お店でも宿でもない、山奥の玄関が、つながりを作る。
さきほど近所のおばあちゃんがやってきて
「西村さんにパソコンで調べてもらえれば詳しくわかると思って」
と頼まれたので調べてみたら、インターネット上でたった20分前に出されたすぐ近くのクマの出没情報でした。
聞けばそのおばあちゃんも知人からの電話で知ったとか。
ネットなみに早いご近所ネットワークにびっくり。
で、そのままクマの件で玄関に座りながらおしゃべり。
しばらくすると職員さんもいらして
「ここ(ギルドハウス十日町)は地元じゃないひとがたくさん来るだろうから気をつけてね」
とお気遣いをいただきました。
ありがとうございます。
じぶんが立ち上げた新しい住まいの形「ギルドハウス十日町」には、たくさんのひとたちがやってきます。もうすぐ3周年を迎えますが、お店でも宿でもない山奥のおうちに、これまで延べ6,600人以上の訪問者を迎えてきました。
3年以上もの全国の交流の場をめぐる旅で得られた知見を集大成させた家。100個以上の仕掛けを施してあり、もちろん玄関にもいろんな工夫があります。
ひとつ言えば
《足を踏み入れる一歩目の部分には靴や物を置かないように》
しています。
「え、そんなのが仕掛け?」
と思われるかもしれませんが、これがとても大事なことだと思っています。
以前うちに来たひとに聞いたところ、はじめ玄関の扉が重いというだけで鍵がかかっていると勘違いして二の足を踏んだことがあるそうです。
ほかにも難なくその扉を開けてやってくるひとがたくさんいるというのに、そのひとはビクビクして開けられなかったとか。
また、いつだったか、玄関から顔をのぞかせたにもかかわらず、こちらが玄関に向かうと隠れてそのまま立ち去ってしまったひともいました。
ギルドハウス十日町は「いつでもだれでも来ていいですよ」と、かなり開放的な場所にしていますが、玄関先まで来たにもかかわらず、それでも入ってこれないひとがいるんです。
だからその第一歩の背中をそっと押してあげたいという想いで、玄関に入ってすぐの所にはできるだけ靴や物を置かないようにしています。もしそこに靴が脱ぎ捨てられていたら、マメにどかすようにしているんですよ。
それにしても、古いおうちの玄関って、うまくできているなあと感心します。というのも、ご近所さんがふらっとやってきてそこに座って、おうちのなかに入らないまでもおしゃべりしやすい空間になっているんです。
「よっこらしょ」と腰掛けられるように適度な高さの段差があるし。
いっぽう最近の家屋では、構造上、そうした玄関先というか軒先のコミュニケーションがしづらくなっていませんか。
ここら辺の豪雪地帯でも、新しい建築物では1階が雪対策のためかコンクリートで固められ、いわゆる縁側のある場所が少なくなっているとのこと。
そんななか、築100年以上の古民家であるギルドハウス十日町の玄関では、ここで書ききれないほどたくさんの物語が生まれてきました。ちょっと思い返しただけでも、いろんなひとの顔が浮かんできます。
わくわくしたような笑顔でやってきたひと。
不安な表情でのぞきこむようにやってきたひと。
「どうぞどうぞ」と背中を押したら、やっと入ってきたひと。
第一声がそもそも日本語じゃなかったひと。
そんなふうにやってきたのに
1年後には
「ギルドハウス十日町があって救われた」
と言うひともいれば
たまにだけやってきて
「お久しぶりですね」
と近況報告してくるひともいるし、忘れたころにインターネットでメッセージを寄せてきて新たな展開が生まれるときもあります。
強いつながりも、弱いつながりも、玄関から多様に生まれています。
これからもじぶんは、玄関から生まれるつながりを大切にしていきたい。
そう思います。
よかったらサポートをお願いします。もしくはギルドハウス十日町へ遊びにいらしていただければうれしいです。