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#3 「障がい」は壁か?それとも種か?
前回の投稿で、駅のエレベーターやスロープといったバリアフリーの取り組みを例にして、「障がい」が利便性や効率性への希求によって生み出される「障壁」であることを書いた。僕が『おしごとなにしゆうがー?』を通して目指す理想は、その「障壁」のない世界だ。
簡単な事ではないが、夢物語でもない。たとえば、感覚過敏な人がその鋭敏な感覚を活かして芸術やデザインの分野で活躍することは実際にある。「障がい」を抱える人たちが、その特性ゆえに発揮できる能力や視点に価値を見出すことができれば、「障がい」は成功の「種」へと姿を変えるだろう。僕は、彼らのレポーターとしての能力に価値があると信じている。だからこそ、『おしごとなにしゆうがー?』では映像のテロップやYouTubeのタイトル、概要欄に「障がい」という言葉を使っていない。
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もちろん、どんなコンテンツなのかを視聴者にわかりやすくするためには「障がい者」が主役であることを明示した方が良いだろう。しかし、それは彼らを「障がい」というレンズを通して見ることを助長し、「障がい者」というスティグマを強化するリスクを伴う。つまり、枠組みを壊したいと願いながら、その枠組みを説明することで逆にその枠を強調してしまう、という矛盾だ。
障がいに限らずジェンダーや人種など、アイデンティティに関する社会課題に向きあう時、このパラドックスは常につきまとう。そして、こういった課題に対してメディアが負っている責任は大きい。だからこそ、わかりやすさが正義であるという単純さに流されてはいけない。
一方で、まだ広く知られていない現在の状況で、高い理想を清く求めることが正しいのだろうか? もっと現実的な妥協点を探し、まずは多くの人に届けることを優先すべきなのではないか——そんな疑問が頭をよぎることもある。
知識も経験も浅い自分が独りで悶々としても仕方ないので、この分野で20年以上活動してきた画楽の上田シャチョーや中林さんに意見を伺い、さらに、実際に「障がい者」とカテゴライズされている方々の声にも耳を傾けてみたい。イアン・ハッキングの「ループ効果」やハワード・ベッカーの「ラベリング理論」もこの機会に勉強したいと思う。
◉ #3 お店情報 ◉
UF(ウフ)
高知県高知市はりまや町3-11-25
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