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西郷・DJ・いろりのDJはどこが凄かったのか ~クラブに出没するオタク目線で~

2024年3月9日、行ってきました。
Vの宴 feat. さなのばくたん。

イベント参加中に西郷・DJ・いろりのDJ行為の感想をX(旧Twitter)にポストしたらプチバズを起こし、また個人的に思うところがあったのでそれに関してもうちょっと詳しく言語化をしておこうと思います。
↓当該ポスト

全部が最高のイベントで、個人的伝説の夜認定しましたが、全部語ると爆裂な量になりそうなので、いろりのDJの部分に絞って語りたいと思います。

文章本体を読む前にこういうバイアスがあるよ、っていう前提条件を共有すべくオタク(筆者)のプロパティを、記述…。

  • 名取さなのファンで、本祭の「さなのばくたん。-王国からの招待状-」含めて関西から遠征参加しています。コラボの店舗もコンプリートした!

  • クラブミュージックに結構どっぷりで、名取の活動歴と私のクラブ遊び歴が大体一緒です。なんならブルアカのクラブミュージック寄りアレンジ同人CDの共同オーガナイザー(曲もつくる)とかやってます。現場でDJをした経験も一応あります。

追記:西郷・DJ・いろりって誰?
A:



参加前の気持ち

私はクラブにそこそこ出没するタイプのオタクかつ名取さなのファンなので、名取のお誕生日イベントの後夜祭でVの宴 feat. さなのばくたん。をやると聞いたときに狂喜乱舞しました。自分の好きなカルチャーに推しが寄ってきてくれるのは素直に嬉しいものです。

また、出演者が発表され、西郷・DJ・いろりがDJをすると聞いたときには、さらなる嬉しさとなるほど感を得ました。しかし、多少不安感もありました。本当にどんなDJをやるかわからなかったからです。

また、これを機に初めてクラブに来るせんせえ(追記2: 名取さなのファンネーム)が多いということで、自分の好きなカルチャーの、それならではの魅力が伝わるようなイベントになってほしいが…どうかなるかな……という期待と不安がありました。

当日、
それらの不安は、西郷・DJ・いろりが完膚なきまでに破壊していきました。

私が思うクラブの楽しさ

いろりのDJやイベントの運び方がどう良いと思ったかを説明する前に、まず私が思うクラブカルチャーの魅力について話しておくべきでしょう。

クラブにはクラブならではの様々な楽しみ方があります。知ってたり知らなかったりする曲で爆踊りしたり、椅子でXを見ながら聴いたり、流れてる曲を歌っちゃったり、知人やよく知らん人や出演者と交流したりする楽しみがあり…。非常に複合的な楽しさのある娯楽と言えるでしょう。

その中でも私が特に重要だと思うクラブならではの楽しさの中核は
「(よく知らん曲だとしても)音が楽しいから踊る」
「曲の意外な接続や切断、知らない曲やそのジャンルを知ることを楽しむ」
です。
「文脈を知らなくても喜びを体で表現していい楽しさ」
「不連続な文脈をふくむ文脈提示の多様性の楽しさ」

とも言い換えることができるでしょう。

文脈を知らなくても喜びを体で表現していい楽しさ について

思うに現代の音楽シーンはあらゆるものになめらかな文脈が付与されすぎています。
そして、リスナーそれぞれの知っている文脈がどれだけ付与されているかでどれだけ盛り上がるかが決まってしまいます。

もちろん、既知の文脈を共有してすごい一体感を感じて盛り上がるのも気持ちがいいことだし、実際、「エッビーナースデイ」でデカい声の合いの手を入れているとき、それはそれは最高の気分でした。デカい声でなとりさなって叫ぶとありえん気持ちがいい。おめでとう。

しかし、既知の文脈をつなげやすい形のまま共有することに徹頭徹尾してしまうことは、端的に言って、
馴れ合いです。

勿論、知ってる曲で盛り上がることを否定しているわけではありませんが、たとえば来てる人のほぼ全員が、知ってる曲とか内輪ネタに対して楽しそうに反応する状況の中、自分だけ知らないという状況って苦しくないですか?

