ボビー吉野×ARATA「令和の少年隊ダンス論」トークイベント全起こし②「仮面舞踏会」「バラードのように眠れ」編
①の続きです。
ARATAさんが度肝を抜かれた少年隊の3曲、トップバッターはやはりデビュー曲の間奏パートでした。約30秒間にどれだけの技とステップが詰まっているのか……めくるめくダンス解説をどうぞ!
Text by 高岡洋詞
Photograph by 宮田浩史
ゆるめスーツver.「仮面舞踏会」
ARATA 前に「仮面舞踏会」の間奏部分をボビーさんが振付されたというお話をうかがいまして、これも本当に名作だなと思うんですけど、そのことをお聞きしたいんです。僕が見た映像はテレビ番組の司会者さんとのやりとりや当時の人たちのファッションとかも含めて楽しいんですけど、間奏の部分なので、(再生)ここらへんからかな。マイクを置くところ。ちょっと待ってくださいね。(1番終わりの)《魔性のリズム》のところからいきたいと思います。「ブレイク!」と言ってマイクを置くところからですね。まずそもそもマイクを一回置くっていうのは、当時は当たり前だったんですか? 今は見ないじゃないですか。
ボビー 当たり前でしたね。踊るっていうか、両手を使うときは置いていました。
ARATA それすらも僕はすごく感動というか。「そりゃ置くよね」みたいな(笑)。
ボビー 持ったままだとこれをやるのはなかなか大変なので。
ARATA 「持ったままだからこのダンスはちょっとできないんですよね」じゃなくて「持っていたら踊れないから置きます」という潔さ!
ボビー そういう言い訳はないんです。
ARATA ですよね。すみません、失礼しました(笑)。じゃあ見ていきます。(再生)もう、これですよね。やー! やばいですね。(停止)ほんとすみません、ボビーさんを僕がひとり占めしているみたいな感じで申し訳ないんですけども。まず前後に蹴って、その後はちょっとロックステディみたいな雰囲気もありつつ、っていう感じですよね。
ボビー そういう使い方ですね。
ARATA (再生→停止)ここで(右膝を上げる)ちょっと溜める感じは?
ボビー これはロックとジャズなんですよ。ジャズが本当に微妙に混ざっているんです。これ(その前の手の動き)はロックで、ここ(右膝を上げる)でジャズ。で、つま先がポイントになって、(右脚を体の横に伸ばして)突き刺すんです。そのラインは完全にジャズで、そこから次の展開になっていく。
ARATA やばいですね。「融合するんだ!」っていう。感動してます、マジで。(再生)ここのノリ(脚を開き前かがみに低い体勢で指を鳴らしながら左→右にスウェイ)ですね。(停止)これが効いているんですよ、すごく。
ボビー この(リズムの)とり方もジャズですよね。こだわったところは肩のライン、この肩の斜め具合とか。そこにはこだわっていますね。
ARATA ですよね。シルエットでリズムをとるからかっこいいっていう。
ボビー とか顔の角度とか。こういう感じで(実演)。
ARATA おーっ! ちょっとこれ(ボビーさんの所作)はやばいですよ。見ていいんですか本当に、っていう。(再生)や、本当だ。この角度すごいですね。
ボビー 肩の角度でやっぱりかっこよくなりますね。
ARATA この姿勢だからかっこいいんだなっていう。全力ですよね。
ボビー 脚のスタンスもここまで(広く)とるから見ばえがするんですね。意外とね、あそこから肩を入れてここまでの距離(を上半身移動させるの)は大変なんです。
ARATA (停止)ですよね。どう持ってくんだろうって思っちゃって、ここ(前傾姿勢)からの起き上がらせ。
ボビー 訓練しているので押す脚が強いんです。この蹴り脚とか。もうひとつ言うと、この床ってめちゃくちゃ滑るんですよ。下ツルツルなんですよ。なのですごく踏ん張りづらい。もちろん靴底にはゴムがついていますけど、それでも滑りやすいのを持っていける。そこが彼らはすごいんです。
ARATA 脚だけに頼ろうとすると滑るんですよね、なんだかんだ、こっち(上半身)も残しとかないと。
ボビー そう。全部のバランスがとれているからできるんです。
ゴージャスな“ダンスのデパート”
ARATA 体ができている人ってちょっとやそっとじゃ滑らないというか、滑ってもキープできるのはここ(体幹)が強いからっていう。これから雪のシーズンになるので、体幹を鍛えといたら滑りづらいと思いますよ。いきます。(再生)ここ(脇を締めて両腕を体側につけて少し開き、てのひらを下に向けてステップ)もですよね。
ボビー このへんはラテンですね。
ARATA あー、なるほど。音楽からくるフィーリングですね。
ボビー リズムがラテンなんで、ラテンのノリで下がっていくっていう。
ARATA 本当にダンスのデパートみたいな感じですよね。
ボビー そういうことですね。
ARATA こういう(横向きで脚を後ろに蹴り上げながらジャンプ)さりげないところも全部つま先が精密ですよね。
ボビー 足元は全部ポイントで、ジャズの動きですね。しかもファンクジャズ、ヒップホップジャズではなく、完全にクラシックバレエジャズなんです。それができていないと、この手の踊りがきれいにはできないんで。
ARATA 審美性に特化したほうですもんね。
ボビー そうですね。
ARATA いやー、ターンがきれいなんだよな。ゴージャスですよね、ターンのひとつひとつが本当に。
