昼食後の、労働生産性の低下、コミュニケーションコストの増大について


昼食後のオフィスに漂う空気は、どこか異様に重くなる。社員たちは、それぞれのパソコンに向かって、意識がすでに半分沈んでいるのを感じる。午後の会議や、ランチ後の処理すべきタスクに取り掛かろうとするが、心身のバランスが崩れたその瞬間、思考はぼんやりとし、言葉は滑らかに出てこない。そして、ふと気づく。「あれ?こんなに疲れてたっけ?」と。実は、これは食後の血糖値スパイクが引き起こす、あまりにも多くの企業が見過ごしている現象だ。

経営陣はしばしば、売上や利益、業績の数字に目を奪われる。しかし、実はもっと深刻で根本的な問題が、企業のパフォーマンスを無意識に蝕んでいる。それは、「社員のエネルギーの管理」である。日々、社員が意識せずに摂取する食事が、どれほど業務効率に、さらにはコミュニケーションの質に影響を与えるかを、経営者たちはほとんど考えたことがない。

血糖値スパイクが生む疲労と生産性の低下

ランチ後、社員は必ずと言っていいほどエネルギーの浪費を経験する。特に高糖質の食事を摂った場合、その効果は顕著だ。血糖値が急激に上昇し、インスリンがそれに対応して分泌される。だが、問題はその後にやって来る。血糖値が急激に下がる瞬間、脳のエネルギーは一時的に不足し、思考や判断力が鈍る。仕事を進めるどころか、ただ座っているだけで体力を奪われ、無駄に疲れてしまう。

経営者が注目すべきは、まさにこの瞬間だ。社員がランチ後に生産性を落とし、午前中のパフォーマンスに比べて午後は著しく遅くなる理由がここにある。何をするにも頭がぼんやりとして、すぐに集中力が途切れ、成果を上げるどころか、仕事をこなすだけで精一杯。これでは、労働力の効率的な活用は望めない。特にクリエイティブな業務や、迅速な意思決定を要する仕事では、午後の時間帯が死んだ時間となり、まるで一歩遅れた気分に襲われる。

コミュニケーションコストの増大

もっと見過ごされているのは、コミュニケーションの質への影響だ。血糖値が不安定だと、人は言葉を選ぶのに時間がかかり、会話がスムーズに進まなくなる。会議中、意見を交わすのにエネルギーが要る。相手の言葉が頭に入らず、同じ話を何度も繰り返さなければならないことが増える。イライラしたり、感情が表面化したりすることで、無駄な摩擦が生まれ、コミュニケーションのコストが膨れ上がる。

さらに問題は、この不安定な状態が、社員同士の信頼や連携に悪影響を与える点だ。会話がスムーズに行かない、相手の意図を理解できない、それが続けば、次第に人間関係はギクシャクしていく。オフィス内での対話が、むしろ障害となり、仕事が進まなくなる。それは、結果として生産性の低下を引き起こし、組織の連携に歯車がかみ合わなくなる。

経営陣が知らない、社員の「エネルギーマネジメント」

このような事態に対処するためには、まず経営陣が「社員のエネルギーマネジメント」という新たな視点を持たなければならない。会社の成功は、単に利益を追求するだけでなく、社員の生産性を最大化することに直結する。それには、社員がエネルギーを無駄に消耗することなく、持続的に高いパフォーマンスを発揮できる環境を作ることが重要だ。

そのために、まず取り組むべきは社員の食生活だ。食事が原因で午後にエネルギーの低下が生じるのであれば、その食事内容に注意を払うべきだ。高糖質なランチを避け、低GI(グリセミック指数)食品を取り入れることで、血糖値の急激な変動を防ぐことができる。果物、ナッツ、全粒穀物、野菜を使った食事が推奨される。これにより、ランチ後の眠気やダレを軽減し、午後もフルパフォーマンスで働けるようになる。

さらに、食後の適度な運動、例えば5分間の軽い散歩やストレッチを推奨することで、血糖値を安定させると同時に、精神的なリフレッシュにもつながる。これらの施策を企業がサポートすれば、社員の集中力やモチベーションが高まり、コミュニケーションも円滑になるだろう。

結論:経営者の真の役割

経営者が気づかねばならないのは、会社の生産性を最大化するために重要なのは、ただ単に技術や戦略だけではないということだ。社員の身体的、精神的なコンディションを適切に管理することが、最終的に業績に直結するという現実だ。血糖値スパイクが引き起こす生産性の低下や、コミュニケーションコストの増大は、単なる「健康管理」の問題ではない。経営戦略そのものであり、組織全体のパフォーマンスに関わる重要な要素である。

もしも経営陣がこれに気づかず、従来通りの数字や業績だけを追い求めているなら、まるで氷山の一角に囚われているようなものだ。血糖値の乱高下に伴う無駄なエネルギー消費と、それによるコミュニケーションの歪みが、気づかぬうちに企業の潜在能力を削いでいる。それに気づき、企業全体で社員のコンディショニングを意識的に管理することが、これからの経営者に求められる本当の仕事なのだ。

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