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明治大学ラグビー部が22年ぶりの日本一になるまで僕がやった7つの事

こんにちは。
ウェルネストレーナーの関口純裕です。

今回はタイトルにもある通り、明治大学ラグビー部が22年ぶりの日本一になるまでに私がヘッドトレーナーとして行った7つの事についてお伝えしていきます。


まず明治大学ラグビー部について簡単に説明すると、1922年に創部され98年の歴史があるチームです。(2020年現在)その歴史の中で、関東大学ラグビー対抗戦で17回優勝し、13回日本一に輝いた名門です。

2020年1月11日に開催された大学ラグビー選手権大会決勝は、伝統の早明戦が新国立競技場で行われ、5万7千人の観客が熱狂しました。
(2020年天皇杯決勝 ヴィッセル神戸 対 鹿島アントラーズも新国立競技場で行われて観客数5万7千人でした)

そんな明治大学ラグビー部で私は4年間トレーナーとしてチームのサポートをしてきました。その中でチームが日本一になるまでに私が行ってきた事をお伝えします。



1.ルール作り

まず私が取り組んだのはルールづくりです。
スポーツ選手がグラウンドで高いパフォーマンスを出すためには、グラウンド以外でも規律ある行動が求められます。

特にラグビーというスポーツは激しくきついスポーツです。反則1つが勝ち負けを左右します。そんな状況でも反則をしない為には普段から規律を守って生活をすることが大事になります。

そこで私が作ったルールが
「治療時間内はスマホの使用禁止」
というルールです。

とても小さな事ですが治療をしてもらっている時に、スマホでゲームをしたり、SNSを見ているのは決して気持ちのいいことではありません。

治療をしてくれるトレーナーやマネージャーへの感謝の気持ちと自分の身体に向き合ってほしいと言う思いからこのルールを作りました。

他にも選手たちが自分たちで色々なルールをつくり、選手自身が主体的に行動することで規律を守ることがチーム全体に浸透していったと思います


2.ケガしない身体づくり

ラグビーに限らずアスリートはケガをしない事がとても大事な要素です。特にラグビーは人と人とがぶつかり合う激しいスポーツです。激しいタックルは、交通事故ぐらいの衝撃があるのではないかと思うぐらいすごい音がします。

そんなラグビー選手をいかにケガさせずにグラウンドに立たせるかが、トレーナーの大事な仕事の一つです。

そこで私が取り組んだのがプレハブというものです。
プレハブとはプレハビリテーョンの略で、似た言葉にリハビリテーションがあります。

リハビリテーションはケガをした後の身体を、ケガする前の状態に戻す運動です。一方プレハビリテーションはケガをする前にケガを予防するために行う運動の事です。つまりケガ予防のために行う運動がプレハブです。

このプレハブを毎日3種目ずつ、ウエイトセッション後に行いました。
種目は週替りで足関節のケガ予防、膝のケガ予防、肩のケガ予防、肉離れ予防など目的を変えて行いました。

正直このプレハブがどれほどの効果があったのかは分かりません。でも選手のケガ予防の意識を高めて自分の身体と向き合うという事に関しては、一定の効果があったのではないかと思います。


3.リカバリーの徹底 

ケガをしない為に、もう一つ大事なことはリカバリーです。毎日激しいトレーニングをするアスリートは、リカバリーもハードに行わないといけません。

食事やストレッチ、睡眠、水分補給など様々な事に取り組みました。
その中でも特に力を入れたのが、セルフストレッチと治療時間の確保です。

セルフストレッチや器具を使ったセルフケアを選手に促し、まずは自分の身体は自分でケアをする習慣をつけてもらいました。

それでもラグビー選手は毎日激しいトレーニングをしているのでセフルケアだけではどうにも出来な場合もあります。そこで、1年生から4年生まで学年関係なく誰でも治療が受けられるように1日の治療枠を多く作りました。

この治療枠を多く作った理由は、ただ選手のケアをする為だけではありません。

治療の時間は身体を触っているので、選手は本音が出やすくなります。選手の身体の状態やメンタル面、選手がどれくらい疲れているのか、どの筋肉が張っている選手が多いのか、時には恋愛の話しなど、治療の時間は色々な情報収集ができる場でもあります。

そういった情報の中から、スタッフに共有したほうがいい情報はスタッフ全体で共有し、チーム全体としてケガの予防や質の高い練習が出来るように心がけていました。


4.水分補給

ケガの予防でもう一つ取り組んだのが水分補給です。水分補給は夏場の熱中症予防が一番イメージされると思いますが、夏以外でも重要視していました。

その理由は、水分補給が出来ていないと肉離れなどのケガが起きやすいからです。ラグビー選手は筋肉量が多いので代謝も活発です。その為、水分補給もしっかりしないと身体がすぐに水分不足になってしまいます。