元来、音楽ってのは「音が鳴ってて踊るとなんだか楽しい」みたいなプリミティブな喜びを生むはずです。でもそこにいる人々が一つの集団のようにふるまってしまうと、音楽自体は楽しいけど集団に属せないと感じてしまった人は逃げ出したくなってしまうと思います。楽しさの表明ができません。

クラブイベントならフロアで盛り上がって踊る人、後方腕組してる人、バーカウンター付近で談笑する人など、さまざまな楽しみ方をしている人がいるので、「集団」を感じる気持ちは少し希薄になりますあるいは、集団に参加することは自分の意志次第、という感覚が増えるともいえるでしょう。
また、特定ジャンルに特化したイベントでも、ごく一部の熱心なリスナーでなければ、結構な割合の曲を知らないので、楽しみ方別人数割合は激しくは変わりません。
したがって、よくわからんが音が鳴ってて楽しいぜ!という感情を踊って表明することがほかの音楽を楽しむ場と比較してやりやすいのです。

そして不思議なことに、そんな感じで長時間音楽にノッて楽しく身体を揺らしていると、理屈ではなく、なんだかとっても楽しくなってくるのです。
お酒もあるともっと最高。ブッ飛べます。
おそらく数千数万年前のご先祖様が焚火を囲んで同じ楽しさを感じていたのでしょうが、現代でその楽しさを感じられる場所はそう多くありません。

そういう音楽の原初的な喜びを感じることができる、というかそこに至りやすい条件が整った、現代では数少ない場、がクラブなのだと思っています。

また、知らなかったけど楽しかった曲やそのジャンルを知ることも、大事な楽しみ方です。それも、よく知らんまま踊ることができるからこそ強くなる機能だとおもっています。

不連続な文脈をふくむ文脈提示の多様性の楽しさ について

ライブイベントでは、基本的に出演アーティストはそのアーティストの曲を演奏することに終始します。カバー曲があるかもしれませんが、カバー曲がメインということはあまりないでしょう。しかし、クラブイベントでは出演DJに自分の曲があったとしても、自分以外の曲のほうを多くかけることが結構多いです。そして、それが文脈提示の自由度を生んでいます。
DJという行為は文脈をただなめらかにつなげるだけでなく、謎文脈でつなげたり、別の文脈を付与したり、ねじったり、ぶった切ったりすることを可能にするのです。

例を挙げてみます。
Pink Floorの一番手だったNemonoika氏は「Virtual Insanity」をかけていました。この曲はAcid Jazzの超有名曲で何年経ってもオシャレな曲ですが、
それを「Vの宴」というイベントに来ているVirtual YouTuberにInsaneな感情を抱いている謎の人々の前でかけることで、元々はなかった別の文脈が付与されます。Jamiroquaiのジェイ・ケイがVのオタクの前でVirtual Insanityを披露することはありえないわけで、これはVの宴のようなイベントでしかありえない文脈付与です。オモロ。

また、謎文脈の接続や文脈の切断は、それ自体を面白がるということ以外に、ダンスフロアから退くタイミングを与えます。ジャンル変わったし、一旦バーカン行くか、みたいな感じで。「フロアをロックする」という言葉がありますが、通常はロックされていないからこそ生まれる語彙です。文脈が不連続になるタイミングがあることが、クラブイベントでのいろいろな楽しみ方を可能にし、人を分散させ、曲をよく知らんままその楽しさを身体で表現しやすい条件を生み出すのです。

思うに、この文脈の自由度は名取の無軌道雑談配信の聞きやすさに通ずるところもあると思います。人の話を何時間も真剣に聴くのは、その相手がお話うますぎ人間であっても疲れるものです。話題が無軌道に変わっていくことで、ここはちょっと力を抜くか、みたいなタイミングが生まれ、あのとんでもない面白さと聞きやすさが生まれるわけです。

ここまで、私が思うクラブならではの面白さを語ってきましたが、そうはいってもみんなが知ってる曲(いわゆるアンセム)で盛り上がる瞬間があることや内輪ネタがあることは避けられないし、そういう楽しさがないとイベントを開催・継続することは不可能であることも重ね重ね付言しておきます。
あくまで割合やバランスの問題で、私だってアンセムで爆上がりするのが大好きです。

西郷・DJ・いろりの爆イケイケDJ行為について

まず、大前提として、西郷・DJ・いろりのDJ行為は、あの場にいたほぼ全員が目撃・体験したいものだったということを言わねばなりません。
つまり、ほとんどの参加者がフロアに釘付けになるということです。
ではここで、西郷・DJ・いろりのセトリを見てみましょう。

