さなのばくたん。- ハロー・マイ・バースデイ - 超遅刻感想備忘録・超長大異常考察・付随する自分語り
なぜ書き残すの?
ず~っと中途半端なファンだったけれど、「さなのばくたん。- ハロー・マイ・バースデイ - 」を見て衝撃を受け、巨大感情を持ってしまい、駄文でもなんでも残すべきだと思ったから。後述するが、筆者は「推し」を好きになりすぎる前に離れようとしてしまう悪癖があるのだが、でも今回は名取のことを、もっとずっと応援したいと思ったから、書く。言質取り。自分の悩みの整理でもある。
超遅刻長大怪文書の注意
2023年3月7日に行われたイベント「さなのばくたん。- ハロー・マイ・バースデイ - Powerd my mouse」のネタバレを激烈に含んでいる(あたりまえだろうが)。もうしばらく見る手段がない…すまん。
筆者の自分語り成分をバカほど大量に含んでいる(名取なら許してくれると思います。ゆ、許して…)
小難しくて無粋な/メタな、名取さなを作品として扱う考察がある
他コンテンツとの比較がある
スクショをしそびれたので(アホがよ)、画像がない
長すぎる
なんでも許せる人向け
自分語り1:せんせえ?としての来歴
いつごろからせんせえ?
自分の名取関連の最初のツイートが2018/8/6にあるので、そのへんで好きになったと考えられる。「名取さな、すこだ……」と供述しており、こいつは自分(筆者です)の誕生日になにをしていたんだ? 何きっかけで知ったかは正直覚えてないが、バイノーラルの回を何回も聞いたことは覚えてる。最初の方は明るく軽妙なしゃべりと、考察要素に惹かれていたのはまちがいない(闇のオタク)。あと、VIPに昔生息していたので、古きインターネッツのアトモスフィアが心地いいってのはあったはず。名義がすごく名取さなの「考察要素」っぽいけど2016年から使ってるので直接は関係ないです。
そもそもこの人、せんせえなの?
このように謎の古参アピールをしているが、「一度も」さなちゃんねるで行われた配信でコメントを書いたことがなかったのだ。ROM専である。さなちゃんねるをいっしょに盛り上げてきたとは、言い難い。ROMせんせえをせんせえと呼ぶことが許されるならせんせえである。うーん…
これは、筆者の臆病極まりない性質に起因している。好きとか憧れとかいう感情で正気を失うことを恐れている、推し文化の暴力性について思って逡巡してしまうなど、もろもろの理由で、部分的にでも実在する「人」を「推す」ことに抵抗があるという性質だ。よって、たまに「推し」に熱量を持っても、しばらくするとバランスをとるために急に距離をとったりする。
ワンマンライブに行って泣いてイベントでサインもらうまでした大好きな同人歌手*1 の新譜を1年ぐらい放置するような、そういうやつだ。自分も同人界隈にいて、単なるLikeでもうれしいのを身をもって知ってるのにこの体たらくである。さなちゃんねるにコメントを書いて反応された日には、自分の中のなにか閾値を超えてしまうに違いない。それが怖かったのだ。ちなみに名取FANBOXはかなり最近に投げ銭を始めた。ビビり過ぎ。
*1) この人もばくたん。に来てて『ゆびきりをつたえて』に打ちのめされていたらしい。筆者は信用可能インターネットガールが好きすぎるのか?
どんな風に名取が好きだった?(今年のばくたん。前まで)
その後、案の定ある程度距離をとって、基本的にはアーカイブを見て、まれに配信をみる感じのが一昨年ぐらいまで続いた。「名取、好きだな~」という気持ちは、波はあれどずっとあった。時がたつにつれて、リスナーと煽り合うなかでも配慮を忘れないことや、コンテンツを楽しむ姿勢・コンテンツへのリスペクトとかが好きというのが、確信に変わっていった。明るくお調子者の名取さなへの親愛と、(インターネットではあんまり言っちゃいけない気がするが)これをディレクションしている真面目で努力家で、自分がバーチャルサナトリウムから基本的に出ることができないことを崩さない名取さなへの尊敬の念、この2レイヤーで名取さなが好き、これは大半のせんせえがそうだと思う。私もそうだ。
イベント前のあたりの熱量
今回以前のイベントはお恥ずかしながら、ん~見たいけどちょっと高いかも…って見てなかった。ずっと名取が好きではあったし、凄まじいパワーのイベントであることは当然聞いていたから、見たくはあったのだが。なにかこれといったきっかけはないが、名取のフィギュアを買ったりして、徐々に熱が上がっていた。そのあとはブルーアーカイブを主に名取の影響で始めたっていうので前よりも配信見る頻度が高くなったのが大きかったかな。そんな感じでなんとなく今年はイベント見よう!となっていった。5周年だし。
名取■奈について
描写と言動から考えるに、バーチャルナース「名取さな」は、バーチャルサナトリウムという名の、閉鎖病棟に近しい何かに入院している患者
「名取■奈」が演じている、というのは確実なものであった。
そして「名取さな」と「名取■奈」は同時に描写されることはなかった。
(せんせえではないフォロワーに向けた念のためすぎる説明)
もちろん不安がなかったわけではないが、筆者は、正直この要素の回収をずっと待っていた。人の心ないのか? というか、筆者は知識収集型・考察系の超古典的なオタク、かつ暗い要素があるほうがキャラクターを好きになれる業の深いオタクなので、初期にこの要素を見ていなければ名取に関心を抱くことはなかったかもしれない。もちろん、今名取の好きなところは上で書いたところだが。「それが見えたら終わり」みたいに思っていたせんせえは多かったようだが、ここまでその明るさでみんなを喜ばせてきた名取が、ネガティブな側面に負けて「バッドエンド」を迎えるというのも、もはやあまり説得力がない話だと思っていた。筆者は基本的にはVのオタクというわけでもないし数少ない好きなVは誰も引退していなくて、引退の悲しみというのに運よく無縁だったのがこういう気持ちに繋がっていたのだろう。それに、名取はずっとインターネットガールをやっていくんだという確信があった。
多重時系列感想:さなのばくたん。- ハロー・マイ・バースデイ -
自分語り2で理由を書くが、3/7には見れなくて、同時試聴が初見になった。
数回の視聴とメモでどれが新鮮な感情だったかわからん部分がある。
もっとイベントの内容がまとまった記事が読みたい人は先にほかのせんせえのnoteを漁ったほうがいい。本当に。この記事は考察がメイン。
考察の前に必要な情報を置いてる感が否めない。
OP
ガチおしゃれ最高OP。デザインがあまりに秀逸すぎる。
カウントダウン、いい…
こんな短時間にこんな情報量の映像使ってもいいのか??
