ウーフィッッイ美術館 その3
★西から風が吹いてきたら 春 ボッティチェリ ウフィッッイ美術館
『春』 1482年
この作品はあまり絵画に興味のない人でもたぶん目にしたことがあると思います、美術の教科書にもこの作品は紹介されていると思います、ルネサンスの代表的な画家『ボッティチェリ』の数ある作品の中でも代表的なものです。
この作品は『ロレンツオ・デ・ピエルフランチェスコ・デ・メディチ』のために描かれたものといわれています、このロレンツオは『豪華王ロレンツオではなく』豪華王のまた従兄です。彼が実質的な『ボッティチェリ』の保護者です。
この作品は、私の記憶の中では、「イラスト的な美しい女性がたくさんいて踊っている」、ぐらいの印象でした。
しかし、「ルネサンス」関係の本や資料をあたっていると、この作品のことに触れているものがたくさんあることに気が付き、「ただ、人がたくさん平面的に並んでいる絵」ではないことに気が付きました。
この作品の出典は『アニョロ・ポリツィアー』作の、花で飾られた『三美神』と『フローラ』を追いかける『ゼフュロス』のいる庭園の様子を叙述した詩編だといわれています。
西欧人にとって西からやってくる微風は、冬の終わりを告げる嬉しい春の風。
この作品の登場人物をご紹介しましょう。
左の一番 西風の神『ゼフュロス』 二番 花の女神『フロリス』 三番 花の女神『フローラ』 四番 『ヴィーナス』 五番 『三美神』 八番 『マーキュリー』
なぜ最初に西風と書いたかというとそこのこの作品の肝があるからです。
上の画像をご覧ください、一番左の青い奴がいますが、この青い奴が『ゼフロス』西風の妖精です、そしてその『ゼフロス』に捕まっている美しい女性がいます、この女性が、『クロリス』この女性は花の精、西風から逃れようと抵抗しています、しかし、捕まってしまい、西風の妻になります、「春の予感」西風に捕まりすでに口からは花が零れ落ちています。
本当に『ボッティチェリ』の書く女性は多少無機的ではありますが綺麗ですね。
そしてその口から零れ落ちた花は、次の春の女神『フローラ』の衣服の花と変わっていきます。
そして『クロリス』の腕をさらに拡大してみるとなんとタトゥのように彼女の腕に花が浮かび上がります。
さらに、指先を見てもらうと指先から植物が萌えだしてきて、『フローラ』の服の模様になっています。
★ゼフュロスは愛の風 ボッティチェリ ウフィッッイ美術館
欧州では、西風が吹くと春になり、『ボッティチェリ』の『春』は春になり冷たく、固い大地にに温かい西風が吹き渡ると、大地に芽吹きがあり、やがて、草や花に大地が覆われます。このことを喜びと共に『ボッティチェリ』がこの絵で歌い上げていることを書きました。
違う側面からこの絵を見て見ましょう。この絵の主人公はだれでしょう、この絵の主人公は、左から四人目の、一段高く描かれている女性この人だといわれています。
その女性は『ヴィーナス』です。その証拠に、『ビーナス』の上にはキューピットがいます、目隠しされたキューピットは、矢をつがえています、そしてその矢の先は『三美神』のほうを向いています。三美神は『愛』『慎み』『美』を表す女神たちです。
この『ビーナス』が、ここに登場している女神や、『マーキュリー』を引き連れていることになります。
ここまで来て、私には、左三人のメタモルフォーゼと『三美神』と『キューピット』と、『マーキュリー』の関係性がよくわからないのです、『愛』に言い寄られた『処女』が、樹木に変身する作品はよく目にします、そして『ヴィーナス』と『キューピット』は定番ですし、『キューピット』と『マーキュリー』、『キューピット』と『三美神』も付き物です。
しかしそのよく目にするものがごちゃごちゃとこうして目の周りに並ぶと、よくわからなくなってしまうのです。
この絵の題材は『ルネサンス』のユマニスタ時代によく描かれたギリシャ神話です、しかしこの絵を描いた作りは中世の宗教絵画の書き方にのっとっているといわれています。
中世の宗教画では、中央にアーチがありその下に聖母子が描かれ左右には、天使や聖人が描かれます、聖母子などは一段高いところに描かれます。『ルネサンス』になると、遠近法が使われ、遠景が描かれ、人物なども立体感を持つようになります。
しかしこの絵を見る限りにおいては、平面に登場人物が並んでいます。
この絵は、私のような素人ではなく、たくさんの研究者がたくさんの解釈をしているようです、次にはもう少し勉強をして、この謎ときに挑戦してみようと思います。
関係性はどうであれ、この絵自体を何も考えずに眺めると本当に美くしいです、それぞれの登場人物の浮かべている表情も変化に富んでいます、『フローラ』『ヴィーナス』『マーキュリー』以外は薄物の白い衣装をつけていますが、その広がり方、ふわっと感、ちょっと透けてドキッとするインパクト、どれをとっても素晴らしいですよね。