ある一日

6:10 
変な夢を見て目覚める。

薄暗い曲がり角を過ぎると、10tトラックサイズのバッファローに轢かれかけ、バカヤロー!と叫ぶ夢。一体何を示唆しているのか恐ろしい

薄暗い路地は人生に感じている閉塞感、巨バッファローはあなたの抱える不安を表しています。しかしそれを間一髪でかわし罵声を浴びせるさまは、不安に立ち向かう不屈の精神の象徴と言えるでしょう。

とかだったらいいな



7:30 
通勤 朝の大宮駅には魑魅魍魎が跋扈している。
隣に座ったおじさんは上半身すべてが黄色一色のニット、下半身が深紫のゆるっとしたワイドパンツをはいていた。焼き芋の妖精とかだったのかも



7:50 
いい本を読んでいる。海外旅行を楽しみにしていた老人が出発目前で亡くなるも、旅行への未練で成仏できず、浮遊霊の姿で憧れのアラン島を目指す。という話だ
霊体では乗り物に乗れないため、憧れの地に向かいそうな人々に乗り継ぎ乗り継ぎ目的地を目指す。
憑りついた人々の暮らし、挫折、挑戦を眺めていくうちに、徐々に目的への野望が薄れ、自らの生きた記憶に思いを巡らせる。そうして静かに消滅していく姿には思わず涙がこぼれそうになった。
イヤホンから感情のピクセルが流れていなければ危なかった。ありがとう、岡崎体育。



8:20 
職場の近くに「神楽坂レシート祭り」という旗を見かける。なんですかその珍妙な祭りは

想像するに、それはレシートの長さを競う大会。
レシートの長さは煩悩の長さに等しい。
煩悩を持つことは必ずしも悪ではなく、望むものを得るためには手を伸ばして求めなければならないという矜持を含む。 強く求める力を神に示すことで、商売運や金運にまつわる加護を得るのだ。

忘年会の焼肉のレシート、ドン・キホーテで買ったビンゴ大会の景品のレシートなど錚々たる強者が集い、長さによって点数が付けられる。
切れかけで両端がピンク色になっているレシートは得点も二倍だ

神楽坂という地名なのだからきっと祭りにおいては神楽も行われる
神主の振るう御幣についた紙垂も、もちろんレシートだ。



12:00 
友人とレンタカーを借りて旅行にいこうと話す。好きなアニメの主題歌を歌いながらドライブし、無意味にパーキングエリアに寄っていらないガチャガチャを回そう。むろん運転は自分だ
学生の頃はあんなに毎日運転していた車の乗り方も、しばらく乗っていなければ忘れてしまう。
確か右がアクセル、左がブレーキ、両方同時に踏むとスクリーンショットだ



16:00 
大体このくらいの時間から「さて今日も頑張りましたね、やれやれ。」という空気が流れ始め、エンディングが流れそうな空気になる。定時まであと2時間もあるのに。
上司が深刻そうな顔で自席に歩み寄り、怒られるのかと思ったらブラッキーのオススメ技構成の話をされた。うちの子はどくどく・めいそう・つきのひかり・あくのはどう です。
性格はずぶとい 飼い主に似たか


19:30    
帰宅  マフラー、コート、ジャケット、ネクタイ、ワイシャツ、と、一枚ずつ脱いでいくと、「社会人」から「自分」に戻っていく心地がする。最近はまっている実況者のポケモン実況を聴きながら夕飯を作る。床の隙間の汚れをウォッチ。可愛い可愛いね


22:30 
書き出してみると一日中愚にもつかないことを考えて過ごしている。思えば幼少期からずっとそうだった。誰も来ないような場所でぼーっと考え事をするのが好きで、皆がサッカーをやっていても一人で裏山で過ごしていた。先生も心配しただろうな、今思い返すと申し訳ない

そんな内向的な子供だったので、一番好きなのはかくれんぼ。
一度友達の家の屋根裏にある真っ暗な空間に身を潜め、誰にも見つからなかったことがあり、得意な遊びで勝利を収めた栄光の記憶として脳裏に刻まれている。

ただ隠れたところまでは覚えているが、見つけてもらった記憶がない。覚えてないだけで見つけてもらったのか、自分から出たのか、
もしかしたら今もあの屋根裏で、見つけてもらうのを待っているままなのかもしれない

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