その3:サンクコストの意識を持つ
今でも司法試験に合格すべきなのではないかと悩むことがある。
もう正直、弁護士になるつもりはない。
なぜなら私が学生時代に弁護士を目指した理由は、どこの企業からも新卒採用されないという恐怖があったから。
その後、障害者雇用ではあるが、東証一部上場企業と外資系企業に採用され、実際に勤務をして職務経歴書にかけるぐらいの実績を出した。
そして今は正規雇用である。
私は司法試験に合格をして、箔をつけなくても組織で働くことができる以上、もう司法試験合格のための勉強をする必要もなくなったし、弁護士になる必要もなくなった。
しかし奨学金を貰っていたとはいえ、親のスネをかじって司法試験の勉強をしていたわけだし、迷惑もかけたから、司法試験の合格証を親に見せれば喜ぶのではないか。
そういうことが頭によぎることがある。
そういう時は、サンクコストの概念を思い出すことにしている。
サンクコスト(埋没利益)とは、将来的に回収できる見込みのないコストのことである。
司法試験合格に費やした時間や、親に出してもらった資金はもう取り返すことができない。
たとえ合格しても。
仮にもし、合格を目指す場合、教材を購入したりする必要がある。
つまり費用は取り返すことができないばかりか、さらにコストが増えていくのである。
人間は、これまで費やした時間やお金がもったいないと思ってしまうが、これはバイアスであり、経済的観点からすれば正しくない。
私に限らず、もったいないと思ってズルズル続けてしまうという経験は、皆さんもあるのでないか。
「費やした労力、金銭はもう取り返せない。」ということをリマインドする必要があるのだと思う。
日本では「石の上にも三年」という言葉があるように、ガマンをして継続することを美徳と考えるところがある。
ただこの言葉はテクノロジーが進化し、Chat GPTが世界中の知識を猛烈な速さで学習している時代にも適切なのかは考慮に値するのではないか。
リスクヘッジを考え、時が来たのであれば潔く撤退をする。
インパール作戦のようなことをして玉砕をすれば元も子もなくなってしまう。