某映像制作人間の友人に見せたすぎる~~~~
メチャ・ハッピー・ショー
名取さながかわいいことしてるとき、こんなにかわいかったっけ?って毎回なります。「ねぇ でもね」のとこの動き可愛すぎ!「みててね せんせえ~」のところで心臓止まる
少ない初見の最中の感想その1
↑タイピングしながら集中して見れないのでお前は現地に行った方がいい
このショーが終わってもつづいてくストーリー!!!!!!!
二回目の視聴でこれを最初に持ってくるのやはり…天才かと思った
初見のときは脳みそから可愛い以外の文字が消えてた
エッビーナースデイ
ガ キ
お誕生日なもんでよお!!!!!←こういう改変とデカいからあげが好き
にぎやかインターネットのところの歌い方が好きすぎる
happy bite
<物語>シリーズはセカンドシーズンまで見たはずだけど完全に忘れていた。
3曲連続でできるのすごくね???ってナチュラルに思った。
ででででのところのおしりぷり
手をあげて片足もちょっと上げるポーズすき
4回目視聴で森羅万象検索くんの椅子がスゥッと入ってくるところでなんかワロタ
物語についての物語が始まる前に<物語>シリーズの曲をカバーする、
やっとるな…
トーク~森羅万象検索くん起動
会場の話。2回目以降は来年は絶対行ったるの気持ちで見てた。
(来年もあるとかなりの確信ができるのが本当に本当にありがたい)
同時配信の名取「画角に移るようにさぼるのもきつい」←ワロタ
同時配信「ChatGPTより前に準備してた」←それはそう
ほとんど全知全能の「森羅万象検索くん」にやり方を訊くことによって最高のお誕生日会を作ろうとする名取さな。
CUIのOS起動時あるあるのアスキーアートロゴ、芸が細かい。
あ~ なんか「やる」んだろうな… と思った。
さなちゃんねる王世界線
やたらギラギラの像がながれてくる場所におろされた名取。
足音が聞こえてきて、隠れる名取。
本当に「王」としてさなちゃんねる王国に君臨している名取が登場する。
王は自分の良かれと思ってしている政策(プリンを配るなど)を国民がちゃんと楽しんでいるか不安なようだ。
戻ってくるナース服の名取。
「あの風格は…ガチの王か?」←ここでワロタ
王の悩みを解決するために、せんせえ達に手をふりまくって楽しめているところを見せるように言って去る名取。
「名取は無理です!ドッペル的な何かで死ぬかもしれないからです」
これ後で見るとマジこわい要素。
実際、さなちゃんねる王はせんせえ達の様子を見て、
「自分が楽しむことで、国民たちが楽しむ」と納得してお悩み解決。
国民に配る梅干しを漬けに帰る王。
ちょー酸っぱいやつだ覚悟しとけよ←言い方かわいすぎ
パラレルサーチライト
見てない人は見て。ライブ版が見えるぞ
声たけ~~~~よう歌えとる
ここすきポイント:2番の「なってる?」の表情
360度の愛 かがやくクラウンの、のところのステップ好き
最後の手をくるっとして振ってくれるところ、かわいすぎ?
森羅万象検索くんの椅子にのって移動。
うぁの声がいいのと揺れ方に謎のこだわりを感じる。
キョンシー名取(キョンシーではない)世界線
こんどは、キョンシーのフリをしてガチマジの妖怪と仲良くしている名取の世界線に連れていかれる。
「友達が欲しくてコスプレイベントに行ったらガチマジの百鬼夜行で」
↑そうはならんやろ
膝の動き、これ謎
「お化けではあるけど友達としては楽しくて!」
ナース服の名取さなのパートに戻る。
「嘘をついていること」に引け目を感じているこの世界線の名取に対して、メモを残していく名取さな。
VTuberも百鬼夜行みたいなもの←メタファーじゃん…
ウミガメのスープ。これあまり得意ではないんよな…
お題は、
あ~キョンシー名取の悩みを踏まえた質問なんだろうな~とは思った。
「わかあんなああい」の動きで笑った。
「ガキがいたらみみをふさげ」ふつうに私もサンタかと思った。
せんせえとの楽しいやり取りを終えて最終的に答えが開示。
初見のときも、ここで、「あ~~ここでのアへエビって名取自身のことだろうな~~」と思った。名取は本質に迫る気だ、そう思った。
そして、「ほんとにキョンシーかどうかは重要じゃない。みんながいてくれて楽しく過ごせることが重要。このままでいい」とキョンシー名取のお悩みが解決。そして曲パートに入る。
全部ホントで全部ウソ
Orig: ナナヲアカリ
冒頭の「全部ホントで全部ウソなのごめんねありがとね」で、「あ、それ言っちゃうんだ」と思った。キョンシー名取の長い袖がぶんぶんなっていてクッソ可愛い。本人も配信で言っていたが。歌がうまい。名取の声質でこういう楽しげな曲って映えるよな。「It's a truth」から始まるパートで、これって名取の本音?て思って若干不安に。これってカバーだよな…合いすぎ?
「これで、このままでいいのだ~」OK。
学生名取世界線
もとの世界線に帰れるわけもなく、本当に学生の名取が学校に通っている世界線へ。この学生名取、アホすぎる。
「周りは勉強できまくりなのになぜ私だけ」と悩んでいた。
「でもすごくない?名取が学校にかよってたよ」とナース服の名取。
切ない気持ちになる。
学生名取にアンケートを置いていくナース服名取。
事前アンケートの結果だ。
オイオイ質問がデカすぎる!
