(連載小説)秘密の女子化社員養成所②~驚愕の離島での初日~
いよいよ小瀬戸島に出発の朝、なんと会社の寮まで現地まで同行する人事部長の鳥越 瑞穂(とりごえ みずほ)が黒塗りのハイヤーに乗って悠太を迎えに来た。
これから悠太は小瀬戸島へ向かうのにまずは羽田空港へ行くのだが、普通なら自分一人で電車やバスで空港へ行ってそこで誰かと待ち合わせと云うところ、今回は寮までお迎えの車が来てしかも人事部長が一緒と大変異例だった。
人事部長は出張規定には役員待遇に近いものがあるので会社がハイヤーを用意するのは分からないでもないが、それに自分が一緒に乗っかって行くだなんて一体なんなんだろう?・・・・・。
そんな事を考えているうちにハイヤーは羽田空港に到着し、降りて人事部長の後ろについてしばらく歩いているとこれから小瀬戸島での研修に向かう別の社員たちが悠太と同じように彼らを連れてきた本社の社員と一緒になって待っていた。
「鳥越部長、おはようございます。」と挨拶するエスコート役の本社社員の後ろには2名の男性社員が控えており、恐らくこの2名が自分と同じ「研修生」なのだろうと悠太は察した。
そしてチェックインを済ませ、ボディチェックを終えた一行は搭乗ゲートへと向かっていた。
「それにしても3名とも無事遅刻せず、問題もなく来れてよかったわ。」
「そうですねえ。何といっても小瀬戸島に行くまでと初日が一番大事ですからねえ、ふふふ。」
そんな風に話している人事や研修施設担当の社員の後ろを悠太を含めた3人の男性社員は緊張のせいか半ば神妙な面持ちで搭乗口へと向かっていた。
ただ前後をその社員たちに囲まれるような感じで悠太たち3人は歩いていて、先程の自分はただの平社員なのに寮までハイヤーが迎えに来たりした事をはじめとしてまるでVIPをガードするようなある種の仰々しさに幾分の違和感を覚えていたのもまた事実だった。
搭乗ゲートに着くとまだ少し時間があるようで搭乗口付近のベンチにそれぞれ腰掛けて搭乗開始を待つことになった。
ただここでも一緒に小瀬戸島に向かう本社の担当社員がまるで悠太たちを監視するように少し離れた場所から睨みを効かしつつ見ている。
しかし退屈してきたのかそんな事はお構いなしと云った感じで3人の男子社員のうちの一人が「ども!。俺、横浜支店営業課から来た森野 純平(もりの じゅんぺい)っす。もしかして自分たちも小瀬戸島へ長期研修に行くって事なのかな?。」といかにも軽くてチャラい口調で話しかけてくる。
朝からこのチャラい感じは勘弁して欲しかったけど、この言葉をきっかけにしばしお互いの簡単な自己紹介タイムが始まった。
悠太は「森野純平」と云う名前を聞いて確か横浜支店の営業担当者の中でも好成績をコンスタントに残している若手社員ではなかったかと思っているとやはりそうだった。
「いやーなんでこの横浜支店の営業課でもメインメンバーの俺が”長期研修”なのかワケ分かんないんだけど、席はそのまま横浜支店営業課に残しておいてくれるって言うしさ、ま、会社として営業成績の優秀な俺に対してたまにはゆっくりして来なって云う一種のバカンス的な配慮じゃね?みたいな事でありがたく参加させてもらってるんでヨロシク。」
と純平が自分の言いたいことを一気にまくしたてるように言うと、今度は悠太と横にいるもう一人の男子社員に「ところで自分たちはなんで長期研修に呼ばれたワケ?。」と話を振ってきた。
そう言われ「いやー・・・・・自分でもよく分かんないんだけど上司に言われたもんでさあ・・・・・。」とあいまいで不安そうに答えた悠太に続けて隣に座っていた若手男子社員は本社宣伝広報室の安藤 涼介(あんどう りょうすけ)と名乗った。
