負け確の質問

この質問、国会等でもよく見るが、非常に答えづらい問題ではないかと思う。
現代の価値観で過去の行動を道義的に攻める質問である。
法的にではなく道義的に攻める点がポイントだ。

愛煙家のおじいさんに「電車の中でタバコを吸ったことがありますか」と聞くようなものだ。
YESかNOかで答えるならYESになる。昭和のころは電車の中でタバコを吸うのが許されていたからだ。しかし、現代では電車の中でタバコを吸うなんてありえないことだ。
まあ、お爺さんなら「当時は電車でタバコが適法だった」みたいに回答すれば済む話だが、この種の討論会の場合、「周りの人の迷惑を考えなかったのか」などの道義的な点に論点をすり替えられるおそれがある。

別な問題点としては、ないことの証明は難しいということだ。
神宮外苑再開発事業者がパーティー券を購入していることを小池氏が覚えていれば、YESと答えることはできる。
しかし、神宮外苑再開発事業者がパーティー券を購入していることを小池氏が覚えていなかった場合でも、実際には神宮外苑再開発事業者がパーティー券を購入している可能性がある。だからその場ではNOとは答えられない。
おそらく、政治資金パーティーなんて小池氏にとってはたくさんあるうちの一つのイベントにすぎない。そんなことを細かくすべて記憶しておくことなんて不可能だ。

仮にNOと答えた場合、その後蓮舫氏に「公表されているデータによりますと●●年●●月●●日に神宮外苑再開発事業者である●●がパーティー券購入していますよ」と追及されたら嘘をついたことになる。
なので、本当に神宮外苑再開発事業者がパーティー券を購入していないと記憶していたとしても、追及されるリスクがある以上、NOとは答えづらい。

しかし、「記憶していない、把握していない」というのも(人間なら当たり前であるにもかかわらず)「なぜそんな重要なことを把握していないのか」などと追及されたらネガティブな印象を聴衆に与えることになる。

要するに、小池氏にとっては回答が非常にしにくい質問だったのである。

おそらく、小池氏は、苦しい質問であることを理解しつつも、道義的な問題ではなく法的な問題に論点をすり替えようとし、さらには「適法だから問題ないでしょ」と受け取ってもらえるよう、「パーティーの開催につきましてはそれぞれ法律に則った形で公表しており、そのような形で公開している」と回答したのではなかろうか。

また、討論会後にこの質問で小池氏にYESかNOかで答えていないと批判が集まったが、上記のような考察に基づくと、批判はあまり的確ではないように思う。
どちらかというと、都知事選という観点からすると、あまり意味のない質問であり、印象操作だけを目的としている質問の様にも見えるから、質問者の方が批判されてもおかしくないのではないかと思う。

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