追わない恋愛は相手を傷つける(ゲイの恋愛)
追いかける恋してますか?
掲示板で知り合った5歳年下の彼。
二丁目でフラフラしているところに偶然連絡があり、「こっちも二丁目にいるから会いましょう!」というノリで初対面。そこで後日のデートの約束をした。
泊りがけで行くほどの場所でもないのに泊りがけで八景島デート。
キリっとした眉で眼力強めな感じなのに、やんちゃ風でよく笑う姿はとても可愛かった。
横浜のホテルにチェックインし、コトを済ませベッドでウダウダしていると、「ねぇ、俺と付き合おうよ!」と屈託のない笑顔で言ってきた。
メッセージのやり取りをしていたとはいえ、その期間は一か月に満たない。ちゃんと会ったのもその日が初めて。でも、イケメンだしキャピキャピした感じも可愛いし・・・
普段は慎重派なのに、この時は「俺でよければ、よろしくね」とライトな感じで付き合い始めてしまった。
付き合っていくうちにあることに気が付いた。
「今は短髪にしてるけど多分ギャル男上がりだろうな」
恰好もそうだし、あゆが好き。二丁目の行きつけに連れていかれ確信した。
その店、お客さんがみんな"あゆファン"で、カラオケも あゆオンリー。
ちょっと苦手な感じ。ちょ、ちょっとだけね。
帰りに正直に「あの系統は若干苦手かも...」と告白した。
その後、同じ店に連れて行かれることは二度となかった。
それとは別の日。
その日は仕事帰りにごはんを食べに行った。
俺はスーツ、彼はダメージデニムに体の線が出るピタピタTシャツで、足元はブーツ。
腰にはフワフワのしっぽ付いてるし...
俺「この後クラブでも行くの?」
彼「え、なんで?」
俺「クラブ行くみたいな恰好だから 笑」
彼「イヤだった...?」
俺「ぜんぜんイヤとかじゃない」
彼「次から気を付けるね...」
俺「イヤなわけじゃないから!」
そんなことがあっての次の晩ごはんデート。
俺はスーツ、彼はハーパンにパーカー、足元はスニーカー。
North Faceのリュックで腰にしっぽはない。
俺「あれ、今日はどうしちゃったの?」
彼「こういう方が好きかと思って...」
俺「ありがとう、好きだよそういうのも」
気に入ってもらえるように考えてくれてると思うと嬉しかった。
彼にはムスッとした顔をする癖があった。
後で聞いた話だと「自分の弱さを隠すため」だったそうだ。
俺と待ち合わせをしている時でもムスッとしていて、笑顔を見せるまでに時間がかかった。
あるとき「会った瞬間くらいコワい顔しないで?」と冗談めかしていったのだが、その次からは満面の笑顔でお出迎え。
俺「そういう顔で会う方がやっぱり嬉しい」
彼「でも、何を理由に怒られるか毎回ドキドキしてる」
俺「え...」
俺は軽い気持ちで「こうだったらいいな」「ああだったらいいな」と言ってるだけのつもりだったんだけど、彼は「そこ直した方がいいよ?」のニュアンスで受け取っていたらしい。
相手にばかり負担を掛けてしまっていると感じた俺は「俺も気を付けた方がいいところがあったら言って?小さなことでもいいから」と言うのだが、「完璧。今のままでいい。」と。
そんなことってないよね。
彼は独占欲が強かった。
一緒にクラブで遊んでいるとき。
たまたま遭遇した友達と俺が話をしていると、「今日帰ったら寝る前にエッチね」とエッチのアポ取りを入れてくる。
(え、今それ言う?)
なんだろう、自分に自信がないのかな...
俺の態度が彼を大事にしてるように見えなかったのかな...
「ちょっと相談があるんだけど」
若干怯えた様子で話を切り出された。
彼「GOGOに誘われて...やってみようか...と思って...るんだけど...」
俺「え、いいじゃん!やってみなよ!」
話を聞くと、名前も知ってる定期イベントだったし、いきなりGOGOではなく最初はテキーラボーイからということだったので、ちゃんと育ててもらえる環境だと思った。
そして何より彼の"自信"になればと思い背中を押した。
こっ恥ずかしさがあり、そのイベントに行くことをなるべく避けていた。
でも、何回目かで「いい加減見にきてよ 笑」と言われ、渋々足を運んだ。
箱に入ってから数時間が経ち、パーティーが盛り上がってきたところで、何を思ったのかGOGOが踊ってるステージに彼がしゃしゃり出てきた。
(お許しは出てたんだろうけど)
GOGOとして出られるほど体はできてないし、音に合わせてゆらゆら揺れてるだけで全然踊れてない。俺には「踊れないGOGOはGOGOじゃない」という変な持論があった。(何様)
イベントが終わって帰ってから、「ステージに立つにはもう少し頑張ってからの方がいいね」と遠回しに批判してしまった。誉め言葉の方が多かったのに最後のひとことですべて台無し。
結局、次の回を待たずに「やっぱり辞める」となってしまった。
この辺りからうっすらと感じていた。
「俺は彼のことを追いかけていない」
それってちゃんと恋してるのか?
彼のことを「弟」のように見ていないか?
彼のことを傷つけてばかりいないか?
「俺は彼を支配してしまっているのではないか」
こうして恋人としての関係は1年も経たずに終わってしまい、その後は「兄」「弟」そして「元カレ」という関係が続いている。
兄として恋愛相談を受けることがあるけれど、アドバイスはいつも「追っかけすぎ...」。
せっかくイケメンなのに。
かと言って自信満々だと鼻につきそうだし、イケメンってかわいそう。
(そこじゃない)
追いかける度合いと追われる度合い、そして"追いかけない"度合いがある程度一致しないとなかなか上手くいかない。
追われるだけで追わない恋愛は相手を傷つける。