森林と再生可能エネルギー
はじめに
前回までは、日本の山の課題や新しい取り組みについてご紹介しました。その一例として、今回は「森林と再生可能エネルギー」というテーマで、木質バイオマス発電の事例を紹介します。
私はとても希望を感じたので、皆さんもぜひ一読して頂き、興味を持っていただけたら嬉しいです。
木質バイオマス発電
今回紹介するのは、産地消型の木質バイオマス発電所の企画開発、資金調達から発電所の運用までを手掛ける発電事業者、フォレストエナジーの事例です。
事業のコンセプト
「身近な自然資源をエネルギーとして使うことで、良い森林を育てつつ自然エネルギー利用を高めることができる。この、地域経済と環境へのポジティブなインパクトの手触り感」が木質バイオマス発電事業開発の最大のモチベーションです。森林と自然エネルギー、地域経済の好循環を生み出すことができる素晴らしい取り組みだな、というのが私の概観です。
前回までもお話してきましたが、森林の機能を保つためには森林を適切に管理する必要があります。しかし、日本では管理の行き届いていない森がたくさんあります。
木質バイオマス発電は森林の手入れ時に出てくる間伐材を継続的に購入することになるため、森林管理の原資を生み出すことができます。特に地産地消型、つまり地元の木質資源を使う場合は、地元の林業の活性化にも寄与することができ、また海外から輸入してくる場合のように大量の輸送燃料を使う必要もなく、より環境にも優しい事業になります。
木質バイオマス発電の課題
一方で、近隣から燃料となる木材を収集する場合、発電所の規模は小さくなります。従来の直接燃焼方式(以下参照)のバイオマス発電所はスケールメリットが効きやすいので、発電所の規模を小さくすると事業性が悪くなる問題に直面します。そこで、小規模でも高い発電効率を得るために先進的な欧州でも多く利用されているガス化方式を利用します。
ガス化方式:ガス化炉でバイオマスを不完全燃焼させ可燃性ガスを取り出し、そのガスでエンジンなどを動かし発電する方法。
直接燃焼方式:木をボイラーで燃焼して高温・高圧の蒸気を発生させ、スチームタービンの回転で発電する方法です。原理は火力発電と同じ。
このガス化方式にコージェネレーションシステム(発電時に発生する熱に注目し、電力と熱を同時にエネルギーとして利用する一石二鳥のシステム)を組み合わせてエネルギー効率を高めることで事業性を改善することができます。
フォレストエナジーのひと工夫
ただ、それでも中々事業性を確保できるモデルは少なく、その要因として、地域で熱を使う配管網がないことや適格な木質燃料を安定的に手に入る商流がないなど、地域で事業インフラが整っていないことが挙げられます。そんな中、フォレストエナジーでは以下のようにもうひと工夫加えることで、よりエネルギー効率を高め事業性を確保しています。
個別の熱需要地ごとに超小型の衛星コジェネ設備を設置し、熱配管網不要のシステムを構築。中核のコジェネと衛星コジェネ、複数の規模のコジェネを組み合わせる。
ウッドチップの乾燥工程を一カ所に集約化することで、設備費・運転費を削減。燥工程の熱源には、コジェネ設備の熱を利用することで熱利用率を向上
中核コジェネ設備は樹皮(バーク)を含む一本の木を丸ごと無駄なく燃料として使用。衛星・中核の両設備ともウッドチップを使用することで、加工工程を破砕だけにスリム化。
衛星コジェネ設備は高規格、中核コジェネは低規格のウッドチップで稼働させ、ウッドチップを無駄なく燃料として使用する。
熱を余りなく利用することで熱利用率を向上、加工工程をスリム化、集約化することで無駄を削減といったように、様々な工夫を組み合わせることで、極限まで無駄を省き、効率を高めています。
森林管理も促進でき、自然エネルギー使用も増え、地域経済も潤う、そんな理想的な循環が生み出せる木質バイオマス発電の可能性をこれからもウォッチしていきたいと思います。
weMORI JAPAN
加藤貴也