#思い出の夜
「 #書いてつながろう 」
外出自粛でなかなか外に出られず、たくさんの暗い情報で頭がいっぱいいっぱい。
こんな状況だけど、みんなで「書く」ことでつながったり、楽しい習慣になったらいいな。
そんな企画に賛同したメンバーで、毎週テーマに沿って投稿しています。
参加したい方がいましたらコメント欄にてご連絡ください。
今週のテーマは「#思い出の夜」です。
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息子の思い出し笑いが増えている。
3月から学校にも行けず友達とも会えない日が続いているからか、記憶のアーカイブをたどりながらニヤニヤしている。経験の少ない子供がリモートで体験できることにはちょっと限界がある感じもするけれど、自分なりに楽しみを見つけているようだ。
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15年くらい前の冬、中国からのお客さま10名ほどを迎えた懇親会でのこと。両社のお偉いさんも参加し、一番若かった僕が幹事として場を仕切った。
お土産でもらったマオタイ酒を会場に持ち込み、乾杯(カンペイ)で盛り上がる。
僕たちは50度をゆうに越す芳香の強いマオタイ酒をつがれては一気に飲み干し(これが中国式の乾杯だ)、彼らは返杯として日本酒を飲み干す(なんかズルくないか)。
それが何度も繰り返されるものだから、このままでは会社の偉い人たちがつぶされてしまう、と悟った僕は代わりに杯を空ける役を担った。
無事、20時過ぎに宴も終わり、支払いを終え、領収書をもらい、コートを着て、彼らをホテルまで送り届け、帰宅のため地下鉄に乗って・・・・・
目が覚めると、激しい頭痛に視界もおぼろげ。僕は、どこだかわからない駅のホームのベンチに長いこと横たわっていたようだった。
妻へ電話するのも、自分がどこにいるのか理解するのも、自宅方向の地下鉄に乗るのもやっと。地下鉄からは最終を告げるアナウンス。
フラフラになりながら、いつもの改札を抜け、迎えに来てくれた妻に身体をあずけ、道すがら壊れたラジカセのように嘔吐リバースを繰り返す。
帰宅し、脱いだコートは上質な上司のものだった。
風邪も引かず無事に生還できたのは、僕のサイズよりふたまわりは大きいカシミア100%を寝袋にしていたおかげだったかもしれない。
この頃からすでに僕は、命を守るためのステイホームを実行していたのだ(駅のホームだけど)。
翌朝、呼吸のたびにマオタイ酒の残り香を感じながら出社すると、コートの持ち主は体調不良でお休みだった。
同席者に聞くと、帰る頃すでに酔いつぶれ、コートを着る間もなくタクシーで強制送還されたらしい。
僕が犠牲になってでも上司を守るという作戦は見事に失敗したけれど、コートを取り違えてしまった失敗は、見事にもみ消された。
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妻の記憶も借りながらこれを書いているんだけど、ただでさえステイホーム中の僕のだらしなさにうんざりしているのに、過去の僕のだらしなさをも蘇らせてしまった。
妻の思い出し怒りが増えている。
思い出は、感情も連れ出すのだ。
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来週のテーマは「 #ちょっとおめでたい話 」
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