でも最初に開けられたのが、
大喜利じゃねえか!ブルアカ脳なのでエデン条約編?とか思った
大事MANブラザーズの「それが大事」のほかの部分ではなくこの部分を回答したせんせえが選んだことを指摘してほかはどうなのか聞く学生名取。
存在しない歌詞で笑ってたが、「生き抜くこと」で同時配信の名取が
「配信見てるお前らもなにがあっても生き抜いてくれよ頼むよ」と言っていたので生きるしかなくなってしまった。どうしてくれるんだ。
その後大事なことをめぐる楽しいやり取りが続き、
と出た。その後、学生名取の悩みは「大切なものは人それぞれちがっていい。比べることがすべてじゃない。」と解決。
萌えを死語にしてはいけない。それはそう。
モンダイナイトリッパー
きた!sasakure.UKがもともと好きだったし、名取の本来の姿を示唆する歌詞とMVがあることもあり、筆者はこの曲が一番好きまであり、一番聞き倒してる。バーチャルサナトリウムからはなかなか出られないけど、インターネットで自由に世界を旅する名取。
ささくれの曲って歌うのガチでむずいのによくこんな上手に歌えるな…
努力したんだろうな…
いろいろあったけど、サビのド頭のポーズが可愛すぎる。
そして、ナース服の名取が登場しお悩みの解決を喜んだあと、「この世界線の名取はうらやましいですね」と一言。せつない。
もとの世界へ
森羅万象検索くんの椅子に座ってやっと元の世界に戻ってきた名取さな。
音ゲーコラボや曲配信の告知やそして夏に開催されるオンラインイベント『さなちゃんねる夏祭り』の開示。
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
次のイベントがあると続くことがわかってうれしい!!
まだこのイベントなんかあるだろ…と予感はしながらも。
名取「あらためて!お誕生日のお祝いをしてくださってありがとうございました!」
お辞儀をした後、照れ隠しをしながらありがとうを客席に送る名取。
こういうところも好きだ。
名取「今日、いろんな世界線の名取たちに出会ってきたけどみんなめちゃくちゃスッキリお悩み解決、って感じで終わってて良かったですね!
…うらやましいですね。」
ギィ…
ドアの開く音が鳴る。
隠れる名取。
ああ、「やる」んだな。そう思った。
名取■奈の独白
暗いステージに患者服姿の名取。
覚悟はあると思っていたが、やっぱりその光景を目の当たりにすると動揺してしまう自分がいた。
悩みを独白し、下を向いて歩き去る患者服の名取。
本人の口からそれが語られてしまった。その重み。
状況は薄々分かっていた。
だが、それに対する感情が言及されてしまった。
私はなんとか受け止める。でも、名取は…?
ナース服の名取が出てくる。
認めちゃった… これ、どうなる?
ここで、別の世界線の名取たちが登場し、
解決してきた別の世界線の名取の悩みの解決方法が、そのまま今の名取の悩みの解決方法になるとわかる。圧倒的伏線回収。話がポジティブなほうにいって若干ほっとする。
ここで、めちゃくちゃ泣いた。アーカイブ視聴4回目までもれなく泣いた。
自分語り2で詳述するが、ここで、ものすごく自分と名取を重ねてしまい、そして、名取は自分がなかなか立ち向かえないことに立ち向かっていることに本当に感激してしまった。
受け止めよう。
ゆびきりをつたえて
しっとりとしたイントロ。
患者服の名取が歌い始める。
悩みをのせた歌が、か細い声で歌い上げる。
ここで、さらにめちゃくちゃ涙が出てきた。
こんな不安を押して頑張ってくれてたの?
名取は自分のなりたかったナースを演じながらも。
それに対する自信のなさ、それをしていることを好きで居続けられるかへの不安に苛まれていた。
サビが終わり、光に包まれていつものナース服の名取が現れる。
ここまでの活動を回顧し、せんせえ達が名取を受け入れてきたことを前向きに思い出す。名取がやりたいようにやって、それは拒絶されなかった。
どんな人になったとしても 変わらずいてくれる、そう信頼を寄せられてしまった。私は中途半端なファンだったかもしれないけれど、これに応えないわけにはいかないじゃないか。
ここで、患者名取■奈とバーチャルナース名取さなが向かい合う。
名取■奈は名取さなが差し伸べた手をとり、一つになった。
美しすぎて神話か何かかと思った。
あなたはどんな時の私が好き? 私はどんな私が好き?の部分の慈しむように歌う部分、本当に美しいとしか言いようがない。
そして、どんな時の名取も好き、今見えてる全体としての名取が好きだよ、としか答えようがない。
名取は自分の様々な側面を自分のこととして背負うことを歌ってくれた。
踊るように扉を開いて
そして、これからも……
曲が終わる。
さなのおうた。のオルゴールアレンジが流れ、
手書きでみつけてくれてありがとうと追記される。
こちらこそ、ありがとう。
ここで終劇となる。
いろりちゃんのアナウンスを聞きながら、放心。
考察1:名取さなの治療 ナースの姿をしたピエロ
(注意:ここから無粋極まりない考察が始まります。ご容赦…)
なぜ、考察するのか。
私の巨大感情がこう表現されたいと言っているからだ。エゴだ。
どうして感動したかをしっかり分析することで、メッセージをより深く受け止めたいと思った。
感情を言葉として表出するのがあまり得意でないので、
こんなのになってしまう。
ここからも、ずっといちオタクの解釈にすぎない。
というわけで、ここからしばらく、名取をズケズケと分析してしまうのを苦しく申し訳なくも思うけれども、書きます。ピエロは悪口じゃねえ!