そして「僕は直属の課長からは本社勤務と違った場所で環境を変える事でリフレッシュしたり、付属の研究施設でやってる新商品開発について実地研修して来いって言われたんだよね。」とこちらもやや不思議そうに自分でもよく分からないと云う口ぶりで涼介は言うのだった。
そうこうしているうちに定刻に離陸した悠太たちの乗る飛行機は秋晴れの空の元を順調に目的地に向けて進み、ちょうど窓側の席だった悠太は何気にふと外を眺めてみると雲一つない快晴の下にきれいな景色が広がっていた。
1時間少々のフライトで飛行機は着陸し、到着ロビーに出ると「(株)ビューティービーナス 小瀬戸島長期研修 ご一行様」と云うボードを持った現地の社員が出迎えてくれ、人事部長をはじめとした付き添いの担当社員と一緒に悠太たち研修生は迎えの社用車にて今度は小瀬戸島に向かうフェリーの出る港へと向かった。
空港を出ると自然がいっぱいと云った感じの森の中を抜け、車は港のある南の方角に向かっていたが、さすがに東京とは違ったのどかな風景が車窓から見て取れたせいか悠太は少しだけ緊張が取れて和んだ気持ちになった。
そして車は30分程走ると海沿いに出て、小瀬戸島へのフェリーが発着する港に到着した。
一旦車から降りると目の前には瀬戸内海に浮かぶ島々の景色が広がり、またどこからか吹いてくるそよ風が潮の香りを運んできてくれてこれがまた心地よい。
桟橋にあるフェリーの待合室に入るとやはりここでも「本社の皆様、お疲れ様です。」と挨拶するビューティービーナスの女子社員が居て、その後ろには悠太たちと同年代とおぼしきスーツ姿の男子社員が2名いた。
「お迎えと送迎ご苦労様だったね。これで研修生は全員無事揃ったみたいでとりあえず一安心だわ。ふふふ。」と人事部長が言うのを横で聞き、やはりこの2名の男子社員も自分たちと同じ小瀬戸島に向かう研修生なんだと思っているうちにフェリーの出発時間が近づいてきたので車ごと乗り込んだ。
ほどなく出航したフェリーは本土のこの港から約20分足らずで小瀬戸島に到着するとのアナウンスが流れる中、悠太たちはのんびりと瀬戸内海の景色を見ながら船室のベンチに座っていると純平が先程港で合流した二人にも朝の羽田空港と同様に話しかけていた。
横で聞いているとそのうちの一人は大阪支店で製品の原材料を調達したり、西日本にある原材料を生産している契約農家や企業の管理・調整をしている部署にいた園田 大河(そのだ たいが)と言い、もう一人は名古屋支店で営業を担当していた槇原 里志(まきはら さとし)と名乗った。
ただどうしてこの小瀬戸島での長期研修に自分が選ばれたかと云う点については「いやあ・・・・・なんでだろう?・・・・・。」とか「自分でもなんだかよくわからない内に内示が出ちゃってて・・・・・。」と言うばかりでやはりこの二人も悠太たちと同じく理由はよく分からないようだった。
そしてフェリーは予定通り20分足らずで小瀬戸島に到着し、生活路線でもあるので島への用務客をはじめ、本土からの郵便物や宅配便などの荷物を降ろすのに続いて悠太たちが下船すると「長旅お疲れ様です。お待ちしておりました。」とビューティービーナスの制服を着た数名の女子社員が出迎えてくれた。
港から研修施設までは少し距離があるとの事なので悠太たちは先程空港から乗ってきた社用車に再び乗り込んだ。
しかし車に乗り込む横でなぜだかメイド服を着た数名の女性がビューティービーナスの現地社員に「ほら、さっさと人事部長のお荷物をお持ちしなさい!。」等と高圧的に言われている。
それにフェリーで運ばれてきた施設宛の荷物や郵便物を「ぐずぐずするんじゃないの!。早く!。」とこれまた現地社員に怒鳴られながら軽トラックに積み込んでいるのを見てそのメイド服と云ういで立ちもそうだし、怒鳴られて怯えながら荷物を運ぶその姿に悠太は穏やかでのどかな感じのこの島にはそぐなわない違和感を覚えていた。
