社会的価値を金銭的に評価する指標「SROI」とは
社会的な活動や事業によって生み出される価値をどう測るか。この問いに答えるために開発された指標が、SROI(Social Return on Investment:社会的投資収益率)です。SROIは、社会的な変化を金銭的な価値に換算して、投入された資源と比較することで、社会的な効果を定量的に評価する方法です。この記事では、SROIの概要や計算方法、活用事例などを紹介します。
SROIの定義
SROIは、以下の式で計算されます。
SROI=社会的価値の総額 / 投入された資源額
「投入された資源額」は、実際の仕入れ額や人件費などを計上すれば計算できます。「社会的価値の総額」は、プロジェクトや活動によってもたらされるアウトカム(成果や効果)に金銭的な価値を割り当てることで求めます。金銭的な価値は市場価格や支払意思額などの金銭代理指標を用いて推定します。例えば、雇用創出による賃金の増加や税収の増加、健康状態の改善による医療費や社会保障費の削減などが考えられます。
調整因子
ただし、アウトカムには調整因子をかける必要があります。調整因子とは、プロジェクトや活動以外の要因による影響を除外するための係数です。例えば、雇用創出による賃金の増加は、プロジェクトや活動だけでなく、市場環境や個人の能力などにも依存します。そこで、プロジェクトや活動が雇用創出に寄与した割合を調整因子としてかけることで、過大評価や過小評価を防ぎます。調整因子は、ステークホルダーとの協議や先行研究などから推定します。除外する外部要因、調整因子としては以下のような種類があります。
死荷重: 当該プロジェクトがなかったとしても生じるアウトカム
置換効果: 当該プロジェクトで良くなった代わりにプロジェクト外で悪くなった分
寄与率・帰属性: 直接的なアウトカムに対して当該プロジェクトが寄与した割合
ドロップオフ: アウトカムが時間経過で低減する割合
SROI分析の手順
このPDFでは以下のように記されています。
分析のスコープと、キーとなるステークホルダーの特定
活動の効果(アウトカム)のマッピング
マッピングの手法としてロジックモデルやセオリーオブチェンジが使われる
活動の効果(アウトカム)の実証とその価値評価
SROI の算出
調整因子をここでかける
SROI 分析の報告ならびに組織への定着
SROI適用が難しい領域
これも上記のPDFに以下のように記されています。要は分析ステップの「ステークホルダーの特定」「アウトカムのマッピング」「調整因子の列挙」が無視できない範囲で事実上不可能かどうかという判断基準になっていると考えられます。
インプット, アウトカムの因果関係がはっきりしない
一つのアウトカムに多くの介入が同時に発生する
不特定多数のステークホルダーが関わるもの
当初の分析の枠組みで想定したステークホルダー波及効果が主たるインパクトのもの
インパクト加重会計との共通点・違い
共通点は両者とも社会的インパクトを金銭的価値として定量的に評価できる点です。
違いは、SROIは費用対効果として一つの数字が産出されるのに対し、インパクト加重会計は会計なので項目が細かく分かれており、分析のために既存の会計の手法が適用可能な点です。そういった意味ではSROIの方がシンプルに評価ができる反面、インパクト加重会計の方がより多面的な分析が定量的に可能と言えます。
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