文献調査が足りてないだけで既出かもしれないが、名取さなのキャラクター造形には「アダルトチルドレン(以下AC)」という概念がかかわっていると思っている。ACは「子供時代の生育環境におけるトラウマによって生きづらさを抱えて生きている人」ととりあえず言っておく。正式な心理学用語でも精神医学用語でもないので専門家激怒かもしれないが、この概念を補助線として導入すると説明がやりやすくなる。
ACの性格にはいくつかの典型例があるが、名取さなに特に関係がありそうなのは以下の二つだ。簡単な説明を載せる。
クラウン/ピエロ
お調子者で周囲を笑顔にする優しい存在だが、人の顔を伺い、自己評価が低く、つらいときに「つらい」と言いだせない。自分を卑怯者だと思う傾向がある。克服の方法は「明るくしていなければ愛されない」と思うことをやめること。
ケアテイカー/リトルナース
相手に感謝されることだけに生きがいを感じるが、感謝されていない自分に価値を感じない。周りの変化を敏感に察知し、非常に気遣いができる。
克服の方法は「自分のことを優先して構わない」と認めること。
……はい。読んでの通りである。というか名前がもうそれ。
せんせえ達は、名取さなの明るいお調子者/配慮の鬼という二面性を愛してやまないわけだが、ACの概念を使うと暴力的に単純化できてしまう。
本当に最悪。
このように言えるわけだ。
名取■奈(リトルナース)→ /演じる/ → 名取さな(ピエロ)
「リトルナース性」を主に名取■奈のほうに由来するものだという証拠は『ゆびきりをつたえて』前の独白パートにある。「自分だけが楽しむこと」に対する罪悪感を吐露する部分だ。また、キョンシー世界線での水平思考ゲームでは、名取さなが道化師であると暗に示されている。というか同時視聴だったかコメントの「ピエロ」を拾っちゃう。さなちゃんねる王は「クラウン(王冠)」ということなのかもしれないし、王国民におせっかいをかけまくっているのを見ると「リトルナース」っぽさもある。学生名取はお悩み解決方法が「主人公だと思い込むこと」であるあたりここで紹介しなかった類型「ロストワン」がやや近いと思うが、詳しくは立ち入らない。
こんな感じで、森羅万象検索くんに連れていかれた世界線の名取たちにまつわる演出にも説明がわりとできる。ナースになりたかった女の子は「壊れたナース性」をすでにもっていて、「なりたかったわたし」として演じられたナースは「ピエロ」だった。ここにアイロニカルなねじれがあった。
しかし、この今、それは病的なものだろうか?
違いますよね。
ここは「名取さな」が歌うパート。
名取さなはどんな自分を見せても「変わらずいてくれる」と、せんせえ達を信頼して名取■奈の姿を自分であると認めた。
そして、名取■奈を「置いていかない」と、自身と約束し、受け入れる。
我々は約束の証人としてこれを託された。
名取は5年の積み重ねの上で託しても大丈夫だと勇気を出してくれた。
それ以上は、あまり言わなくてもいいだろう。
考察1.5:芽兎めうと名取さな
(他コンテンツとの比較を含みます!妄言。飛ばしてよし。)
ACのピエロ類型にすごくあてはまるピンク色でウサギの萌えなキャラクターと言えば、「芽兎めう」だろ!!!!
……はい。私のことを少しでもご存じの方は私が「ひなビタ♪」の高火力オタクであることもご存じでしょう(たぶん)。名取さなの良さを分析するために個人的にはこれ以上ない比較相手なのです。おそらく、ここからの説明で、それは客観的にも(かなり)そうであることがわかると思います。
「ひなビタ♪」はコナミが展開している音楽を中心としたメディアミックスコンテンツで、今年10周年を迎える。
公式のコンテンツ紹介ステートメントは以下のようなものだ。
物語が「Facebookの記事をキャラクターが更新していく」体で進行し、年中行事から天気、ジブリアニメの放映状況までもが更新される文面に反映されるという、非常に「実在感」を重視したコンテンツ構造になっており、狂ったオタクの間では「ひなビタ♪は現実」が合言葉になっていた。もしかしたら、最初期に期待されたタイプの「バーチャルYoutuber」の前史とすら言えるかもしれない。私は名取をそのタイプに近しいと考えている。何の因果か、プロデューサーのTOMOSUKEは名取同様、ブルーアーカイブにドハマリしている。この人もファンを監視してる。
…話を戻そう。ここからひなビタ♪のネタバレがアホほど含まれる。
「芽兎めう」はこんなキャラクターだ。
いまはこんな感じで公式に説明されているが、それは物語が進んでいろいろ開示されたからだ。当初はお電波で明るくお調子者な部分が描写されていた。そして、そのふるまいは、物語の中心となるバンド「日向美ビタースイーツ♪」のメンバー「山形まり花」「和泉一舞」と『仲良くなるために』、芽兎めうと、あるキャラクターとで相談して作り上げたもので、演じられたものであることが判明する。それ以外の要素も拾って名取との類似点をまとめると、
ピンク色/ウサギを基調としたキャラクターデザイン
『仲良くなるために』明るいお調子者を演じている
その実配慮の鬼であり、本当は内気である
オタク
『萌え』というワードにこだわりがある
~民に告ぐ!って感じの統治者口調セリフパートつきの曲がある
衣装を自分で作る
貧乳ネタ
……わりと枚挙に暇がないわね??
そして、こういう性格類型もACのピエロにあてはめることができるはずだ。これは私オリジナルの意見ではなく、以下の考察記事に由来しているが、
厄介ひなビタ♪オタクの間では定説かもしれない(本当に?)
