泣いていたのかもしれない
2022年11月、車を手放した。
理由はシンプルで、「そんなに使わない」という結論に至ったからだった。
一年間という短い期間だったが、思えばVitsとは様々な景色を共にしてきた。
雨の日にはわざと車内にこもって読書していた秋、横浜までフラれにいった冬、箱入りのミスドを買って桜を見に行った春、那須どうぶつ王国まで行くも休館日だった夏…
果たしてVitsは車として幸せだっただろうか。
Vitsを買い取り業者の工場まで運転する際、いつものように車内BGMをシャッフルすると「君が思い出になる前に」や「いつか」など別れの歌ばかりが流れてきた、Vitsはあの時泣いていたのかもしれない
拝啓 Vit'sさん
車の保険会社さんに免許証の色を聞かれて「白いです」と即答していた僕も、あのころより少しは大人になりました。
以前は気軽に買いに行けた灯油も米も、こんなに重いものだったのかと驚きます。
なにを乗せていたって風のように走れたことを、今では上手く思い出せません。
僕を追い越していくのは冷たい木枯らしだけです。それではまた、どうか元気で。