ボビー 実はこのコンビネーションってめちゃくちゃ難易度高いんですよ。半身斜めから入っていって最後は正面をとる、というのがすごく難しい。
ARATA (停止)普通に見ていると助走をつけて回っているように見えると思うんですけど、この体のポジションの取り方が実は難しいんです。始まりと終わりでちょっと体を入れる角度が違うんですよ。それを真ん中に揃えるという。
高岡 すごいな。
ARATA すごいんですよ、もう。あと、やっぱり表情っていうんですかね、一個パッて(ポーズを)とったときのお顔に引き込まれるというか。
ボビー 表情は教えるわけじゃないので、中から出るものだと思います。デビューした頃にはもう十分、表現力はあるので。
ARATA そこらへんは湧き上がる、湧き起こるものっていう信頼があるんですね、ボビーさんのなかで。
ボビー もちろんありますね、それは。
ARATA 見ていて「いいな」って思うところですか?
ボビー そうですね、そこはね。
ARATA 先生にそう言っていただけるとたぶんプレーヤー側も本当にうれしいんじゃないですかね。(再生)で、マイクを取ると。すごい。すごいですね、この間奏部分は。「こんな人、いたんだ」っていう、最初の衝撃がこの「仮面舞踏会」でした。しかも音楽自体は耳にしたことがある。「この曲は少年隊さんだったんだ!」みたいな。そこから「この曲でこのダンスしていたんだ!」っていう驚きですね。
ボビー テレビで昔の映像を流すと、だいたい間奏まではいかないですからね(笑)。
ARATA サビの部分とか、歌っているところだけですよね。
ボビー 踊る部分にはあんまりスポットが当たらないので。
ARATA でもすごい。や、すごいことをやっているんですよ。これ、テレビで特番組むんじゃないかって気持ちになりますね。そのときはぜひボビーさんにご登場いただけたらと思いますので、よろしくお願いします。
高岡 おふたりで呼んでほしいですね。
ARATA あ、そうですね。僕はもうどこにでも行きますんで(笑)、何でも言ってください。ありがとうございます。
マイクスタンド使い「バラードのように眠れ」
高岡 では次、ボビーさんの思い入れのある2曲目です。
ボビー 「バラードのように眠れ」です。先に言っちゃうと、最初のマイクスタンドの立て方。これをいかにかっこよく、おしゃれな感じにできるかをすごく考えましたね。
ARATA 僕はまんまとつかまれたわけですね(笑)。インタビューでもお話しさせていただいたんですけど、マイクスタンドに対してそんなことができると思ったことがなかったので、一個の演出方法としてドラマチックというか。いきます(再生)。
ボビー はい。
ARATA 今《Slow Slow Slow》のところです。「マイクスタンドを足で立てるって、誰が考えました?」って思ったんですよ。ボビーさんが考えられたっていう。
ボビー そうです。
ARATA (停止)すごい発想ですよね、足を使うって。
ボビー (自分の前に倒してあるマイクスタンドを手前に)立てるのは、意外とロックの人にはいるんですよ、前から。そういう感じでなく、いつのまにか立っているのがちょっとおしゃれかなと思って。
ARATA (演者の)後ろから立ち上がってくるっていう。
ボビー 足で立ち上がらせて、振り向くともう立っているっていうふうに。
ARATA (寝ているマイクスタンドの足が)テトラポッドみたいに見えて、最初、何かわかんなかったんですよ。よく見たら「マイクスタンドじゃない?」ってなって。また白いからわかりやすいですね。
ボビー そうですね。
ARATA (《4009》でアップになる)このヒガシさんの肩を上げながら歌う感じとか好きです。
ボビー (笑)
ARATA (停止)僕にとってヒガシさんって、ドラマでよく見たりとか、ジャニーズさんの番組にスペシャルゲストでいらっしゃる、もうお父さまとか兄貴みたいなイメージの方なので、こういう時代があったことにも衝撃を受けたんですが、その方を鍛えてらっしゃったのがボビーさんだという。
ボビー いえ、とんでもないです。
ARATA 家系図をたどっているみたいな感じがすごくて。すみません、いきます。(再生)マイクスタンドありきのパフォーマンスとして考えていったんですね。
ボビー そうですね。
ARATA 今、サビ終わりの《眠れ》のとこです。(手の振りをマネながら)やー、いいですね。植草さんの歌が僕、好きです。
ボビー ここはファンの子も一緒にできるようなイメージです。
ARATA マネできる。(停止)曲のコンセプトからくるものですか? 一緒に口ずさんでもらいたいとか。
ボビー そうです。少年隊の振りは基本的に、ファンの子たちが客席でマネることはできないじゃないですか。
ARATA そうですね。先ほどのダイビング(「日本よいとこ摩訶不思議」)とかは無理ですね(笑)。
ボビー だからそういう(マネできる)のも入ったらいいなっていうか。
ARATA 実際にマネできる方もいらっしゃるんですね。(スタッフを見回しながら)いますか? マネできたら真のファンと呼べるのかななんて。
高岡 私は無理です(笑)。
体が強くないと、このポジションはとれない
ARATA (再生)スピンして、ターンですね。うぉー。《眠れ》です。そしてダンス!