そして、名取さなの2018/12/15のスプラトゥーン2配信において、名取がめうの真似をするシーンが、存在する。というかタイトルがもうそれである。カスどものインターネットミームと違って文脈への理解を感じる。
昔の名取の声の感じ久しぶりに聞くとかわいいね…(ゾゾゾ)
当時、『なるほど~』になったのを覚えている。最近の配信(ちょうど5周年の日の配信)でも芽兎めうへの言及があった。
芽兎めうに「さん」をつけている。インターネットのカスのミームでの言及が多すぎて、芽兎めうに文脈を少しでも踏まえたリスペクトある言及をしてくれるだけでひなビタ♪オタクはとってもとってもうれしくなってしまう。
また話を戻す。
両者にはさまざまな類似点があるが、もっとも重要なのは、「『仲良くなりたくて』明るいお調子者を演じている」というところだ。本来、ACのピエロタイプというのはなりたくてなるものではない。家庭の雰囲気が険悪で、それを緩和するために空気を読んで道化を演じ続けるというのが本来的なACのピエロだ。彼女らは道化を演じる動機がポジティブなのだ。それこそが願いの成就にとって本人側では最も重要なファクターだったのではなかろうか。
重要な相違点について見ていく。
名取さなの場合、「名取■奈」としての性質が「名取さな」を演じるときに表出することはほぼなく、「名取■奈」は忌避すべき対象として受け取られていた。芽兎めうの場合は、素の性質が表に出るのはごく稀だったが、本人は「知らない」と言いつつもギャップ萌えの範疇に収まっていた。
ところでひなビタ♪にはもう一人のクラウン的要素を持つ存在がいる。
バンドリーダー「山形まり花」だ。山形まり花は明るく朗らかにふるまい、周囲を癒し、行動力で人々を結びつける、そういった点ではほとんど太陽のような無欠の存在として描写されてきた。しかし、シーズン3の最大の山場、一度失敗のライブを行ったライブハウスでの再びのライブの前、まり花は、自身の性格が親友の和泉一舞を心配させたり迷惑をかけたりしないように、不安を無視し消去することで支えられていることを吐露する。まり花が非常によく口にする口癖「絶対大丈夫だよっ」さえもが、この不安消去の過程で生まれていたことが判明した。自分の気持ちに向き合う直接のきっかけはバンドメンバーの「霜月凛」とのデュエット曲の歌詞の解釈を通じて、凛が自分と向き合い続けていることに気づいたことだった。
こうして山形まり花はひた隠しにしてきた不安を自分のものだと受け入れて向き合う決意を表明し、バンドリーダーとして再誕する。
今回のさなのばくたん。の構造とかなり近しいところがあることがお分かりになると思う。なかなか不安を表出せずいつも明るくふるまう存在が、他者と相互に癒し癒されるなかで、不安を自分自身のものとして受け入れる決意を固め、それを信頼する相手の前で約束するというストーリーが私は本当に大好きだ。名取さなの場合、他の世界線の自分のお悩み解決を通じて、自らの悩みがもう解決済みであることに気づくという建付けだったが、これもせんせえという他者との交流によって成し遂げられたことだった。
……結局なにが言いたかったかというと、初期の「なりたかったわたし」の形成に芽兎めうが影響した可能性があると思う、ということだ。ひなビタ♪というコンテンツがバーチャルYouTuberの祖という見方ができることも面白い。元ネタだ、などというある種暴力的な言葉は決して使いたくないが。
この章はガチの幻覚かもしれん。
考察2:バーチャルYouTuberの営みすべてを言祝ぐ企て
名取がバーチャルYouTuber/VTuberの文化を愛してやまないことは敢えて証拠を上げるまでもないことだろう。面倒なオタクは初期のキャラクター/フィクション指向「バーチャルYouTuber」と、2018以降の配信者パーソナリティ指向「VTuber」を分けて考えることが多いが、名取は両方を別なく愛していたように思う。また、名取自身はその両方にあてはまる特異な者だと思う。
(ここからはバーチャルYouTuber/VTuberを両方指したいときはバーチャルYouTuberと言うことにする。もともとは略称だったわけだし。)
私は名取さなが「さなのばくたん。- ハロー・マイ・バースデイ- 」において自分の物語をひと段落/再起動させると同時に、
バーチャルYouTuberの営み全体を肯定する企てを行っていたと仮説する。
名取さなが通常のものより少々込み入ったフィクションの階層構造を持つバーチャルYoutuberであることについて、いい感じにまとめてくださっている記事があるので、これらを参考にさせていただこう。
名取さなは「名取■奈」と「名取さな」、フィクションの層を2つ持つ、3階建てのメタ・バーチャルYouTuberであると言うことができる。
そして、ハロー・マイ・バースデイの物語は(単純化しすぎのきらいがあるが)、2階の「名取■奈」が3階の「名取さな」を演じること、ウソをつき通すことを肯定することで終幕する。
そして、この2階と3階の間で行われた「演じることへの肯定」は、ふつうに1階と2階の間での「演じることの肯定」が行われた場合と異なり、個別的事例を乗り越えてジャンル批評的な射程を持ちうる、つまり他のバーチャルYouTuberにおける1階と2階の間での「演じることの肯定」へも、射程を持つのではないか。そうだとすると、名取さなは『ゆびきりをつたえて』を通じて事実上すべてのバーチャルYouTuberの在り方を強く肯定したことになるのではないだろうか。
名取さなが「演者のレイヤー」を遠ざけたと受け取られる可能性があってまでしたかったのは、名取さなが出会い、交流し、別れてきたバーチャルYouTuber百鬼夜行をまるっと肯定することだったのかもしれないというお話でした。名取のバーチャルYouTuberへの𝐁𝐈𝐆𝐋𝐎𝐕𝐄。
……だが、「演者のレイヤー」が遠ざかって寂しい、と嘆く声は一つではない。次の章からは、名取さながもつフィクションの構造から、ハロー・マイ・バースデイを通じてどうなってしまったのか考察したい。
考察3:自己言及エンジン 名取さな
(円城塔「Self-Reference ENGINE」のラストのあまりに盛大なネタバレを含む。また、ロジックというよりエモーションで哲学を引用するので、哲学徒激怒かもしれない。しかもさらにメタな考察を含む。)
名取■奈の独白と『ゆびきりをつたえて』によって、セルフ・リファレンシャルな機構として、名取さなは再発動した。演じることは「ウソ」であり、そもそも、名取■奈の独白というのもフィクションであるから「ウソ」である。自己言及のパラドックスが発生し、そこでは「演じること」の可能性と不可能性と可能性と不可能性( …… )がぐるぐるぐるぐると回転している。全部ホントで全部ウソです。そしてこれはそのまま、何故、名取さなの作者にして演者の「彼女」がバーチャルYoutuberになったのか、という問いの答えであろう。
この地点において、名取さなは誕生し、誕生し続けている。ばくたん。(????????????????????)