思いました。

完璧すぎる…

恐怖さえ覚えました。↓徐々にうますぎて恐怖を感じる漏れの図

時系列順の感想

まずは時系列順に自分の感想を交えながら見ていきます。
ちょっと読みにくい。
あたりまえですが、プレイ中にわかった曲は少ないです。

Chantして!!!!! clocknote. Remixでまずフロアをあたため、More One Night (Jun Kuroda Bootleg)でさらに盛り上げる、このへんは(Bootlegをかけると予想はしていなかったけれど)想定の範囲内です。個人的な話をすると、私がクラブイベントに行く最初のきっかけがたしかJun Kurodaが近くでDJするらしい、行ってみるか、だったのでマジで特効でした。Jun Kuroda製サンプルパックとかも曲に結構使ってます。ウソだろ…。

English man in NewYorkあたりで、様子がおかしくなってきます(この曲の作曲者はゆびきりをつたえてを作曲したbermei.inazawaさんではありますが)。
これは、単にみんな知ってるから盛り上がるタイプの曲以外もかける感じか…?

そしてNizikawa - In-House Grooveで、マジか…となってゆきます。これは完全にオタク要素がないクラブミュージック(UK Garage)です。コンポーザーは名取のオタクですが。しかもChantして!!!!! clocknote. RemixとMore One Night (Jun Kuroda Bootleg)がガラージだったので、布石打ちも完璧です。

しかも、そのあとにベースラインやってる?笑につなげるのも天才です。
純クラブミュージックに慣れていないせんせえに息継ぎのオタククラブミュージックを供給するだけでなく、名取さなのオタクつなぎにもなっています(ななひらさんも名取のオタクです)。個人的な話をすると、私はななひらさんのファンでもあるのでめちゃくちゃ嬉しかったです。生歌のベースラインやってる?笑を聞いたこともあります。ガハハ。
もっとイチャイチャしてくれ~~~~~

そのあとの宝鐘マリン - Unison (3R2 Acid Groove Mix)も名取のファンつなぎになっています。↓名取言及インタビュー(非公式wikiを見た!)

このリミックスはみょんみょんした音が特徴のAcid Technoというジャンルです。ここからなぜか、いろりは石野卓球 - Polynasiaをかけ始めます。ウソだろ???マジかよ…。確かにAcid Technoつなぎだけどさ!しかも確かこのへんはテクノらしくロングミックス(ゆっくり曲を切り替えることです)していたように思います。ふつう初心者はロングミックスなんてせんのよ。
私はいろりがガチクラブミュージックをかけてくれていることに対して爆踊りしつつ「幻想(ユメ)じゃねえよな?」って声に出して言ってました。

そこからSalvatore Ganacci - Horseを経由してAngeart - 名取ポイント3ptにつなぐのですが、HorseのAcid要素が前曲と、Donkbass要素(ンベンベみたいな音)が名取ポイント3ptとつながっています。グルーヴだぜ…。個人的な話をすると、名取ポイント3ptは私のクラブ遊び初期かつ名取の活動初期にSoundCloudでめちゃくちゃ聴いていたのでめちゃくちゃテンション上がりました。最速でデカい声で「名取ポイント3ptやん!!!」って叫んでたやつが近くにいたなら多分私です。っていうか名取の配信を無断サンプリングした曲をいろりがかけるの、流石に意味不明すぎる。

そのあと、BPMをあげていって、UK Hardcoreになっていったのも良かったですね…。せんせえがクラブでのノリ方をわかってきたところで速くなる、素晴らしい。プリパラEDのRemix、ハートフル♡ドリーム (DJ Noriken Hardcore Mix)は知りませんでしたが、DJ Norikenは私がHardcoreにはまっていったきっかけになったアーティストの一人なので、ちょっと出来過ぎな話でした。今私が作っている音楽ジャンルも広く言えばHardcore Technoなので、いろりがかけてくれて本当にうれしかったです。

Kizuna Aiで一度〆るのも、Vの宴という場では偉すぎ行為です。2018年にKizuna Aiがメインパーソナリティーの番組が行ったバーチャルYoutuberランキング2018投票で名取が1位を取ったことも思い起こされますね。

そして、いろりのトークをはさみ、「いまの気分を表す曲」ということであんずのうたをかけて〆ます。いろりのキャラクター性に近い上に超有名な曲で〆ることで、フロアを再加熱してから退き、名取のMCを挟んで名取の曲を大量にかけるであろう(実際かけてた)やしきんさんに渡します。
う、うますぎる…。

名取は「渋くない?」って言ってましたが、いや確かに渋かったけども!
本当に絶妙なラインを攻めたクソうまDJでした。

名取「えっ!…だけど、あんな渋い楽曲をめちゃくちゃノりこなしていた…もしかして、素養があるんじゃないですか!?」
まじでやりやがったなオイ!!!!

