トワイライト・ウォリアーズを観てほしいってハナシ
みなまで言わなくてもわかっている。
「あー、大人数が入り乱れる迫力のあるアクションが観たいなあ」
「男たちの熱い友情を全身に浴びたいなあ」
「親から子へ、師から弟子へ何かが継承されていく話を味わいたいなあ」
きっとそう思っているはずだ。
私もつい先日まで同じ渇望を抱えていた。
なので、あえてこう言わせていただきたい。
「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」を観ずに、一体何をしているのかと。
キャラクターの魅力
あらすじやタイトルからもわかるとおり、この映画は「九龍城砦」を主な舞台としたアクション映画だ。
無秩序に建設・増築されたビルが密集し、イギリス・中国双方の支配を受けない治外法権の魔窟・九龍城砦(なんとなく「くーろんじょうさい」と読んでしまうが、これはいわゆるピジン言語なので「きゅうりゅうじょうさい」が正しい)。
これを再現したすさまじい規模のセットの中を、縦横無尽に駆け抜けるアクションが最大の見どころなのは間違いない。
しかしこの映画が素晴らしいのは、アクションとドラマの間に垣根がないことだ。
単にド派手で爽快感があるでは終わらない、誰が、誰を相手に、どんな思いで、どんな方法で戦っているのか。その文脈が積み重なっていくほどに、映画への熱中度が何倍にも増大していく。
それこそがこのトワイライト・ウォリアーズであり、この映画を勧めたいと思わせてくれる魅力の源なのだと勝手に思っている。
そんなわけで、ごく一部だがこの映画を彩る魅力的なキャラクターたちの話をさせてほしい。
陳 洛軍
物語はこの男が九龍城砦を訪れることによって動き出す。
かれは「持たざる者」だ。
家族も金も、密航者であるため家どころか身分証すら持っていない。
まさに流浪者だ。
その境遇を反映してか、彼の格闘は特定のスタイルを持たない。
周りにあるものは何でも利用し、無尽蔵にも思える体力で走る、跳ぶ、滑る、落ちる!
腕っぷしは強いが、本質的には「逃げて生き残る」ことに特化しているといえるかもしれない。
命とその日稼いだ金。それ以外に守るものなど持っていないのだから。
そんな洛軍は九龍城砦を訪れたことで、初めてやすらぎを得る。
この「生活」の描写が非常に良い。
普段は飲食店で料理を作り、油などの生活必需品を配達し、仕事がない日は友人と集まって麻雀をやったりカラオケに興じたり、食堂に集まって住民たちとテレビを見る。
劇的な展開こそあまりないものの、だからこそのリアリティがそこにあり、今までただ生きることに必死だった洛軍の素朴な人間性がそこで初めて顔を出してくる。
この映画にはいくつかのサイドストーリーがあるものの、メインとなるのは何も持っていなかった洛軍が、九龍城砦で何を得て、どんな選択をするかという物語だ。
あらすじにある「命を懸けた最後の戦い」が始まったとき、彼がどのような変化を遂げているのか。ここに注目してほしい。
龍捲風
かつて無法地帯だった九龍城砦の黒社会(マフィア)を一掃し、城砦に秩序を築いた偉大な男。それが龍捲風だ。
もちろんとんでもなく強い。
しかし真の魅力はそのやさしさと父性にある。
九龍城砦の王ともいえる立場ながら、普段の彼は理髪店の店主。
城砦内で誰かが問題を起こしても、拳を使うよりもまずは説教をする。
そんな、ある種好々爺然とした性格をしている。
そのやさしさは当然、主人公の洛軍にも向けられ、周囲のすべてを警戒していた洛軍も、九龍城砦での生活になじむにつれて徐々に心を開いていく。
この師弟愛もトワイライト・ウォリアーズの見どころである。
そんな無敵のいい男である龍兄貴が抱える葛藤と選択。
この結果が物語を大きく左右することになる。
洛軍が今作の主人公であるなら、龍兄貴はいわば裏主人公といえるだろう。
かつての英雄。新しい世代を見守る「古い世代」。
そんな渋かっこいい男の姿を観たければ、この映画は確実にその期待に応えてくれるはずだ。
信一
城砦福祉委員会副会長――言ってしまえば城砦を治めるヤクザの若頭みたいな立ち位置にいる信一は、城砦の若い世代のエースだ。
外からのカチコミなんかがあろうものなら、愛用のバタフライナイフを片手に真正面から特攻する恐ろしい一面と、休日に友人を集めてカラオケで歌う気のいい一面。これらが完全に地続きになっている。
完全に任侠の世界の住人だ。
当然、兄貴分である龍に心酔している。
しかしその師弟愛と、主人公である洛軍と築いた友情のはざまで揺れ動いた末に見せる表情。これをぜひ見てほしい。
ちなみに信一だけは劇場に行かずとも、公式で配信されている動画を観ればある程度どういうキャラクターかわかるので、是非チェックしてほしい。
夢小説か?
王九
コイツ何?
始めに言っておくと王九は敵側のキャラクターだ。
人格に褒めるべき点が本当に一つもないくらいの外道である。
しかし一点だけ。特筆すべきものをこの男は持っている。
めちゃくちゃ強いのだ。
文脈だのキャラクターだの、こまっしゃくれたことを言っておきながらなんだが、王九はただ強い。
たった一つの特徴だけで、この男は視聴者に強烈なインパクトを与える。
この手のカンフー映画のボスの中でおそらく一番強いんじゃないだろうか。
こいつより強いボスがいたなら、切実なお願いだが教えてほしい。その映画を観るので。
もしもスクリーンでこの映画を観たのなら、その人は少なくとも一度はこう叫ぶことになるだろう。
「硬直!」
おわりに
以上が映画本編を観て、特に気に入った4キャラクターだ。
もちろん彼らは登場人物の中のごく一部で、他にも魅力のあるキャラクターが何人も登場する。
80年代末期。香港の返還が間近に迫り、変わりゆく時代の中。
利権、因縁、信念などなど、数多の思惑が九龍城砦の中で交差する。
その激動の物語の行く末は、ぜひ自分の目で確かめてほしい。
他にも「かつての九龍城砦を再現したでっかいセットと、その中での人々の暮らしの生活感がすげえぞ!」とか
「現代の技術を用いたリアリティと、80年代的ワイヤーアクションの融合がたまらない!」とか言いたいことはいろいろあるが、これらはもっと詳しい人がもっと言葉を尽くして語っていると思うので割愛する。
公式のメイキングもあるぞ!
映画「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」は1月17日から全国で上映中!
今なら来場者特典でメイン4キャラクターのポストカードももらえるぞ!