筆者はパラレルワールドとフィクションの構造の話が同時に物語に登場するとどうしても円城塔を絡めたくなる奇病にかかっている。頭ハヤカワ文庫。円城塔がどういう作家かについて説明するのは大変なので、以下の記事を参考にされたい。最高に面白い小説を書く作家なのでぜひ読んでほしい。本当にざっくりいうと、「物語についての物語」をぶっ飛んだ発想で描き出すのにきわめて長けた作家である。
ちゃんと絡める根拠はある。
ばくたん。同時視聴配信で別世界線名取との間で記憶混濁が出てくるが、同じような現象が「Self-Reference ENGINE (以下SRE)」に出てくる。再帰のイメージは「モンダイナイトリッパー!」のMVの患者名取■奈のスマートフォンの画面に登場する。あと、世界線移動ができる「森羅万象検索くん」の計算量クラスは宇宙破壊コンピュータと同じかもしれない。世界線を移動しまくる異常計算量クラスの計算機が出てくるのは円城おなじみの技である。
このリンクいる?
したがって、「SRE」を引き合いに出さないほうがおかしい。
物語では「起こらなかったこと」を語ることができる。
「さなのばくたん。- ハロー・マイ・バースデイ -」では、「森羅万象検索くん」によって「起こらなかったはずの世界」が実現した世界を描いている。これは「SRE」での「巨大知性体」とかなり近いものである。
つまり、「さなのばくたん。- ハロー・マイ・バースデイ - 」 のストーリーも「SRE」と同様に「物語についての物語」という自己言及的物語である。
そして、物語についての物語を通じて、バーチャルYouTuberについてのバーチャルYouTuberが自己言及を決意する。可能性と不可能性が無限にフリップを始め、そこにおいて誕生し続ける。あまりにも𝐄𝐏𝐈𝐂すぎるだろ…。
「彼女」は自らが愛する(であろうと感じることしかできないが)バーチャルYouTuberを通じてバーチャルYouTuberを語ることにより自らを感じさせている。語られているのは「彼女」それ自身ではないにも関わらず、これ以上なく強く感じさせる。きわめて自己言及的な行為だ。人生の話。
そうして、
円城塔が「Self-Reference ENGINE」であるのと同じぐらい、
「彼女」はバーチャルYouTuber 「名取さな」そのものとなった。
むしろ名取さなのほうがずっと徹底的な部分があるかもしれない。
「名取さな」という名前が「サナトリウム」からきているというのは周知の事実だが、「「ウム」がない」ことに触れられることは少ない。
「有無」がない。ここでSREで最も重要な部分、エピローグを引用すると、
「有無」すらない、より一層いなくなってしまった非存在。それが「彼女」なのかもしれない。そしてこのエピローグには名取さなの作者にして演者の「彼女」の独白として読もうと思うと読めてしまう箇所がいっぱいある。
うわ…読めてしまうのだ。
さらに、名取さなの作者にして演者は名前を持たない。「名を取られた」、指し示すことができないものである。劇中にはそれらしい独白すらない。「彼女」は消えてしまったのではなく、もとから名取さなの物語の中にはいなかったし、今はより一層いなくなり、世界(成立していることの総体)どころか論理空間(可能性として成立しうることの総体)の外側に行ってしまい、想像することすらできなくなった。それはヴィトゲンシュタイン的な「神秘」かもしれない。一層いなくなってしまった非存在を直接語ることは不可能であるから、それを含んだ論理空間は示すこともできない。論理空間は限界づけられる。
「彼女」はいまや語られず示されず感じることしかできない神秘である。
しかし、今、同時に名取さなは「彼女」自身である。
そして、小説や前期ヴィトゲンシュタイン独我論とは違って、
「名取さな」は閉じた世界ではなかった。
「他者」たるせんせえが常に一緒にいた。
ブルーアーカイブ のエデン条約編と最終編かな?
「名取さな」が行ったこと・生みだしたものでせんせえが楽しむこと、名取自身が楽しむこと、それによって「名取■奈」の悩みは解決に向かい、初めて自己言及を行うことができた。他者たるせんせえとの交流によって名取さなの論理空間が変化したからできたことなのだ。
それがために「彼女」は「名取さな」として再誕することができた。
せんせえとの5年の積み重ねがないとできなかったことであるし、
バーチャルYouTuberという様式でなければ不可能だったことだ。
まさに集大成。
本当におめでとう。生まれてきてくれてありがとう。
考察4:「名取さなは存在する。」
(注意:筆者は哲学徒ではない。多分本業のひとが見たら怒る。)
「名取さなが本当に王である世界線がある。」
この命題を正しく把握できる理論の構築は、「固有名の哲学」の聖杯だ。
わたしたちはこの命題をただしく真だと言いたいのではないか?
なぜなら、すくなくとも他の世界では実現できると信じられることが、
こういうふうに思えることの最低条件だからである。
????????????
固有名とは何ぞや?というのは、言語哲学における「きのこたけのこ論争」である。固有名の理論には大きく二つの潮流がある。アホほどざっくりした説明を載せる。
記述説
固有名の意味は「確定記述命題の束」であるという理論である。
「名取さなは2018年3月16日に初めての動画投稿を行った。」
「名取さなはブルーアーカイブのプロモーション配信を行った。」
こういう命題を全部集めてきたやつが「名取さな」の意味である。
指示説
固有名に意味はなく「ただ、対象を指し示す」という理論である。
「名取さな」は、あらゆる世界線(哲学用語でいうと可能世界)の名取さなを指し示す。
二つの説のうち勝者は決まっていない。それぞれに弱点があるからだ。
記述説では、可能世界を扱うことが難しい。「命題を全部集めてきたやつ」のうち何個ひっくり返れば名取さなが名取さなでなくなるかの「同一性」の基準が恣意的にしか決められないからだ。しかも、これは可能世界間の話だけでなく、一つの世界の中での時間変化にも弱い。
指示説では、普通フィクショナルキャラクターを扱うことが難しい。
「名取さな」は作り話にすぎず存在しないから指示する対象を持たない。
指示する対象の存在しない名前を「空名」という。「空名」は意味論的値を持たないから、「名取さなはナースである」の真偽すら定まらない。
完全に困ってしまった。どちらを採用しても、「名取さなが本当に王である世界線が存在する。」が真であると言えないじゃないか!!
