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(ミニ小説)男の娘・はじめての振袖体験4
若手アシスタントさんに手際よくウィッグを編み込み、着物向きのアップヘアに大ぶりのヘアアクセサリーと小ぶりのヘアアクセサリーを1個ずつ付けされる。
他のスタッフさんも寄ってきて振袖女子にされている僕を品定めしている。
「やっぱりアップヘアにはこっちの髪飾りの方がいいわね。」
「かわいー、メイクしてほんとの女の子になったみたい。」
「色白でまつげも長くてほんと女の子だね。」
緊張してるのもあるが「まな板の鯉」でじっとしている僕にそれぞれ女性スタッフさんが思い思いの感想を言ってくる。
ヘアメイクできたのでいよいよ着物の着付けに取り掛かり肌襦袢の上から長襦袢を着せられ、襟を合わせる。
そして何枚かのストックの中からサイズに合うものを取り出してきてこれまた女性スタッフ同士で何を僕に着せようか「品定め」をしている。
赤や白、パステルカラーと何枚もの振袖をその都度羽織らせてはあれこれ意見を女性スタッフ同士で言い合って、あれが似合う、これが似合うと話し合っている。
「よし、これにしよう。」
「いいねえ、わたしもこれがいいんじゃないと思ってた。」
そう言って2番目に羽織らされた白の振袖を再度袖を通し、着せられていく。
「この白のお振袖って辻が花って云うタイプの振袖でちょっぴり凝ったつくりになってるので他の振袖と比べてお代高めなんだけど、あなたに一番似合ってそうなのでこれにするね。」
そして「辻が花」の振袖に合う金色の袋帯を華やかに結ばれ、帯揚げ・帯締めに帯飾りもして着付けは完了した。
じっとしたままで言われるままに着付けされていた僕に目を閉じたまま大きな鏡の前に移動するように促され、「じゃあ目を開けて」と言われそっと目を開けると・・・・・
「えっ、ほんとにこれが僕・・・・・」
と大きな鏡に映った自分を見て言葉が出ない。
きれいにメイクされ、大小2つの髪飾りを付けられたアップヘアに成人式で見るような白の振袖を着て恥ずかしそうにしている「女の子」がそこに居た。
「わあーほんとにこの白の振袖お似合いね~」
「色白で細面でなで肩で、背も高くてすらっとしててほんとに素敵ー。」
「振袖着てみて大正解ね!。これなら成人式はスーツにネクタイより振袖がやっぱり絶対いいんじゃないの?」
などとお店のスタッフさんがあれこれと言っている。
「でもほんとに振袖よくお似合いねー。ねえねえ、ほんとはもともと女の子じゃなかった?。ふふふ。」
大きな姿見の前でそんな風に言われながら振袖姿の僕を見ているほんとに自分は元から女の子じゃなかったのかなと云う風な錯覚に襲われる。
「それでまだお名前聞いてなかったけど、なんて名前?」
「は、はい つ、司(つかさ)です。司会の司と書きます。」
「じゃあちょうどよかった。今からあなたは女の子らしくひらがなで『つかさ』ってお名前にしましょうね。つかさお嬢様。」
「お、お嬢様??」
「そうよ、うちのお店ではお客様が店内に入られてから出るまでスタッフ全員でお客様を○○お嬢様ってお呼びする習慣にしているの。」
「お、お嬢様ですか・・・・・」
「ええ、どこからどう見てもこんなに振袖の似合う女の子になったんだし、ほんと『お嬢様』よ。」
(つづく)