5分程坂道を登ると「(株)ビューティービーナス 小瀬戸島研修所・保養所」と書かれた門をくぐり、正面玄関に車は到着した。
玄関には「祝 第5期長期研修 入所式」と書かれた大きな立て看板も立っていて、その「祝」の文字を見て長期研修は会社にとって「お祝い事」なのか?と思いながら車から降りるとちょうどお昼時でもあり、研修生5名はまずはウエルカムランチと云う事で施設内の大食堂に通された。
「おおー!、いい眺めじゃん!。」大食堂に入るなり純平がそうつぶやいたので外を見るとこの研修施設の本館の1階にある大食堂はさっき本土から渡ってきた穏やかな瀬戸内海を一望できるいわば「オーシャンビュー」的な造りになっていて、確かにいい眺めだった。
5人はその中でも一番窓際にあって「新研修生」と書かれた札の掛かっている席に案内され、座って待っているとメイド服姿の女性が「お昼のお食事をお持ちしました。本日は瀬戸内海で獲れました新鮮なお魚を中心とした和定食でございます。」と言いながら料理を運んできて、確かに言う通り刺身を始め見るからに新鮮でおいしそうな魚介類がお膳いっぱいに並んでいた。
料理を運んできたメイド服の女性は「どうぞごゆっくりお召し上がりくださいませ。」と言い、人事部長にも「ほら遠慮しないで食べていいのよ。」と言われた事もあり、5人はさっそく料理に箸をつけるとどれも見た目通りの美味しさでこれから始まる研修への緊張や不安を忘れて箸が進み、つい頬が緩んでいた。
昼食を一通り食べてメイド服姿の女性が運んできた食後のコーヒーを飲み終えてくつろいでいると大食堂の外側に併設されているテラス席で休憩しましょうと人事部長に言われた5人は誘われるがまま外に出てみると穏やかな瀬戸内海の多島美が先程の窓際の席以上に美しく映えていた。
見ていると島と島との間をフェリーや漁船に大小さまざまな船が行き交い、雲ひとつない晴天の空をカモメや海鳥がゆっくり弧を描く様に飛んでいる。
そして視線を海から真下の島の方に移せば色づき始めたみかんの木やよく手入れされた樹木や草花の鮮やかな色彩のコントラストが目に優しく、眺めている自分たちをちょうどいい強さの潮風が運んでくるこの島と海のいい香りと共に包んでくれる。
「小瀬戸島っていいところだな・・・・・。」と悠太を含めた5人の研修生はそんな風に思いながらこれからの長期研修への不安を忘れてのどかな気分でしばしこの風光明媚な景色を眺めていた。
そうしているうちにここの研修所所属の社員がやってきて「じゃあお楽しみのところ申し訳ないけどお昼ご飯も済んだ事だし、そろそろあなたたちの入所式をはじめるから”制服”に着替えて来て。」と言う。
5人はここでの研修生活に「制服」があると事前に聞かされてはいなかったが元々ここは会社の施設でもあり、周りの女子社員は普段一般職が着ている制服を着用していたのを見ていたのと、それに「研修」と言っても「会社の業務」の一環なのだから研修所用の制服があるのは当然だろうと特に何も思わず、それぞれが付き添いの社員と一緒に着替用の個室へと移動した。
まだ自分たちが滞在中に寝泊まりする部屋はこの入所式後に事前に送ってある個々人の私物の入った荷物を開いて整理するようにしてあるがまだ準備ができていないとの事で5人はとりあえず島外から短期で来た社員や出張客等が泊まる「ゲストルーム」に通された。
研修生にはそれぞれに指導役の担当女子社員が2名ずつ付き、その女子社員がゲストルームに案内してくれて悠太の担当の女子社員は桃田 麗子(ももた れいこ)と和泉 遥香(いずみ はるか)と名乗った。