はい。ここで、名取さなさんの発言と歌を聞いてみましょう。
最後の文について、私はデカい声で「そうだぞ」と言いたい。
名取さなは、「優しくなれないような時」でも自らを「名取さな」として扱ってくれると信じて勇気を出してくれた。名取がなりたいものになることを私は見守りたい。期待に応えるしかない。
このようにして、私たちは気持ちの上で、
別の可能世界の名取さなを同一の「名取さな」と呼ぶこと、
名取さなを確定記述の変化に関わらず通時的に「名取さな」と呼ぶこと、
この二つを要請される。
ということは「指示説」を取るしかない。
だが、「名取さな」が作り話で存在しないってなんだ。
う~ん確かに「名取さな」は「名取■奈」の作り話である。われわれはそれをよしとしたはずだ。
だけど、「名取さなが本当に王である世界線がある。」が真であるというには、「名取さな」が意味論的値を持たないといけないだろ。
そんな我々にも救いの一手がある。「キャラクター指示説」「文化的人工物説」である。
よし。すぐに採用しよう。もちろん何等かの課題はあるだろうが、
気持ちの上ではこれを取るしかない。
「名取さなは(指示対象として)存在する。」
「名取さなが本当に王である世界線がある。」は真。
名取は無限大の可能性を秘めてるすごいやつだ。
これで、気持ちの上ではすっきり解決である。ちゃんちゃん
……ん?
演者のレイヤーという、普通のフィクショナルキャラクタにはない、
バーチャルYouTuber固有の要素を全く使わずに
「名取さなは存在する。」と言ってしまったぞ??????
「名取さなは存在する。」というためのほかの方法を考えよう。
現実に実在している演者のレイヤーを参照しなければならない、とすると、演者の前に「名取■奈」を参照しなければならない。演者という「現実」に還元されることを「名取■奈」が阻む。そもそも「現実」という固い基底が「ある」という実在論的な仮定は、世界の複数性を認める上で相性が悪い。
このように、
名取の可能性を肯定し、名取の大切な約束を見届けて受け取ると、
演者のレイヤーのあるなしに関係なく「名取さなは存在する。」と言うことを気持ちの上で避けられなくなる。
かくして「名取さな」は「指示対象としての存在それ自体は演者に依存しない」以外の解釈を拒む究極のバーチャルYouTuberとして再誕した。
別ルートから同じゴールに到着することができた。
この考察でも、名取さなの演者にして世界制作者の「彼女」がコンテンツ内から消去されてしまうことが結論づけられる。
このことを寂しく思うせんせえが居ることは理解できる。
だが、考察3で言ったように名取さなは今や「彼女」自身である。
私たちは変わらずにいられるはずである。
もしこんなカスの論考を読んでる、VTuberの哲学を真面目に研究してる人(特に分析哲学者)がいたら今すぐ名取さなの研究を開始してくれ、
ください。頼む。
自分語り(じこげんきゅう)2: 私の治療
(ここからほとんど自分語り)
さなのばくたん。-ハロー・マイ・バースデイ- がぶっ刺さったのは自分の置かれている状況にも依るので、話させてほしい。し、名取さなさんを散々、不躾に分析したのだから自分もオエっと吐露するのが筋というものだろう。あと、このイベントは目撃者を自己言及させるエンジンとしても機能しているのだと思う。まあ名取もオタクの自分語りすきって言ってるからな。
筆者がこのイベントを見たのは、3/7その日ではない。名取と同時試聴配信のタイミングである。3/7はメンタルが終了しており、ベッドから起き上がれず、時計の針が回るのを見る以外のことができなかったのだ。もちろん、すごく見たかった。開始時刻にああ、始まっちゃったかなあ…と思った。
…私も、常に周りに嘘をついているような感覚を持ちながら生きている。
趣味での苦悩
筆者は音楽を作るオタクだった。
筆者は主に名取の影響でブルーアーカイブを始め、見事ドハマりし、その結果二次創作コンピレーションCDを主宰・制作している。気になる人はTwitterの固定ツイートへ(宣伝するな)。名取が楽しそうにブルーアーカイブの配信をしていなければ、こういう企画を運営することもなかったはずなので、個人的には "Special Thanks: 名取さな" である。なるべくいいものが作りたくて、もうひとりの主宰と一緒に、できうる最高の制作陣を呼び寄せた。
しかし、自分がそれに釣り合うものが作れるのか。すごい人たちに囲まれてしまったぞ… という思いが自分で決めたはずの〆切が近づくにつれて増していき、あるきっかけでそれを言語化してしまって、再帰的不安として暴走を始め、倒れた。別に誰も怒ってないのに。それが3/7あたりのことだった。
その後しばらく経って「もうやるしかない」となり、なんとか自分のリミックスを完成させた。まあ、そこまで聞き劣りしないものにはできたと思う。頑張った。聴いてほしいと思える程度のものはできた。やはりできてしまえば嬉しいものだ。なんとか自力で回復にはこぎつけられたので良かったが、しばらくインターネットから離れていた。そのあとに修正をかけたのは秘密
学業での苦悩
私は計算機科学系の博士後期課程に在学中だ。幼稚園ぐらいから自然科学が好きだった私は、大学の先生になりたいと思っていた。そこそこの大学に進学し、研究を始めてからは多分同世代の大学院生平均のおそらく数倍は英語主著論文を出した。ここだけ見ると自慢か?なんだか順風満帆に見えるが、という感じだが、私は自分がいつ無能とバレるかいつも心配している。
たしかに論文は書ける。だが、こいつは発達障害とそれに付随する鬱で授業に行けず単位を落としまくり、1年留年している。同じころ、同世代の計算機系で凄いやつらは、ハッカソンだのアプリ開発だの競技プログラミングだのをやっていただろう。自分がやってきたことといえば、治療と人生の本筋には役に立たない趣味、とりとめもない思索と読書にすぎない。知識を蓄えるのも、なんとなく凄そうに見せて根底では自信のない自分を守るためのことだったのかもしれない。得難いものを本当にたくさん得た時期ではあったし、そこで関わった人たちには感謝してもしきれないが、その間に最強の奴らに技術力を引き離されている。
そこを見透かされたのかはわからないが、去年、大学研究者の登竜門である某特別研究員に不採択となってしまった。採択ギリギリラインの勝負ではあった。が、しょせん「偽物」の自分には、学部あるいは小中高からモノを作ったりコードを書いたりしてきた「本物」には勝てないのだと。そう思って自信喪失していた。
そんな感じのいろいろ、特に学業への自信のなさがトリガーとなり、最近の私は引きこもりがちになり、長らく離薬していた抗うつ薬に復薬した。昼夜は逆転し、まあまあ破滅的な生活になってしまっている。
わたしの、わたしのなりたかったわたし
そんなときにこんな歌聞いたら泣くに決まってんだろ!!!!!!