水分不足の状態で練習を行うとケガのリスクが上がるので、選手には日常生活から常に水分補給をするように促していました。

具体的には以下の量を1日に飲むようにしています。

図6

これ以外にも、水分不足の状態で試合に望むとパフォーマンスの低下に繋るので、尿比重計を使って水分量を調べました。

試合の2日前に尿比重を測定して、もしこの時点で水分が足りていない選手は、水分補給を促し翌日再測定をして試合に望みました。


5.1日でも早く復帰する為の工夫

ケガの予防に力を入れてきましたが、そうは言ってもラグビーというのはケガが多いスポーツです。怪我人は常に10人前後、多い時だと20人以上いた時もあります。

そんな怪我人を1日でも早くグラウンドに復帰させるのもトレーナーの仕事です。その為に私が行ったのが、「1対1の面談」「外部施設との連携」です。

1対1の面談は、今のケガの状況を選手と共有して、これからどんなリハビリを行っていくのかを話しました。この時に特に意識したのが、復帰時期を前倒して伝える。と言うことです。

具体的には、復帰まで最低でも3ヶ月かかりそうなケガをした選手には、2ヶ月半で復帰を目指すと伝え具体的なプランを提示します。そうすることで、選手のメンタルが2ヶ月半で復帰するメンタルになるのでケガの回復も早くなります。

少し非科学的ですが、実際にこれで復帰が早まった選手がかなり多かったです。経験的にもケガに対してポジティブに取り組む選手は治りも早いですし、ネガティブな選手は治りも遅いです。おそらく、心理状態が細胞の修復スピードにも影響するのではないかと思います。

もちろん無理して復帰させるのではなく、ケガの状況と選手の感覚を尊重して安全に復帰しました。

次に外部施設との連携は、100名近くの選手を私達だけで治療していくのには限界があります。そこで、外部施設と連携をして治療を行っていました。

よく利用していたのは、高気圧酸素治療やアキュスコープという治療です。これらの治療は特別な機器のある病院や治療院でしか受けることが出来ない治療なので、本当に助けていただきました。また、どの施設の先生方も快く選手を受け入れていただいたので、本当に感謝しています。


6.数字で管理

私が選手をケガから復帰させる時に一番気にしていたのは再受傷です。再受傷はチームにとっても、選手にとってもマイナスになってしまうので、復帰する時には再受傷しないかどうかを一番気にしていました。

どうすれば再受傷を防げるのか?そう悩んだ時に取り入れたのが数字の管理です。

チームには数台のGPSがあり、練習や試合の走行距離やダッシュの回数、ダッシュの距離などを計測して練習メニューの作成やトレーニングに活かしていました。

その数値を怪我人の復帰目安の参考にして、患部の状態が練習強度や試合の強度に耐えられる状態になっているのかを数字で判断しました。

具体的には、強度の高い練習の日の走行距離やダッシュの回数などを参考にリハビリメニューを作り、復帰間近の選手にはそのメニューを実施しました。

ケガによっては1週間の総走行距離を計算して、このまま復帰しても再受傷しないかを判断したものもあります。

感覚でメニューを組むよりも数字でメニューを作成した方が、きついメニューでも選手は納得します。

きつい練習はどの選手も出来ればやりたくないので「やる理由」と「なぜこの強度なのか」を数字で説明することで選手も納得して取り組んでくれます。

数字で管理してメニューを作成する事は選手の納得感を出し、ポジティブにリハビリに取り組み、安全に復帰する為にはとても効果的な方法です。


7.スタッフ間の情報共有

チームスポーツで一番大事になるのが、スタッフが情報を共有していることです。

コーチングスタッフが選手の状態を知らなければ、練習強度の設定を誤って怪我人が続出したり、逆にトレーナーがチームの方向性や練習の内容を把握していなければ、再受傷など防げるケガも防げなくなります。

その為、各部門のスタッフがそれぞれで質の高い仕事をする事はもちろんですが、それ以上にチームスタッフが各部門の情報を共有していることが、チームの強化にとってはとても重要になります。

またメディカルスタッフ内でも情報の共有が出来ていることも大事です。

コーチから「あの選手どうなの?」と聞かれた時に、メディカルスタッフ全員が「今こういう状況です」と答えられる事はスタッフ間の信頼関係にも繋がります。

そこで私が取り組んだのが、毎日の日報とその日の治療記録の共有です。

メディカルスタッフは全員が毎日グラウンドに来ているわけではないので、自分がいない時にどんな事が起きているのかが分かりません。

その為、その日の練習メニューや誰がケガをしたのか、誰がどの部位を治療したのかを共有し、全員が共通認識を持てるようにしました。

そうする事で、必然的にメディカルスタッフ間でのコミュニケーションも増え円滑に業務が進むようになりました。メディカルの業務が円滑に進むことが、選手のケガを予防して安全にラグビーに復帰することに繋がります。


最後に

今回は明治大学ラグビー部が22年ぶりの日本一になるまで僕がやった7つの事についてお伝えしました。

2019年1月12日 天理大学との決勝に勝利して日本一になった時、私は号泣しました。30歳を超えて仕事で泣けるなんて思ってもいなかったです。

スポーツにはそんな素敵な魅力があります。そして明治大学ラグビー部にはそんな素敵な選手やスタッフが沢山います。その中で仕事が出来た事は私の大きな財産です。

今は明治大学ラグビー部での経験を元に、30歳からのケガしない身体づくりをテーマにトレーニング指導やダイエット指導を行っています。

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