以来のバンドブームを呼び起こそうとしている、そのアニメを劇中歌目当てで見始めた。
「青春○○」みたいなのも体質的に似合わないと思っていた節があるので、有名アーティストが手掛ける劇中歌をとりあえずの楽しみにしていた。
ただ。
見進めていくと、どうも自分の経験と重ねてしまうストーリーだった。
親から譲り受けたギター。
部屋でかき鳴らしながら、頭の中で埋まる会場。
初めて作る曲。
初めて入るライブハウス。
初めて出るライブの緊張感。
チケットのノルマに苦しんで、財布とにらめっこするライブ前。
人前に出ることに慣れて少しずつ持てるようになった自信。
周りの見る目を少し気にして、出ることにためらった文化祭。
自分の目には満員のアリーナに見えた午後の体育館。
すべてがすべて、全く同じなわけではないけれど、今まで自分が通ってきた道の一端を見せられているように気分になった。
これはきっと「バンド」に少しでも熱を注いだ者なら理解できるであろう、得も言われぬ感情だ。
少なくとも、自分にとってはそう感じることができた。
今振り返ると、学生時代は世間一般にいう青春を達成できなかったという思いがある。
文化祭のライブ、一つ前のバンドみたいな歓声が欲しかった。
卒業ライブ、自分のやりたいあのバンドのあの曲を弾きたかった。
叶えたかった、欲しかった、失いたくなかったものは少なくない。
でも、アニメの主人公達に重ね合わせてみれば、
意外と良いことも、楽しかったことも、唯一無二の経験も、沢山得ていたことを改めて気づかされた。
「十分すぎるくらいに、青春できていた」ことも。
始めた頃の一瞬一瞬の感動だったり、忘れられない感情だったり、いつまでも心のどこかには持ちながらギターを弾いていたいと思った。
ぼっちちゃんみたいなギターヒーローにはまだなれないけど、誰かと「呼吸が合う、あの瞬間」をいつまでも感じていたいと思った。
そんなこんなで、一晩で一気見ってやつをした。
特にチープな言葉で感想にしなくとも十分なくらい、すっきりとした満足感があった。
週末には、久しぶりにいつもの仲間とライブができる。
年末なこともあってなかなか客足は乏しいから、
きっとうちらもノルマに悩むことだろう。
でも、きっと何よりも「呼吸が合う、あの瞬間」を感じたいから、バンドというものを続けているんだと思う。
流行りのアニメを見るのも、案外悪くないじゃん。
あいつらにもこの話してみようかな。