ボビー これもロック。
ARATA ロックですね。直線でとっていますね。バク転! いやこの、これ(股関節を支点に腿を上げて膝を回す)ですよ。みなさんの身体能力の高さと股関節の強さを目の当たりにした感じがあります。
ボビー そうそう。そうです。
ARATA (停止)高いんですよ、膝の位置が。ちょっと体を(左に)入れてから、右膝を(胴体に)引きつけるっていう動きなんですけど、姿勢の美しさと位置の高さから「体が強くないとこのポジションはとれないよな」って思っちゃったので。
ボビー この動き方のもうひとつの隠し味じゃないけど、上げるときに右足をギリまで床に踏ん張っているというか、着けているんですよ。そこから引っ張り上げているんです。
ARATA あー、なるほど。体を入れてすぐに脚を上げるんじゃなくて、ギリッギリまで体を倒して体重をかけていくんですね。
ボビー そうそう。ゴムみたいに引っ張った状態を作って、ビヨンっていう反発力を使う。
ARATA ここ(右の体側)の伸びを使って、一気に引きつける。
ボビー そこのバネで音に間に合わせるっていうか、遅れめにとって跳ね上げるスピードでジャストに合わすんです。
ARATA だから重たくならないんですね。こういう(溜めを効かせずヌルッと動く)のったりした動きではないというか。
ボビー そうです。一気に「スパン!」ってそこにいけるんで。
ARATA でも「スパン!」って筋力ないとできないですよね、結局(笑)。
ボビー まぁ、そうですね。
ARATA すごい。(再生)マイクスタンドを突き飛ばしました。
ボビー 2コーラスめはハンドマイクにして、シーンを変えていくわけです。
ARATA (停止)僕、何で見たんだったかな。マイクスタンドを蹴るかなんかして、飛ばして……。
ボビー あー、はい。そういうのもありましたね。
ARATA 飛ばした先にネットを構えて受け止めるスタッフさんがいる映像を見て、すごいなと思いました。面白い。
ボビー 何の曲かちょっと思い出せないけど、ありましたね。
高岡 「仮面舞踏会」だと思います。
ARATA あ、そうかそうか。(再生)今、サビの《バラードのように眠れ》です。植草さんが歌っております。ここ(《時間の海へと漕ぎ出すよ》)の植草さんのボディウェーブの通し方! あらまぁ、という。美しさというか、滑らかさというか、質感。(最後のサビ終わりで)ターンが速い! そしてラストのダンス。おー! マイクを持ち替える。
ボビー で、エンディング。股から抜いて……。
ARATA わー(絶叫)。これすごいですね。ちょっとの間というか、ここがしびれるポイントですかね。
ボビー ニシキ、うまいっていうか、すごいですね。股抜きのマイク取り。リスクめちゃくちゃあるじゃないですか。
ARATA リスクしかないですよね。
ボビー 落としたら終わりですからね。
ARATA かっこ悪くなっちゃいますもんね、一気に。
ボビー それがニシキにはないんですね。
ARATA なるほど。恐れ知らずというか……。
高岡 こんなに登壇者が黙って映像を見ている配信は珍しいと思います(笑)。
ARATA たしかに。絵面としてはけっこうな恐怖ですけど、すみません、お付き合いいただければと思います。
高岡 でもすごくみなさん楽しんでくださっているようで、実際コメントも拝見していますけど。
ARATA 大丈夫ですか? みなさん。なるべくわかりやすくお話ししたいと思いますけど。
≫≫≫③に続きます~~!
【編集部メモ】ボビー吉野さんの名前がポンポン飛び出す「ニッキとかっちゃんねる」のダンス論、振付をする側とされる側の答え合わせをしているようで非常に興味深いです ^ ^
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