遥香は女性にしては身長が高くて170㌢は越えている感じで、またスレンダーでスタイルもよく、軽くブラウンにカラーしたおかっぱボブの髪形がよく似合っていた。
麗子は遥香の接する態度や口ぶりからどうやらこちらが年長者か上役のようで、胸まであるストレートのロングヘアをなびかせ、メイクもそうだし遥香とのやりとりを見ていると全体的にシャープで「切れ者」と云った感じの女子社員に見える。
二人に連れられよくあるビジネスホテルのシングルルームのような部屋に入ると「じゃあ制服を持ってくるからその間に長旅だったし先ずはシャワーでも浴びてさっぱりしてね。あとまだ試作品なんだけどシャワーブースに置いてあるこの島特産の柑橘類で作ったシトラスの香りのボディソープで体を洗うのがお勧めよ。よかったら使ってみて。」と麗子から言われる。
悠太は自分ではまだお昼過ぎだし特にシャワーとかは必要ないかなと思ったのだが麗子から勧められた事もあり、ネクタイを外して着てきたスーツとワイシャツ、そして下着も脱いで全裸になってシャワーを浴び始めた。
試しに言われた通り試作品のボディソープを手に取って体を洗ってみると確かに柑橘系のいい香りがし、よりさっぱりした感じでシャワーを浴びていると「お待たせ―。”制服”が用意できたからシャワー終わってたら出て来て着替えてねー。」とドア越しに遥香の声がした事もあり悠太はバスタオルで体を拭きながら着替えの為にバスルームから出てきた。
しかし心地よい気分でバスルームから出てきた悠太だったが、目の前に置かれた着替えるための「制服」を見ると目を疑わずにはいられなかった。
「えっ・・・・・これって・・・・・。」
籠にきちんと畳んでおかれていたその「制服」はビューティービーナスの一般職の女子社員が会社で着ているベスト付のスカートスーツで、おまけに白のパンティとブラジャー、それに同じく白のキャミソールと黒のパンティストッキングまで一緒に置いてある。
「あの・・・・・これって何かの間違いじゃないですかね?・・・・・。」
さすがに女子用の制服が目の前に、それも女物の下着と一緒に「着替え」として置かれているのを見た悠太はいぶかしがるように言うと遥香が「そう?別に間違ってないけどなんで?。」と逆に不思議そうに言う。
「でもこれって女子社員の制服でしょ?・・・・・。僕は見てのとおり男子社員ですからちょっと違うんじゃあ?・・・・・。」
そう言う悠太に麗子は「間違ってなんかないわよ。これがあなたのこれからこの研修所で着る制服なの。それにここは”男子禁制”なんだけど聞いてない?。」と今度は目だけでなく耳も疑うような事を言い始めた。
「”男子禁制”ってなんですか?。だったらどうして男の僕がここで長期研修するように辞令が出たんです?。」
「だから簡単な話、あなたはこれから半年間ここで”女子社員”として女になって長期研修を受けるの。だってここは男子禁制なんだから女子社員でないと研修も滞在もできないのよ。そう云う事だから早く着替えましょ。」
「”女子社員として女になる”ってなんだそれ?・・・・・。」そう言われた悠太は目の前に置いてある女子社員の制服と女物の下着を前にし、更にここの施設は男子禁制だから自分は女子社員として女になりこの長期研修を受けるんだと言われて訳が分からなくなっていた。
そして訳が分からなくなり、戸惑いつつバスタオルを巻いたままの姿で立ちすくしている悠太に対し麗子が「ほら、入所式の時間が迫ってきてるじゃない。着替えれないんだったら無理やりでも着せるわ。ちょっと入ってきて!。」と言うと部屋のドアが開いていきなりジャージ姿の女性2名がヅカヅカと部屋に入ってきた。