めちゃくちゃ名取と自分を重ねてしまった。
これは名取さなの治療であると同時に私の治療でもあった。
名取も、誰かの手を煩わせてるような気がしたり、誰も怒ってないのにこのままじゃダメな気がするときがあるんだね。それなのにこんなに頑張ってくれて…。私だって、『なれるはずもない夢』のことを絵空事じゃなくしたい。いまはちょっと立ち止まってしまっているけど、「本物」じゃなくても「わたしのなりたかったわたし」を目指して歩みだしてもいいよな…。
思うに、名取の苦手そうな仕事が私も苦手な節がある。
たとえば名取はいつかの配信で、雑な依頼文入れたら丁寧な依頼文になって返ってくるAIが欲しい、みたいな話をしていたが、私もひとに送るメールを書くのが苦手で、すごく時間がかかってしまう。ChatGPT使おうな。
あと最近の配信で言っていた「ウソの締切」は私も近いものをやっている。本当の締切にマージンがないとマジ終わる。同人と学問を両方やると締切まみれの人生が出来上がる。こういう共感が積み重なってるから、名取が頑張ってくれていることの重みを強く強く感じる。そして、これから何か苦手なことをに手がつけられないときに「名取はやってる」と思うことができるはずだ。きっと今後はこうやって心の中の名取が支えてくれる。
……とはいえ、なかなか変われないのもそうだ。なんとかしたい。本当に。じゃあこんなに長い駄文を書く暇があるならD■2の申請書とメール書けよ
終わりに
「さなのばくたん。- ハロー・マイ・バースデイ - Powerd my mouse」、
掛け値なしに素晴らしいイベントでした。
名取さなさんが本当に本当に大好きになりました。
ほかのせんせえに比べると細くはあったかもしれないけど、追いかけてきて良かったなと心の底から思いました。
感じたこと、受け取ったメッセージをずっと大切にしたいです。
また、このイベントの制作に関わった全ての存在にリスペクトを捧げます。
遅刻にも程がありますが、さなちゃん、お誕生日おめでとうございました。
参考文献
本文で直接引用してないWebページと引用した/脳内で混ぜ混ぜしたので直接は引用してない本(仮にもDの学生なら引用の様式をまともにしろよ)
考察1:
考察3:
円城塔「Self-Reference ENGINE」
解説部分(佐々木敦)を結構参考にしている。
ルートヴィヒ・ヴィトゲンシュタイン「論理哲学論考」
言わずと知れた20世紀最重要哲学書がひとつ。
野矢茂樹「ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』を読む」
論理哲学論考の日本語解説で一番有名なやつだと思う。論考の独我論は論考の本筋に内在する問題というよりウィトゲンシュタイン自身の他者へのかかわり方に由来するという主張の部分を引用。
考察4:
和泉悠「悪い言語哲学入門」
記述説と指示説のあたりを参考にした。
この怪文書を読んで言語哲学に興味をもった奇特なせんせえがいたら、
ぜひこれをおすすめする。悪口を切り口に言語哲学のトピックに切り込む。
名取の煽りがだいたい「わるくない」のはなぜか考えるのに使える。
ソール・A・クリプキ「名指しと必然性」
指示説の超重要著書。
この本ではないが、可能世界意味論を構築したのはクリプキなので、世界線がどうとか言ってるオタクは全員クリプキの影響を受けている(巨大主語)
ネルソン・グッドマン「世界制作の方法」
あんまり参考にしたとは最終的に言い難い感じになってしまったが、創作や学問やるオタク、仕事で何かデザインするオタクは絶対読んだ方がいい本。
名取さなのバーチャルYouTuberとしての「姿勢」がどう好きか説明するとき、この本の概念を使って、
「世界制作者として、より正しいヴァージョンの制作に対して真摯だから」
だと言いたくなる。私の好きな「何か作るひと」へは大体そう言える。
円城塔もグッドマン好きらしい。めちゃ納得。私見だと多分ブルアカの制作陣も影響受けてる
後日談
この記事の5割ぐらいが書けてきたときに、この雑談配信を見た。
こんな異常な記事を書いているのに、まるで魔法にでもかかったかのように、私はいつも通り、ふつうに、変わらずに、ゲラゲラ笑っていた。
「ガキは寝ろ!!!!!!!!!!」でそうそうこれだよな、って思って、最高…って口走っていた。
配信が終わって、自分の受け取り方の変わらなさに逆に驚いてしまった。
驚いた後に心底安心した。
あのイベントを見て異常な記事を書いてるときでも、名取のことを可愛くて気安い、憎らしくて優しい友達のように感じることができるのだと。
私は名取さなを応援していても正気のままでいられるのだと。
そして、自分は『ゆびきりをつたえて』の約束、その証人となることに、
ほんの最低限は、値するのだと。そう思えた。
初めてコメントも書いてみた。
「おはようござい🍆」と「おつかれさな~」、あと何個か特に面白みのないコメント。
4年8か月かけて、私はやっと「せんせえ」になった。
どうか、なった、と言わせてほしい。