J-クレジット
皆さんは「J-クレジット」という制度を耳にしたことはありますか。
今回の森のことを「知る」では、日本の森林に関する取り組みの一例として、「J-クレジット制度(森林経営)」をテーマに調べてみました。少々小難しい制度ですが、ぜひ読んで頂けたら嬉しいです。今回は制度の概要と課題についてご紹介し、次回以降具体的な取り組みをご紹介できればと思います。
そもそもカーボンクレジットとは?
カーボンクレジットとは、CO2の削減量や吸収量をクレジット(取引可能な権利)とし
て発行する仕組みです。企業などが CO2削減量を購入し、自身の CO2排出量を相殺
(カーボンオフセット)するために利用します。
最近では2023年10月に東京証券取引所にてカーボンクレジット市場が開設されるな
ど、少しずつ盛り上がりを見せています。
一方、カーボンクレジットに対して、グリーンウォッシュ(実際の削減努力を行わず、
見かけだけの「環境対策」としてクレジットを利用)を問題視する声もあり、企業自らの
排出削減努力が求められている側面もあります。
J-クレジット制度
J-クレジット制度とは、カーボンクレジットの一種で、CO2の削減量や吸収量を「クレジット」として国が認証する制度です。再生可能エネルギーや省エネ設備の導入、森林の管理などのプロジェクトを登録し、モニタリング報告書(削減量等の計測)を作成し、認証を受けることでクレジットが発行されます。その他には国連が主導するCDMや二国間クレジットと呼ばれるJCM、民間が運営するボランタリークレジット等が存在しています。
J-クレジット(森林経営)
J-クレジットの認証を受けられる森林管理プロジェクトは ①森林経営活動、 ②植林活動、③再造林活動の3種類があります。プロジェクトの認証期間は8~16年間であり、毎年度のCO2吸収量(削減量)を計測し報告することで翌年度以降クレジットが発行される仕組みになっています。認証を受けるためには第三者機関(森林管理プロジェクトの審査ができるのはJMA、JQA、ソコテックの3機関のみ)の審査を受ける必要がありますし、「伐採後に再造林する」「認証期間後も森林経営を継続する」等要件は少々複雑です。その煩雑さもあり、J-クレジットの認証量のうち、森林経営活動のクレジットは全体の1.8%と非常に少ない状況です(2023年1月末時点)。大部分は太陽光発電等の再エネが占めています。
課題
J-クレジット(森林経営)の課題としては以下が挙げられます。
認証までのプロセスが手間:認証までには「実際の活動をモニタリング 第三者機関に→よる審査 報告書作成」が必要であり、現地で人がデータ取得や巡視をするケースもある→ため手間がかかる。
クレジットの「永続性」:認証期間(8~16年間)+終了後10年間、森林経営を継続する必要があり、持続可能な森林経営が求められる。
クレジットの品質管理:一部のクレジットは森林の実際の吸収量が誇張されているケースもあり、信頼性・品質が問題視されている。
クレジットの需要者が森林由来クレジットを選択するインセンティブがない
課題は多いですが、調べてみると、課題解決に向けて様々な取り組みがなされていることが分かりましたので、次回ご紹介できればと思います。
参考資料
Jークレジット制度とは | J - クレジット制度
【資料5】森林クレジットの概要および創出・活用事例( J ークレジット事務局) .pdf
持続可能な社会の実現へ向けて〜「森林クレジット」の可能性と未来展望〜- Aidiot プラス
weMORI JAPAN
加藤 貴也