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エッセイ(4) キリギリスの夏

夏が大好きだ。

ここ何年は猛暑続きで、体調が芳しくない時もあったが、夏が好きだ。
泳げないので、プールにもビーチにも行かないが、夏が好きだ。
子どもの頃、遊びすぎて、夏休みの宿題を新学期になってから始めたぐらい、夏が好きだ。

なぜに夏が好きなのか。

東北育ちだから、長い冬の後の春は、喜びしかない。
秋はお祭り、おいしい食べ物がたくさんあるし、旅行シーズンでもある。
冬の寒さは苦手だが、雪が降るとうれしい。

で、夏だ。

イソップ童話「アリとキリギリス」は、夏の過ごし方の違いが、冬の暮らしに影響するストーリー。
このお話の教訓をことわざにすると、働かざる者食うべからず、備えあれば憂いなし、転ばぬ先の杖、など、皆さんに好まれそうなものがどんどん出てくる。
日本在住のほとんどの方々は、アリさんのようにたくさん働いて、厳しい冬の時代に備えていることだろう。
キリギリスタイプのわたしは、冬の時代のことをほんのり想定してはいるが、アリさんのようにきっちり働いていない。
遊ぶ金欲しさに、仕事をしているからだ。

簡単に言うと、優先順位が違うのだ。
遊びやレジャーより、仕事・家事・育児などを優先するアリさん。
何よりも、遊び全般を優先するキリギリス。

そんな真面目なアリさんたちも、夏は少々遊ぼうとする。
キリギリス寄りになってくれる。
仲間が増えた氣がして、ちょっとうれしくなる。
夏独特の、なんとも言えない開放感を味わおうよ〜みんな〜!
とキリギリスはシャウトするのだ。

もう9月に入ったので、夏が終わったと言っていいのかもしれない。
ちょっと涼しくなった夜、秋の虫の声も聞こえてきた。
アリさんが仕事に戻って、キリギリスは寂しくなったかというと、そうでもない。
キリギリスは、この晩夏を惜しみつつ楽しんで、秋冬を迎える。
いや、キリギリスらしく、わたしの夏はずっと続くのだ。

アリさんに何か言いたいことはないかって?
毎日お疲れ様です。
今までもこれからも、仕事に家事に勤しんでください。
アリのままにね。
……なんちて。

ー2024.9.9ー


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