その2名は今朝羽田空港から一緒に飛行機に乗ってきた見覚えのある顔で、確かビューティービーナスの女子テコンドー部と女子レスリング部に所属していると言っていた女子社員だった。
入ってくるなり一人は籠の中の女子社員の制服と女物の下着を手に取り、もう一人は悠太の巻いていたバスタオルを剥ぎ取ると「ほら、さっさとこれに着替えるのよ!!。」と威圧的に言いながら迫ってきた。
「だからこれは女子の制服だから僕が着るものじゃないって・・・・・。」
「何言ってんの?!。さっき麗子お姉様に言われたでしょ!。ここは男子禁制で女子のみが居られる場所だって!。それに自分で着替えられないんだったらあたしたちが着せてやるわ!。」
そうジャージ姿の女子社員が言うと麗子と遥香も加担して4人がかりで悠太に女物の下着と女子の制服を着せ始めた。
「やめて・・・・・女物を無理やり僕に着せるだなんて・・・・・。」
そう言って抵抗する悠太だったがさすがに4人がかりで押さえつけられているので身動きが取れず、また体育会系の女子社員はさすがに力も強くてあっと云う間にパンティとガードルを履かされ、ブラジャーをつけさせられた。
続けてキャミソールをかぶさせられるように着せられると先程付けたブラジャーのカップの中にパッドを入れられていた事もあり、少しだけ胸の辺りが女性の様に膨らんだ悠太の身体に4人は手分けして上半身にはブラウスとベストを着せ、下半身には黒のパンストを履かせた後にその上からタイトスカートを履かせた。
そして麗子が悠太の胸元にリボンタイプのスカーフを付けると「これで制服はOKね。じゃあ今度はメイクしましょうか。ねえ、自分でメイクとかできる?。」と聞いてくる。
「メ、メイクですか?・・・・・。」
「そうよ、お化粧とかした事ある?。」
「いえ・・・・・お化粧とか一回もした事ないです・・・・・。」と悠太は恥ずかしそうに答えた。
そんな・・・・・スカートを履かされその上メイクだなんて・・・・・と戸惑っていた悠太だったが麗子はそんなのお構いなしとばかりに「じゃあ今日はあたしがメイクしてあげるからこの子をそこの大きい鏡の前の椅子に座らせて!。」と言うと他の3人が悠太の手を引っ張って無理やり椅子に座らせ、そして動く事ができないよう革製のベルトで悠太の身体を椅子に縛り付けた。
さすがに「何するんです!。やめてください!。」と抵抗する悠太だったが「あなたこそ何言ってるの?。社会人の女性が仕事で人前に出るのにすっぴんだなんて恥ずかしいし、第一マナー違反でしょ?。それにお化粧した事なくて自分でメイクできないあなたにサービスでメイクしてあげるって言ってるんだからありがたく”どうぞよろしくお願い致します”くらいの事は言えば?」と麗子が威圧的に言う。
悠太は困り果て、4人に懇願するように「もう勘弁してください・・・・・女になんかなりたくない・・・・・。」と言うとその途端悠太の頬にいきなり平手打ちが飛んだ。
「バシッ!。」「痛っ!、何するんですか・・・・・。」
「あなた今”女になんか”って言ったけど、女性を馬鹿にしてるの?。うちの会社の今期のスローガン知ってるでしょ?。」
と更に頬に平手打ちをしながら麗子が言うと今度は遥香が「そうですよねー今の”女になんか”って云うのはちょっとヒドいですよねー。」と言い、続けて「今期のうちの会社スローガンは”目指そう・ジェンダーギャップの無い社会を、作ろう・ジェンダーギャップの無い会社を”なのに今のこの発言って完璧に会社の方針に反してるし第一セクハラですよねー。」と横ではやし立てるように言えば、ジャージ姿の2名の女子社員も「そうよそうよ!、何考えてるの!。」と言いながら今度は悠太の身体を強くつねるのだった。