全体的な流れについての感想

西郷・DJ・いろりのDJ行為は、私が述べた
「文脈を知らなくても喜びを体で表現していい楽しさ」
「不連続な文脈をふくむ文脈提示の多様性の楽しさ」
をクラブ初心者に伝えるRTAみたいになっていました。

前提として、いろりのDJだから踊っとくか…という感情が惹起されるということがとても重要です。一般の日本人は他人の前で音楽にノッて踊るという行為を日常生活で行うことはまったくもってないし、こっ恥ずかしいと感じると思います。したがって、クラブで踊るという行為は、諸外国に比べて文化的にハードルが高い。まして、知らない曲では!しかし、最初の3人のDJの間に、(名取もそうするよう言ったように) クラブ経験者のノリ方を初心者の人が見たりして、踊り方がわかってきています。そうして、だいたいの人はいろりのDJでなんとなく踊ってみようという感じになったと思います。

いろりのDJは次のように展開しました。
まずは持ち曲で盛り上げ、最初のほうは順当に盛り上がる曲を連続でプレイしていきますが、徐々に知名度が低い曲にシフトしていき、ついにはNotオタク・クラブミュージックになります。おそらくほとんどの人は何の曲か知らね~状態になったでしょう。でも、なんか音を聴いてるだけでちょっと楽しいのでなんとなく身体を揺らしてみたりした人が多かったはずです。そう、これです。よく知らん曲をよく知らんまま踊ることに誘導しているのです。しかも、ベースラインやってる?笑などを挟むことによって、なんかよく知らんから踊るのやめよ…状態に陥ることを防いでいます。実に巧妙な調整です。

また、Horseから名取ポイント3ptにつなぐ、という箇所で、音は似てるけどバチバチのクラブミュージックがなんか名取の声が乗った曲に変わってオモロ、みたいになりますね。そう、文脈提示の自由さが面白さを生み出しているところです。ほかにもそういう部分がたくさんありましたね。
うますぎる…。

他でもない、いろりが、私が大好きなクラブカルチャーの面白さの神髄(私個人の意見ですが)を初めてクラブに来たせんせえに伝えようとしており、その技量も非常に優れていたこと、本当に心の底から感動し、敬服しました。
おみそれしました。

いろりのDJが楽しめたせんせえは"素養"があるので、ぜひほかの機会にも、クラブに遊びに行きましょう。いや、行ってください。

おわりに

Vの宴 feat. さなのばくたん。はあまりにも俺得&みんな得なイベントで最高に最高に楽しかったです。ここまで楽しいクラブイベントは私の人生でも指折りでした。時間があっという間で全フロアでっかいラブでした。Pinkの他の演者のほとんどや結構な長時間いたGreen、Redに言及しなかったけど、みんな最高すぎということを言い添えておきます。ハッピーバースデートゥーユーの流れにしてくれたワイパさんマジありがとう…。

このイベントをきっかけにクラブって楽しいなって思ったせんせえが大勢いたであろうことも、本当に嬉しいことでした。自分の話をすると、最初にちょっと言及した、私達がオーガナイズしているブルアカクラブミュージックアレンジ同人CDは、「ブルアカから得た感動を表現したい!」という気持ちの他に、「ブルアカきっかけでクラブミュージックにはまってくれたら嬉しいな」という気持ちでもやっていることです。だから、いろりが、名取きっかけでクラブの魅力を知らしめようムーブをしていたことにすぐには言葉にできないほどの感動がありました。

こんな素晴らしいイベントを作りあげた関係者の皆様、本当にありがとうございました!夢みたいな時間でした!!!!

あと、名取!
改めて、お誕生日おめでとうございました!!
ちょっと信頼可能ポイント貯めすぎじゃないか?大丈夫?
本当にありがとう!!!大好きだ!!!!

………本祭、さなのばくたん。-王国からの招待状-とかラ・チッタデッラのコラボの記事は…????
勿論そっちもめちゃくちゃ楽しんだから時間を作ってそのうち書くね………
書けたらいいな……


ヒルバレーのコラボポップコーンうめえ。


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