「痛っ!・・・・・お願いですから叩いたりつねったりしないで下さい・・・・・。それにもう”女になんか”だなんて言いません・・・・・。」
そう痛みに段々と耐えられなくなってきた事もあり、再び懇願するように4人に対して言い、そしておとなしくなってじっとしている悠太に麗子は有無を言わさずメイクを始めた。
まず化粧水のひんやりとした感触が、そして乳液のねっとりとした感触も頬を覆うと下地クリームが塗られ、続けてファンデーションが悠太の顔に塗られていく。
そして麗子が悠太のメイクを鼻歌まじりに楽しそうにやっていると遥香が「よかったわねー。麗子お姉様ってこの研修所の中でも指折りのメイクの達人でね、そんな方にメイクしてもらえるってとっても幸せな事なのよ。うふふ。」と言うのだが、当の強制的にメイクをされている悠太にとっては全く幸せな事でもなんでもなく、精神的にも肉体的にも耐え難い苦痛でしか無かった。
「ああ・・・・・会社の長期研修って聞いてこの島にやってきたのになんで僕がこんな風にスカート履かされたりその上メイクまでされなきゃいけないんだ・・・・・。それに女になるってなんなんだ?・・・・・。」
そう思いながらもそんな風に言葉を思ったまま口にするとまた叩かれたりするのは目に見えていたので黙ってはいたが悠太の心の中は後悔と戸惑いでいっぱいだった。
失敗続きで仕事もそうだし、会社員としてやっていく事自体にも自信を失っていた自分に気分転換を兼ねた小瀬戸島の研修施設での長期研修と云う一種の温情のこもった辞令をいただき、実際に訪れてみると穏やかでのどかなこの島の風情にこれならやり直せそうだと気持ちも新たに研修生活への意欲が高まっていたところに「女子社員として女になるのよ」と言われ一転して強制女装と云う屈辱的な扱いを受けた悠太だったが、身体的にも精神的にも拘束されているこの状況ではもうどうしようもないと云う無力感も徐々に感じ始めていた。
そしてメイク中に目を閉じるように言われた悠太は言われた通りにそうしているとメイクがあらかた終わったようで今度は頭にウイッグらしきものを被せられてヘアピンで留められ、ブラシで髪を梳く感触がそのウィッグ越しに伝わってくる。
「僕・・・・・いったいどうなっちゃってるんだろう・・・・・。」そう思うものの目を閉じている事もあって周りが見えない分余計に不安な気持ちのままだったが「よし、出来たわ。じゃあ目を開けて鏡で女になった自分を見てみましょうか。」と麗子が促すように言うのでそっと目を開けてみた。
「えっ・・・・・これって・・・・・。」
するとそこにはまるで新卒で入社したばかりと云った初々しくてかわいらしい感じの「女子社員」が鏡に映っていた。
軽くブラウンに染めたストレートのセミロングの髪形に、顔にはほんのりとしたピンクを基調とした控えめで清楚な感じのメイクを施されているビューティービーナスの制服を着た鏡に映る「女子社員」はパッと目にも周りに居る麗子や遥香をはじめとした他の女子社員たちとまるで遜色ない「女性」に見える。
「どう?女になった自分を見て。」
そう麗子に悠太は言われると我に返った。そして自分が首をかしげると鏡に映っている「女子社員」も同じように首をかしげ、まばたきをするとやはり同じように鏡の中の女子社員もまばたきをする。
「もしかして・・・・・これが僕・・・・・。」
そうつぶやく悠太に「こらこら、こんなにかわいくて女らしくなってる子が”僕”だなんて事はないでしょ。”僕”じゃなくて”あたし”よ。”あ・た・し”。ねっ!女になった”悠子(ゆうこ)”ちゃん。」と麗子が言う。
「”悠子”?・・・・・”あたし”・・・・・。」
そう言われ益々悠太が戸惑っていると部屋のドアが開き、鳥越人事部長が入ってきた。
(つづく)